ふたりきりの夜
「おいしい! パパの作るケーキは、なんでいつもこんなにおいしいの? ここなにも、おしえてよ」
「パパはプロだからなぁ。すっごく勉強したんだぞ?」
大きな手のひらが、私の頭を撫でる。
あれ? 目線がすごく低い気がする。わたし、いつからこんなに身長が縮んでしまったんだっけ?
「ここなも、パパみたいになりたい」
おかしいな。自分を名前で呼ぶのは、子どもっぽいからやめなきゃって、直したはずだったのに。
「ここなは、ママに似てるからな。どうかな?」
パパが笑う顔が、大好き。
すごい。夢みたい。わたし、パパとお話してる。
「じゃあ、ここなだけに特別に教えてあげる。ママには、ひみつだぞ?」
「うんっ」
「それはね」
──ピピッ、ピピッ、ピピッ。
なんの音? パパの声が聞こえない。
パパ。ねぇ、パパ……。
息苦しくて、わたしはまぶたをひらいた。
──ピピッ、ピピッ、ピピッ。
鳴りひびくのは、ベッドの上のスマホからのアラーム。
カーテンのすきまから太陽の光がさしこんで、そのまぶしさに目がくらむ。
なんだ、夢か。でも、なんの夢を見ていたんだっけ?
手を伸ばして、スマホのアラームを止めたいけれど、なぜか身動きがとれない。誰かに、ぎゅっと抱きしめられているみたいに。
「んー、うるせ……」
目の前から、声が聞こえた。男の子の声。
まだ寝ぼけている頭が、ちょっとずつ目覚めてきた。目の前に、黒髪の男の子がいる。
「!!」
その男の子・リルに、わたしはベッドの上で抱きしめられていた。
「きゃああああ!!」
バチン!
「いってぇ! なにすんだ、てめぇ!」
「わぁ!? ごめんってば! だって、リルが布団のなかにいるから!」
しかも、抱き枕みたいに抱きしめられてたし!
「はー? 布団のなかぁ? いつも入ってるだろうが」
「い、いつもは、黒猫のぬいぐるみになってるじゃない。急に元に戻って、だ……だきしめられてたら、びっくりするよ」
「ああ、お前、俺の顔好きなんだもんな」
「自分でそれ言えるの、すごいよね……」
はぁ。ずっとドキドキしてる。
胸に手を当てて、息を深く吸ったり吐いたり。
同じベッドの上にいる、リルの顔をチラッと盗み見る。
うう。くやしいけど、今日もかっこいい。
わたしとはそんなに背丈が変わらないくせに、抱きしめる力は強くて、手のひらだって大きくて。
おさまれ、胸の音。ドキドキしすぎ!
あれ? そういえば、わたし、なにか夢を見ていたような……。
「リル、着替えるから、猫になってスクバの中に入ってくれる?」
「やだね。めんどい」
「もう! 遅刻しちゃうよ!」
「お前が出ていけばいいだろ」
「そんなこと言うと、今日は生気あげないんだからね」
「てめぇ、卑怯だぞ」
「ここなー! なにさわいでるの? 早く準備しなさい!」
「はぁい!」
リルとの言い合いの中に、ママの声も参加する。
リルがわたしの元に現れて、1ヶ月が過ぎた。
その日からずっと、わたしの平穏な朝は戻ってきてはいない。
「今日は、エッグタルトだよ」
通学途中の道路で、リルに紙袋を渡す。
昨日の夜、本当はシュークリームになる予定だったんだけど、焼いた時にふくらまなくてぺちゃんこになってしまったから、カスタードクリームをのせてから焼き直して、なんちゃってエッグタルトに。
そのカスタードクリームも、なぜかダマだらけになってしまったわけだけど。
「どう?」
「すげぇ」
「えっ?」
「今までで、一番うまい」
じゃあ、今までで一番まずいのか。
うそでしょ。毎日作り続けて、上達するどころか下手になり続けているとか。
「もっとよこせ」
「どうぞ……」
「ここな、お前、魔界に来たら、俺の専属料理人にしてやってもいいぞ」
「あんまりうれしくないよ、それ」
ん? わたしが魔界に?
