嫉妬



「あれ?」



 彼の姿が見えないと思ったらソファに横になっている所を見つける。寝ているのだろうか?

 そっと近づき様子を伺う。



「寝てる、よね?」



 しゃがみ込んで顔を覗き込むと規則的な吐息が聞こえる。

 此処で寝たら風邪引いちゃうよ?そう思いながら彼の顔をじっと見る。やっぱり好きだなぁと思いながらそっと彼の頬に手を添える。触れても目が覚めないほど深く眠っているみたいだ。

 ふと彼が何か抱えている事に気がついた。どうやらそれは仕事で使っているノートパソコンのようだ。大事そうに抱えている。



「むー」



 心の中では頬を膨らまし不満たらたらです。と訴えてみる。仕事をしている途中で疲れて仮眠を取ることにしたのだろうか?

 そっと起こさないようにそのパソコンを引き抜く。



「ぽいっと」



 本当は投げてしまいたかったか彼の大事な仕事道具を粗末に扱う訳にもいかず、机にそっと置いた。

 そしてソファに乗り寝転がり、パソコンに取って代わるように彼の腕と腕の間に頭を入れる。入れようとする。しかし何故かつっかえて頭を通せない。



「ん?んー!……あれ?おかしいな?」



 何度か位置を変え、腕と腕の間に頭を押し付けるも上手くいかない。

 仕方がないので両手で腕を掴み頭を入れるスペースを作る。ぐっと頭を入れ、彼の腕が首の位置に来るようにする。



「ふぅ」



 ぎゅっと腕を掴み達成感に満たされていると後ろから笑い声がした。びっくりしてビクッと体が固まる。

 そんな私の態度に慣れているように頭を撫でてくる。



「いつから起きて?それに頭、撫でたら、だめ……」


「なぜ?」


「眠く、なるから」


「俺は眠いからお前も寝ろ」



 そう言って身体を隙間なく抱き寄せられる。身体に伝わる彼の鼓動と頭を撫でる温かなぬくもりでゆっくりと眠りに落ちていった。

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日常の1ページ 短編集(1話完結) 瑠翠 幻花 @rusuigenka

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