三角関係?
それから、1週間が過ぎた。季節は、6月。
すっかり暖かくなって、制服も夏服に衣替え。
女子は半袖のセーラー服に、青いチェックのスカートに。そして、男子は水色のシャツに、女子よりも少し濃い色の青いチェックのパンツに。
リルも夏服に変わって、今でもわたしのそばにいる。
願いごとを、ふたつ残したままで。
「はい、リル。今日はね、レモンケーキ。どうかな?」
学校の昼休み。給食の味が悪魔には合わなくて、食べられないリルのために、昼休みになるとわたしたちはいつも、手作りのお菓子を持って、誰も来ない校舎裏に移動する。
「ど、どう? 今日こそ、おいしく出来たと思うんだけど」
「いつもどおり、うまい。気に入った」
じゃあ、いつもどおりまずいんだ……。
「そっかぁ、今日もダメかぁ」
「ダメじゃねぇって。昨日のチョコムース? あれも、うまかった」
「だから、それがダメなんだってば」
リルがおいしいと感じるイコール、人にはまずいってことだから。おいしいって言ってくれるのは、すごくうれしいけど。
「俺は全然いいけどな。お前は、一生人間の料理が下手なままで。全部、俺が食ってやるよ」
「ありがと。でも、それだと、一生リルにしか食べてもらえないね」
そういえば、リルっていつまでこの世界にいられるんだろう。わたしがずっと3つの願いを叶えないままなら、ずっとここにいるのかな。
リルにとっては、どっちがいいんだろう。……なんて、聞くまでもないよね。最初からずっと、魔界に帰りたがってたんだから。
──キーンコーンカーンコーン……。
「あ、チャイム。教室戻らなきゃ」
いけない。ちょっと気持ちが暗くなってた。切りかえて、校舎に入ろうとするわたしの手をつかんで、リルは不機嫌そうにまゆを寄せる。そして、わたしを後ろから抱きしめた。
「ちょ、リル……!」
「こうでもしないと、お前逃げるだろ」
「だ、だって……!」
チュッと、やわらかい唇が触れるのは、左の耳。
ポッとリルの体を光が包む。
「なんでいつも、顔とかにばっかりキスするの……?」
「口に近いところの方が、たくさん生気が取りこめるから」
「うう……」
なに、その理由。
季節が変わって、リルがそばにいることに慣れてきた。だけど、この行為だけは、慣れそうもない。
きっと、ドキドキしてしまうのは、わたしだけだろうけど。
*
授業が全て終わり、掃除の時間。
掃除のグループは、出席番号順で分けられていて、わたしたちのグループは今日は理科室の掃除。……なんだけど。
「雨月さん、わたしたち用事があるから、わたしの分も掃除やっててもらえるよね?」
同じグループの倉科さんとその友だちの押野さんが、わたしにほうきを押しつけてきた。倉科さんの言い方は、こちらに拒否権を発動させる気がまるでない。
「え、今日も?」
「なに? だめなの?」
「あ、ううん、大丈夫だよ……」
倉科さんのずるいところは、男子には聞こえないように、わたしに押しつけるところ。
蒼羽くんも同じグループなのだけど、今日は委員会の仕事があって、遅くなるらしい。
この地味ーな嫌がらせは、数日前からはじまった。原因は分かっている。リルが、倉科さんのお菓子をまずいと言って、わたしのお菓子をおいしいと言ったから。
完全に、目をつけられちゃったなぁ……。
倉科さんたちが理科室を出ていこうとした時、
「えっ、なに? なんか、壁がある?」
と、理科室の扉の前で、ふたりが廊下に出られずに焦っている。
なにやってるんだろう。壁って? 倉科さんたちが出られないのは、そこでリルが通せんぼしてるせいなのに。
「おい、助けてやろうか?」
リルが目の前で喋っているのに、倉科さんたちには何も聞こえていないみたい。もしかして、わたしにしか見えてない?
「お前、昨日の夜もこいつらのこと俺に愚痴ってたじゃん。困ってるなら、助けてやるよ。ただし、ふたつ目の願いごとと引きかえでな」
リルが、楽しそうにニヤニヤ笑っている。
元はと言えば、リルのせいなんだけど。みんなの前で、手作りお菓子をまずいなんて言うから。
愚痴ってたっていうか、リルが女子に冷たくすると、その分わたしにしわ寄せが来るからやめてって言っただけなんだし。
何かを一から作ることの大変な気持ちが分かるから、どんな嫌がらせをされても、わたしは倉科さんを本気でうらむことができない。
「いい。わたし、自分でなんとかできるから。願いごとは、使わないよ」
「は? こないだは、くだらねーこと願ってただろ」
「くだらなくないよ。あれは、本当に叶えてほしかったんだもん」
わたしはリルに言ったつもりだったけど、見えない倉科さんにとっては、ただのひとりごとでしかない。
「なに? 意味わかんないんだけど。言いたいことがあるなら、ハッキリ言えば?」
扉の前からはなれて、倉科さんがこちらに詰め寄ってくる。女子のボス的な位置にいる人に、この言い方をされるのは、正直めっちゃこわい……!