「え? 願いごとを3つ叶えたら魂をうばうって、つまり、わたしが魔界で生きるって意味なの?」
魂を食べられちゃって、存在が無くなるって意味なんだと思っていたけど。
「いや、ちがう。悪魔に魂をうばわれたら、人間は死ぬ」
「ストレートすぎてこわいよ。じゃあ、専属料理人なんてなれないじゃない」
「そうだな。……あれ? そういえば、そうだな」
なぜか、わたしよりもリルが不思議そうな顔をしている。
でも、そっか。リルはいつか、魔界に帰っちゃうんだ。その時は、わたしの魂をうばったあと?
どうしてだろう。出会った時から分かりきっていたことなのに、今日は胸がザワザワした。
わたしは歩きだすのに、リルは立ち止まったまま。
「リル、学校行こう?」
「あ? ああ……」
ちょっとおかしいリルのとなりで、わたしも心がずっと落ち着かない。ギュッと目をとじて、頭を振る。
「来週から、夏休みだね。その前に、学年行事で海に行くんだよ」
無理やり明るい声を作って、楽しいことを口にする。
「海ってなんだ?」
「魔界には、海ないの? えーとね、いっぱい水があるところかな。学校のプールとは比べものにならないくらい、深くて大きいの。青くて、きれいなんだよ」
「ああ、それなら、魔界にもある。真っ赤なマグマがグツグツと」
「全然ちがうよ。マグマの海では泳げないでしょ」
「水がいっぱいあるからって、それがなんなんだ」
「テントで寝て、たくさん泳いで、砂浜ではビーチバレーとかやるの。一日中遊べるよ。楽しみだね。一緒に、いっぱい遊ぼうね」
リルはキョトンとしてから、吹き出して笑った。
「悪魔と一緒に遊ぼうとか、楽しみとか、お前は本当に変な女だな」
ドキ。
今、胸の音がすごく大きかった。
リルの笑顔がかわいくて。でもそんなの、今にはじまったことじゃなくて。なのに、なんでこんなにキラキラして見えちゃったんだろう。太陽が暑いせいかな。
リルの手が、肩に触れる。予感がして、わたしはぎゅっと目を閉じた。
リルの唇が触れた場所は、右のまぶた。
こ、ここ!?
「な……なんで、変なところにするの?」
「お前が目を閉じないと、できないところだから」
「も、もう……、理由になってない……」
本当に、あつい。夏は、もうすぐそこ。
*
「それ、冷めてからオーブンに入れてない? シュークリームはね、生地が温かいうちに早く作業しないと、ふくらまないから」
「そうなんだぁ……。だから失敗しちゃったのかな」
教室に入ってから、わたしは倉科さんに昨日の夜の失敗シュークリームについて相談していた。
あの掃除の時間の一件から、気になって少しずつ話しかけていくうちに、今では料理上手な倉科さんにアドバイスをもらえるまでの関係になった。
「あ、じゃあね、そのあとカスタード作ったんだけど、それはそれでダマばっかりになっちゃったのは?」
「カスタードも失敗してるの? 混ぜる時、一気に牛乳入れたりしてない?」
「う……、したかも」
倉科さんはあきれたように肩をすくめて、わたしにスマホの画面を見せた。ショートケーキのレシピ?
「今日、このケーキ作るつもりなの。よかったら、雨月さんもうちに来て、一緒に作る? 言葉で教わるより、作るところ見たほうが覚えやすいでしょ?」
「いいの!? うれしい、ありがとう……! すごいね倉科さん、スポンジケーキが焼けるなんて」
倉科さんのおうち行くの、初めてだな。楽しみ。
仲のいい人には、こんなに面倒みがいいだなんて、少し前までのわたしだったら、知らないままだった。ある意味、リルのおかげ……なのかな。
「雨月さんが料理勉強してるのって、リルくんのため?」
倉科さんが、少しえんりょがちに聞いてくる。
あ、倉科さんって、今でもまだリルのこと……?
……おかしいな。今日は、胸の調子がずっとおかしい。
わたしはそれを隠して、唇のはしを上げて笑う。
「ううん。リルのためだったら、上達はしないほうがいいから」
「は?」
「あ、えーと、なんでもないよ。あはは」
倉科さんと別れて、自分の席に戻る。
「おはよう、雨月さん」
「蒼羽くん、おはよう」
前の席の蒼羽くんがほほえんであいさつをくれて、わたしも返す。
あの日のことを、わたしはまだ聞けずにいる。天使が来るべきって、どういう意味だったの? どうして蒼羽くんには、リルの魔法が効かないの?
「最近、倉科さんとよく話してるよね」
「うん、倉科さん、お菓子作りが得意だから、アドバイスもらってるの。わたしも、上手くなりたくて」
「へぇ、いいね。お菓子作りが好きなんだ?」
「うん、……へたくそなんだけどね」
「いいな。僕も、雨月さんが作ったお菓子、食べてみたいな」
ニコッと笑って言ってくれた言葉は、きっと社交辞令。
そういえば、あの日、わたしがちゃんとおいしいお菓子を作れる女の子だったら、天使が来ていたのかな。リルじゃなくて、違う人が……。
「雨月さん?」
「あっ、うん。いいよ。いつか、蒼羽くんにも──」
「だめ」
喋れなくなったのは、うしろからリルがわたしの口を手でふさいだから。
「だめ。ぜんぶ、俺のだから」
いつの間に……!?
リルは、蒼羽くんに向かって、真っ赤な舌をベーッと出している。
「いや、僕はリルくんじゃなくて、雨月さんに言ってるんだけど?」
「ここなのものは、俺のものなんだよ」
ジャイアン理論って、悪魔の世界にもあるんだ。
本当に仲がわるいんだから。というか、苦しい!
「ぷはっ、こら、もうリル!」
リルの手から抜け出してしかると、リルはぷいっと顔をそむけた。
まぎらわしいこと言って、もう!
ぜんぶ俺のって、お菓子のことだよね、そうだよね?
リルに口をふさがれていたから、やっと息ができる。ドキドキがうるさい。
*
「リル、今日は倉科さんのおうちに行くから、ひとりで帰ってくれる?」
「やだ」
即答。
放課後になって、わたしはすっかりリルとふたりだけで下校するのが、当たり前になっていた。
「え、リルも倉科さんちに行きたいの? いきなりひとり増えて、おじゃまじゃないかな」
というか、倉科さんがまだリルを好きなんだとしたら、家につれて行くのは、なんか……いやなんだけどな。
……って、わたし、なにがいやなんだろう。
「別に行きたかねーけど、俺はお前に付きまとうって決めてるから」
勝手に、変なこと決めてる……。
「あ、じゃあね……」
「雨月さん、おまたせ。……バッグ、そんなに何が入ってるの?」
帰り支度を終えた倉科さんが、わたしの席にくる。
指摘されたわたしのスクールバッグは、中に入れたものでパンパン。
「えーと、色々……。持って帰らなきゃいけないものが多くて」
「夏休み前じゃないんだから」
「あはは」
あきれた様子の倉科さんに、棒読みの笑いを返す。
「リルくんは一緒じゃないの? 同居してるんでしょ?」
「う、うん。先に帰ってるって」
「そうなんだ」
心なしか残念そうな倉科さんに、「行こう」と、わたしは腕を引く。
わたしのスクールバッグの中には、猫のぬいぐるみ。……に、変身したリル。
バレなきゃいいけどなぁ。
「ケーキのスポンジはね、このメレンゲの泡をできるだけつぶさないように、底からすくうみたいに混ぜて……」
倉科さんの家におじゃまして、早速ケーキ作り。
倉科さんはハンドミキサーで卵白を泡立てて、他の材料を手早く混ぜていく。
「わ、すごい、きれい。この泡をつぶさないようにって、結構むずかしくない?」
「慣れればそうでもないよ。はい、これでオーブンに入れるの」
テキパキと作業を終えた倉科さんは、余熱をしていたオーブンに生地を入れた。
