第20話 女子高生、憧れの人の弱点をつきとめる。

「うわーすごい! 家のなかみたい!!」


 ひと足はやく、ロカちゃんのキャンピングカーに乗り込んだ六花りっかが、驚きの声をあげる。


 本当だ。運転席の後ろに、ソファが置かれたリビングと、ちょっとしたキッチンに、シャワールームまでついている。


「すごいですね。ワンルームマンションみたい。ベットルームもあるんですか?」

「運転席の上にロフトがあるんだけど、リビングのソファを倒したらセミダブルサイズのベットルームも作れるの。四人くらいはこのキャンピングカーで寝泊まりできるから、ダンジョン遠征の強い相棒だよ」


 そう言いながら、ロカちゃんはキャンピングカーを走らせる。


 キャンピングカーは、羨望と嫉妬の眼差しにあふれた女子生徒の前を横切って、公道へとすべりこんだ。


「うーん……相変わらず、幼稚舎組はお高くとまってるカンジなんだねぇ」


 キャンピングカーを運転しているロカちゃんがため息混じりにつぶやく。


茗荷谷みょうがだに女子の入学ヒエラルキーのこと……ですよね」


 わたしの質問に、ロカちゃんは運転しながらうなづいた。


「そう。アタシも中学編入組の『雑種』だからさ、それなりに生きづらい学園生活だったよ」


 そうなんだ。そんな学園生活を送っていたロカちゃんが、今では幼稚舎組の筋金入りのお嬢様たちに羨望の眼差しで見られているなんて……皮肉が効いている。


「そういえば、ロカちゃん。質問があるんですけど!!」


 ちょっぴりジメッとしてしまった空気を、空気を読まないことには定評がある六花りっかがぶち破る。


「ウチの手芸部にロカちゃんのコスチュームの型紙があったんですけど、あれってロカちゃんが作ったんですか??」

「ううん。手芸部だった友達が作ってくれたの。アタシはデザイン画を描いただけだよ」


 わたしは思わず感嘆の声をあげる。


「すごい! ロカさんって格闘センスだけじゃなくってファッションデザイナーの才能もあるんですね!! あこがれちゃう!!」

「えへへ、それほどでもないよ」


 ロカちゃんはまんざらでも無さそうに謙遜する。そしてその様子を、六花りっかが渋い顔をしながらだまって見つめていた。


 六花りっかは渋い顔の表情のまま、スマホをとりだして写真アプリを開くと、わたしに差し出す。


「(こそこそ)ねぇ……ワンコ。この写真なんだけど、ロカちゃんが話している『デザイン』ってこれのことかな?」


 スマホには、まるで幼稚園児が描いたようなキラキラとした瞳の女の子が、探索コスチュームらしきヘソだしミニスカの服を着た絵が描かれてある。


「(こそこそ)うーん……これは……そうとうヒドイね」

「(こそこそ)ロカちゃんのお友達って、とんでもない才能の持ち主だったんだと思う」


 天は二物を与えずって言うけど……あれって本当だったんだ。


「るんるんるん♪」


 自分のデザインセンスを誉めてもらった(と信じ込んでいる)ロカちゃんは、ごきげんに鼻歌を歌いながら、軽快にキャンピングカーを都心へと走らせていった。

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