44 夢と目的
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初めて会った瞬間から違和感を覚えた。
いや、もしかしたら初めて会ったのはもっと前の出来事だったかもしれない。
彼女を視界に入れた瞬間からいろいろな感情があふれ出しそうになる。
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何とかなったのはとっさに動いてくれた
正直、
これが特級。
私や
まだまだ足りていないものが多いと感じざるを得なかったが、自分が至るべき場所を目の前で見せてくれたことで新たに具体的な目標もできた。
新たな目標が示されるとやはりうれしい。
白斗さんの修行は確かに合理的だ。
だが、それは特級探索者として必要なことの基礎のようなものがほとんどである。
他の候補者の人たちを見ると戦闘スタイルや新たな技を教えてもらっているようで正直羨ましい。
それもこれも今の私の実力ではそれに値しないせいなのかとも少し悩んでいたところだった。
だからこそ明確な道の先を少しでも見せられるとやる気が出る。
今後はより一層修行に身が入るだろう。
いや、何があっても修行をしよう。
そんな思いを抱いて事態は収まったかのように思えた。
だが、現実はそこで終わらなかった。
突如として現れた謎の人物。
まったくもって近づいてくる気配も感じなかったその人物は白斗さんから『
朱王さんとも顔見知りなような人物はその場にいた全員に緊急事態であることを告げ、そのまま病院へと向かうように指示をした。
誰も疑問を口にしなかった。
白斗さんや朱王さんは知っている人物のようだったし、柴井君は私と同じように知らない様子だったけど疑問を挟まずついていった。
私も緊急事態を告げられている以上余計なことは考えずとりあえずついていったが、それでも道中では頭の中ではグルグルと推測が駆け回っていた。
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「あの……白斗さん!
その……ええと……あの、あちらにいらっしゃる女性の方はどなたか教えてください!!」
「…………」
色々な話題が出てきた。
特級探索者を襲おうとしている集団。
今回の襲撃で狙われていた可能性があるのはその候補者であった自分たち。
今後大規模な行動になる可能性。
そのすべてが普段の私であったなら驚いてひっくり返るような内容だが、今回はそれ以上に私の頭の中を占領している事項があったせいで終始落ち着きながら話を聞けた。
いや、ある意味では一番落ち着きがなかったのだが。
それもこれもあの謎の女性が誰なのかが気になっていたせいだ。
彼女——
この場にいる人は誰も質問していなかったから聞いてはいけなかったのかもしれない。
だが、もしこの場で彼女について聞けなければ私は探索者になった意味がない。
是が非でも聞きたいという気持ちと多分な勇気を込めて白斗さんに質問をぶつけてみたが、どうも返事が返ってこない。
下げていた頭を上げてチラリと顔をのぞいてみると、その端正な顔をなんとも気まずそうに歪める白斗さんが見える。
もしや、本当は聞いてはいけない事柄だったのだろうか?
返事が返ってこないので病室内には何とも言えない沈黙が降り注いでいる。
ついでに周りを見渡してみると私と同じ立ち場の候補者の人たちは確かに疑問に感じていたのか白斗さんが何と答えるかを待っている。
ベッドの上では
朱王さんは何でもないような顔をしていたが、途中で何かに気づいたかのように口をあんぐり開けている。
もしかして……私は、本当にやってしまったのではないだろうか?
私が引き起こしてしまった沈黙だが、私ではどうすることもできない。
今更やっぱさっきの質問ナシで、なんて言える雰囲気でもない。
最低限白斗さんと二人になったときに質問すればどうにかなったかもしれないが、既にその疑問は私の口から発射されてしまった。
仕方なかったと言えば仕方なかった。
が、この現状をどうしよう……
何とか切り抜ける打開策……なんてそうそう思いつかない。
どうしようかと思い、もう無理か……と諦めて謝罪して取り消そうとしたその時、今まで黙っていた人物——帆鳥さんが口開く。
「いい……私が話す」
「せ、先輩……?」
「ここにいる人たちはおそらく特級になる人たち。
そもそもそうなればいつかは知る話だし、今後の動きを考えれば今知っても問題はない。
多分会長もそういう意図で私を同席させた……はず。
他の人もそれでいい?」
そう言って帆鳥さんは他の
「……お前たちがそれでいいならいいだろう。
「ワンコなら私が黙らせるから安心しろ」
「分かった」
短いやり取りだったが何かの確認を取り終えた帆鳥さんは改めてこちらに体を向け直してくる。
そしてそのままこちらの目を正面から見つめてくる。
なんというか――昔と変わらない。
あの時と同じ。まっすぐから見つめてくる透き通った深い目だ。
「私の名前は
探索者としては六年前の最初期から活動してるし、非公式だけど一応特級探索者。
けど、実際は他の特級みたいに世間の前に出ることはしてない。
それは色々と事情があるからだけど、今はハク……そこの白斗と一緒に暮らしてる。
これからも人前に出ることはないけど、これからよろしく」
ああ、やっぱりそうだった。
六年前から活動している非公式の特級探索者。
他のみんなは驚いている。
それはそうだろう。
今まで全く知られていなかった特級がまだ隠れていたなんて誰だって驚く。
だが、私は違う。
私は知っていた。
特級ほどの実力がある名前も顔も知られていない人物。
そして、あの
やっぱり
「あの時、あの時助けてくれたのは……あなただったんですね!!」
感極まって思わず涙がにじみ出そうになるのを何とかこらえて口を開く。
出てきた声は自分で思っていたよりも大きな声になってしまったが、仕方がないだろう。
どうしても伝えたかった。
あの時、あの地獄から私を助け出してくれた存在に感謝の意を。
そんな最大限の感謝を込めた言葉に対して
「へ…………?」
口を開いて不思議そうな顔をしていた。
あれ……もしかして私……覚えられてない……?
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アリア:過去に帆鳥に助けられた経験が……ある?
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