「焼いてる間に、ホイップクリーム作ろうか。雨月さん、そっちをまかせてもいい?」
「うん。やってみるね」
ボウルに生クリームと砂糖を入れて、ハンドミキサーのスイッチを入れる。
うちにもハンドミキサーはあるけど、機種は違うものだし、キッチンの作業台の高さも違っていて、妙に緊張してしまう。
「待って、その辺でストップ」
「あ、うんっ」
「混ぜすぎると、かたくなって分離しちゃうから。あとはゆっくり混ぜて……、うん、いい感じ」
ケーキが焼き上がるまで、わたしたちはリビングで休むことにした。リル入りのスクールバッグも、そこに置いてある。
「はい、どうぞ」
「ありがとう。いただきます」
倉科さんが紅茶を入れてくれて、カップに口をつける。
わ、おいしい。わたしが自分で入れたのと、全然ちがう。倉科さん、本当になんでもできるんだな、すごいな。
「雨月さんは、どうしてお菓子作りをしようと思ったの?」
「え? ど、どうしてって?」
「バレンタイン前に急にお菓子作りしようとする、わかりやすい女子だったらいっぱいいるけど、雨月さんはなんでなのかなって」
サラッと毒をまぜるのは、あいかわらずだなぁ。
「わたしの亡くなったパパね、パティシエだったんだ。同じように上手く作りたいんだけど、むずかしくて。少しでも、パパの味に近づきたいなっていうか……」
暗い話をしてしまった気がして、「えへへ」と最後に笑うと、倉科さんは気まずそうに「ごめん」と言った。
「えっ、なんで謝るの? 全然だよ」
ブンブンと手を振って否定すると、とつぜんわたしのスクールバッグがバタンと倒れた。
「わっ、びっくりした。え、なに?」
おどろく倉科さんに、わたしも違った理由であせる。
リルー!! 勝手に動いてる!
倉科さんがわたしのスクールバッグに手を伸ばす。
「倉科さん、待っ」
ボン! と、何かがはじけたような音のあとに、倉科さんの目の前で、黒猫がいつものリルに戻ってしまった。
「えっ、リ、リルくん!? いつの間に……?」
ば、ばかー! 最悪のタイミングで戻るなんて!
「ど、どうやって? え? どこから入って……?」
動揺する倉科さんにかけよって、わたしはリルを自分の背中に隠したくて両手を広げた。
「あのね倉科さん、これはね」
「こいつが遅いから、むかえにきた」
グイッと腕をつかまれて、引き寄せられる。いきおいあまって、リルの胸に倒れてしまった。
ドキっとしたのは、力が強くてびっくりしたから……だけじゃなくて。
最近のわたしは、やっぱりおかしい。リルが、わたしと同じくらいの背丈のくせに手のひらが大きいこととか、とっくに知っていたはずなのに。今さらそのことにドキドキしてしまうなんて。
「むかえに? 何もないところから、突然出てきたように見えたけど……。それに、よくわたしの家が分かったね?」
とまどう倉科さんの声で、ハッとする。そうだった、今はこっちのフォローが先。
「実はさっき、リルにスマホでメッセージ送ってたんだ。あのー、えーと……、そう、ママが! ママが、心配してるからって。その時、倉科さんの家の場所も送ってて」
「そうなの? 雨月さんち、結構うるさいんだね」
時計を見ると、まだ夕方の5時。外も明るい。
倉科さんの中で、わたしのママがめちゃくちゃ過保護な親になってしまった。
──ピー、ピー。
オーブンから、焼き上がりを知らせる音が鳴る。
「焼けたみたい。雨月さん、手伝ってくれる?」
「うん、もちろん」
リルからはなれて、倉科さんと一緒に再びキッチンへ向かう。
「リルくんって、本当に雨月さんのこと大切にしてるのね。うらやましいな」
きっと、誰にも聞かせる気がなかった、小さな小さなひとりごと。わたしは、気付かないふりをした。
