第27話 遊園地へ行く
休日の日曜日に、平日と変わらぬ時間に目を覚まして支度を済ませていく。
準備が完了して午前10時過ぎごろに、玄関から声が聞こえてきた。
「らーくーー、もういーいー?」
「おー」
美玖が大声で呼びかけて、俺は玄関へ向かった。
いつもと変わらず、Tシャツ短パンの簡素な格好をしている。
短パンというよりパンツに近い丈の短さゆえに、太ももが露わになっている。
「……それ部屋着じゃないの?」
「いいんだよこれでっ!動きやすいし、涼しいし!ワンピースなんか着たら危ないでしょ」
断然機能性重視か。
そう、俺と美玖はこれから約束していた通り遊園地へと行く。
ここから電車に乗って30分くらいのところにある目的の場所は、関東で二番目に大きいテーマパークとネットに載っていた。
どこか楽しめそうなところがないかと調べていたら、そこに辿り着いた。
「……今から家を出る、っと」
「ん、どうしたの楽?」
「いや何でもないよ」
ここから歩いて10分先の駅で電車に乗っていく。
「ねぇねぇ楽、着いたらまず何乗ろっか!」
「いきなりアトラクションに乗るつもりなのかよ。全部一括の入場料だから、水族館とか他に色々施設があるんだけど」
「えっ、そうなの!?じゃあまずは水族館に行こっ!それから遊園地に行きたい!」
「遊園地行く前に一旦昼飯を挟もうか」
まるで小さい子どものようにはしゃぐ美玖の姿は、他生徒からしたら想像もつかないだろう。
駅に着いたところで、待ち合わせの人物──秋人を発見して歩き寄った。
「おはよう、楽」
「おはよう。悪い少し待たせた」
家から駅まで10分と見積もって秋人に連絡したのだが、現在スマホの画面には10:26と表示されている。
ここに着くまでに少なくとも15分以上はかかっていた。
「全然、俺は気にしてないよ」
「そっか」
そんなやり取りをしている横で、美玖がプルプルと身体を震わせているのが見えた。
「なっ、なんで最上秋人がここにいるの……?!」
ものすごい速さで首を回転させて俺の方を見てきた。
「……一応言っておくと、俺が秋人を誘ったわけじゃないからな。自分で心当たりがあるんじゃないか?」
秋人から突然連絡が来たその内容は、自分も遊園地に行っていいかというものだった。
なんで秋人が知っているのかと思ったが、どうやら美玖が秋人に自慢していたらしい。
俺の知らないところで期末試験の勝負をしていた二人。
それで秋人に勝ったら俺と遊園地に行くつもりだったのだろうが、結果は僅差の敗北に終わっている。
そのことを余程根に持っていたのか、今回遊園地に行くことが決まって真っ先に秋人に自慢しに行った。
「日曜日は部活がないから、暇だったんだよ」
「暇だからって別に着いてくる必要ないでしょ!?」
「いやー、加藤さんがあまりにも嬉しそうに自慢してくるもんだからさ、俺も行きたくなっちゃったんだよ。てことで、今日はよろしくな」
一方的に秋人が優勢のまま話が終わり、改札を通って駅ホームへ階段を降りていく。
秋人、俺、美玖の並びで歩いているため、美玖が俺の肩越しに秋人へ常に睨みを効かせている。
「俺も色々と調べてみたんだけど、どうやらあそこの水族館は珍しい種類の動物も多くいるらしいぜ」
睨まれているのを分かっていながらも軽く受け流して会話を続ける秋人。
「特にペンギンの種類がダントツでさ、フンボルトペンギンだったりコウテイペンギンとかの定番種からマカロニペンギンやヒゲペンギンなんかの他の水族館にはあまりいないような種類までいるんだって。加藤さんはペンギンとか好きそうだし、楽しみだな」
自分を睨んでいる相手に対して笑顔で話しかける姿はなんというか、流石だなと感心する。
「いい気になるなよ最上秋人………!お前がいると何も楽しくないんだよ。私は楽と二人で行きたかったんだから」
「あっははは、それはしょうがないでしょ。だって自分で俺にわざわざ行く日程まで教えといてさ、もはや俺のことを誘ってたでしょあれは」
「ぐぬぬ………っ」
一進一退の攻防、いや秋人の一方的な攻めにより美玖の防御力が後残りわずかとなっている。
笑顔の秋人と睨む美玖のやりとりは電車内でも続き、ただただそれに挟まれている俺は終始居心地が悪かった。
「「「おおぉー」」」
目的地へ到着して、周囲と比較して一際目立つテーマパークの入り口門を前にして三人同時に声を上げた。
家の近くにはこうした大きい施設はないため、普段から目にすることも行くこともあまりない。
「……雰囲気は夢の国そっくりだな」
「最近新しく工事をしたってホームページに書いてあったな。これのことだったのか?」
「パクリ?」
「「おい」」
言わないようにしていた単語をさらっと美玖が言ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます