第19話 女子高生、キャンピングカーで専門家の元へと向かう。

「あなたが、犬飼いぬかい一子かずこちゃんね? ササメさんから依頼を受けて、迎えに来たの」


 そう言ってロカちゃんは可愛らしく首を傾げる。


「うふふ、犬飼のおじいちゃんに聞いていたけれど、思った通りすっごくカワイイ!!」

「ふぁ? ふぁい??」


 し、しまった、思わずへんなうめき声を出してしまう。


「犬飼流剣術の免許皆伝なんでしょ? 『最上の探索者』のおじいちゃんに直々の手ほどきを受けているなんてすごいよね。一度手合わせしたいかも!!」

「そ、そんな! ロカさんとだなんて、お、おおおおそれおおいです!!」


 ダメだ、完全にテンパってまともな会話ができない。


「そういえば、一子かずこちゃん、ロゥファちゃんってどこかな? ササメさんから彼女も連れてきて欲しいって言われてて……」

「はいはいはいはい! アタシがロゥファでーーーーす♪」


 六花りっかが、アタシとロカちゃんの間にぐいぐいと割り込んでくる。


「本名は辰野たつの六花りっかです!! ロカちゃんにあこがれて、茗荷谷みょうがだに女子に入学しました!!」

「そうなんだ、ありがとう!」

「ロカちゃんは、ササメさんとどういった関係なんですか?」

「ササメさんは、おじさんの奥さんなの。あ、おじさんってのは、ラブロカチャンネルのADのおじさんね」


 え? そのおじさんってひょっとして。わたしはロカちゃんに聞いてみる。


「ひょっとしてその人って田戸蔵たどくらく……さんですか?」

「そうだよ。一子かずこちゃん、おじさんの名前よくしってるね」

「おじいちゃんが、田戸蔵たどくらさんに電話していたんです。一度専門家に相談した方がいいって」

「アタシも、配信動画観せてもらったけれど、あんなの初めて観たよ」


 やっぱりそうなんだ。本当にレア現象なんだろうな。


「それじゃあ、一子かずこちゃんに六花りっかちゃん行こっか。あそこの車に乗って乗って」


 ロカちゃんが指差した場所に、おっきなキャンピングカーがある。


「え!? あの車、ロカちゃんのですか?」


 六花りっかの質問に、ロカちゃんが返事をする。


「そうだよ」

「わぁ! めっちゃカッコいい!!」

「アタシの場合、地方のダンジョンとかにも結構遠征するしさ。さ、乗って乗って!!」


 ロカちゃんは、わたしと六花りっかの背中を押す。


 ゾク……!


 アタシは氷のような視線を感じて振り向いた。


(なによ! あのふたり!!)

(小学入学組の犬飼いぬかいさんはともかく、辰野たつのさんは高校入学の雑種でしょ?)

(雑種のくせしてロカちゃんに馴れ馴れしくすぎない??)


 出た。幼稚舎組のエリート思想……。


 アタシは針のようにつきさる嫉妬の眼差しをうけながら、ロカちゃんのキャンピングカーに乗り込んだ。

 

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