本当は、出来上がったケーキはその場で一緒に食べるつもりだったらしいのだけど、ママが心配しているという、わたしの精一杯のうそを信じてくれた倉科さんは、おみやげとしてケーキを持たせてくれた。
倉科さんには今度、今日のお礼とおわびをしよう。
「はぁ、急にリルが出てくるから、びっくりしちゃったよ」
ふたりの帰り道で、わたしはため息をついた。
「なんでいきなり、猫の魔法といちゃったの?」
「魔力なくなったんだよ」
「魔力が?」
そっか。いつものリルなら、人間の姿になっても、そのあと倉科さんの記憶消しちゃいそうだもんなぁ。
「魔力がなくなっても、魔法が使えなくなるだけで、リル自身は元気なんだね。よかった」
「やっぱりお前は、おかしいな。悪魔に魔法使われる心配がなくて、普通はそのことを安心するもんなんだぞ」
「だって、リルが元気なくなっちゃったら、いやだよ。でも、魔法が使えないって分かってて、どうして倉科さんちまでついてきたの?」
「お前、前にあいつにいじわるされてたじゃん」
「……心配して、ついてきてくれたの?」
「別に。そんなわけないだろ。俺は、悪魔だぞ」
「ありがと、リル」
「だから、ちがうって言ってんだろうが」
「帰ったら、ケーキ一緒に食べようね」
「あいつが作ったのか。まずそうだな」
「おいしいよ。クリームはわたしが作ったから、ちょっと自信ないけど」
グイッと手を引かれて、
「えっ、なに――」
ぜんぶ、聞くことができなかった。
不意打ち。右の頬にキスをされた。
「い、いつもいきなりするの、ズルいよ……」
「言っただろ、魔力なくなったって」
うう、やられた。慣れる気が、少しもしない。
そのたびにドキドキして、心臓がもたない。
──ピコン。
スマホから、メッセージが入った通知音が鳴った。
「あ、ママだ。今日も夜遅くなるみたい。戸締まりしっかりとね、だって」
「ふーん」
興味のなさそうなリルに、ふっと笑いがもれる。
そういえば、最近はママの帰りが夜遅くになっても、さみしいって思わなくなったな。朝から晩まで、リルと一緒だし。
リルは、あれやれこれやれって、要求も多くて、ひまに感じる間もない。
そっか。わたしって、リルが来るまでさみしかったんだな。
その日の夜は、ふたりでごはんを食べて、倉科さんからおみやげでもらったショートケーキを食べた。
あいかわらずわたしの作った夕飯のグラタンはまずくて。でも、リルはいつも通り「うまい」と言って食べてくれた。
ケーキは残念ながら、「お前の手作りの200倍まずい」と言われてしまったけれど。
わたしの腕がさらにわるくなったのか、それとも倉科さんが腕を上げたのか。
でも、「クリームだけ、ちょっとうまい」……だって。
それでうれしくなっちゃうわたしも、どうかしてるけど。
眠る時間になっても、ママはまだ帰ってこない。
戸締まりを指さし確認してから、あくびをひとつ。
自分の部屋に戻ると、いつもよりあきらかにベッドの上の布団が大きくもりあがっていた。
わたしは、「もうっ」と小言をもらして、かけ布団をめくった。
予想していた通り、リルが悪魔の姿でベッドの真ん中にゴロンと寝転がっていた。相変わらず、しっぽがかわいい。
「リル、その姿のままでベッド入ると、せまいでしょ。猫になってよ」
せまい以外にも、近すぎてドキドキしちゃうって理由もあるんだけど、そんなことリルには言えない。
「それ二個目の願いごとか? なんてな」
いつもみたいに、わたしが「ちがうよ」と言うのを期待してか、リルは笑いながら聞いてきたけど、わたしはすぐに返すことが出来なかった。
そうだ、それがあったんだ……!
「リル、決めた!」
「なにが?」
「ふたつ目の、願いごと!」
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