その迫力にたじろいでしまって、わたしはちょっとずつうしろに下がる。
「雨月さんさぁ、最近調子乗ってない?」
「の、のってません……」
こ、こここ、こわぁ!
「あ、あの……!」
ジリジリと、どんどん距離を詰めてくる倉科さんに、覚悟を決めて声を出そうとすると、
「おい」
リルが、倉科さんの腕をつかんだ。
「えっ、リ、リルくん!? いつからいたの!?」
あれ? 倉科さんにも見えてる?
「こいつ、俺のだから。勝手に、手出さないでくれる?」
突然姿を見せたと思ったら、なんかすごいこと言ってる……!?
「なっ……、リ、リルくんが、わたしのお菓子まずいとか言うからじゃん!」
倉科さんも負けずに応戦するけど、声がふるえている。
「だってまずかったし」
もしかして、これって、助けてくれてるの……?
「ひ、ひどい……」
いつも強気な倉科さんが涙目になってふるえるのを見て、わたしは考えるよりも先に、口が動いてしまった。
「そ、そうだよ。今のは、リルがひどいよ」
おどろいた顔をしているのは、リルだけじゃなくて、倉科さんも。
「リルは知らないかもしれないけど、何かを作るって、すごく大変なことなんだよ。それを、まずいって言われるの、悲しいもん」
わたしは、リルが現れるまで、ずっとそうだった。だから、倉科さんの気持ちが痛いくらいに分かる。
「倉科さん、ふるえてるよ。あやまって」
リルは、みけんにシワを寄せて、大きなため息をついた。
「は? 俺は、お前を」
「あやまって、リル。わたし、言ったよね。女子に冷たくしないでって」
ふるえるけど、わたしはせいいっぱいのにらみで、リルをじっと見る。
わたしがふるえている代わりに、倉科さんのふるえは止まったみたい。ずっとびっくりした顔で、わたしを見ている。
リルは、少しもゆずらないわたしに、「チッ」と、小さく舌打ちをした。
「はぁ。……わるかった。言いすぎた。おい、これでいいか?」
うそ……。リルが……あやまった? ものっすごくいやそうで、しぶしぶだったけど。
わたしは、倉科さんの顔を見る。びっくりした表情が、ゆるんでいく。
「雨月さん、どうして? わたし、いやなことしたのに」
「わたしも、気持ちわかるんだ。いっしょうけんめい作ったのに、まずいって言われるのって、つらいよね」
倉科さんは下をむいて、つぶやいた。
「……ありがとう」
耳を赤くした倉科さんは、わたしの手から掃除道具をうばうように取って、そばから離れた。
「お前、マジで意味分かんねーな。あの女に嫌がらせされてたくせに」
「でも、リルもあやまってくれたよね。ありがとう」
「別に。お前のためじゃない。お前のこと好きに使っていいのは、俺だけなのに、あの女うざかったから。あやまれば、また俺だけのものになるかと思って、折れてやっただけだ」
「わたし、リルのものでもないんだけど」
「俺のもんだろ」
倉科さんが普通に掃除をはじめたのを見て、わたしは久しぶりにホッと胸をなで下ろした。
なんだか、まだドキドキしてる。さっきの状況がこわかったから……だよね。リルの目を見るのが、恥ずかしいのは。
結局、わたしがリルにあやまらせちゃったけど、リルは本当は、わたしを倉科さんから助けてくれたんだよね。
びっくりした。男子に、そんなあつかいしてもらったこと、なかったから。
わたしの前に立ちはだかって、倉科さんから守ってくれた。あの瞬間、悪魔じゃなくて、リルがキラキラした王子様にみえちゃった。
……なんて。漫画の読みすぎかな。
倉科さんたちふたりがほうきを担当してくれたから、わたしはフローリングワイパーを、用具入れから取り出す。
ほっぺた、あったかい。これ、なんでおさまらないんだろう。キスされたわけじゃないのに。
「親父は……」
「え?」
リルに話しかけられた気がして、わたしはハテナを返した。
「親父は、人間なんか欲望のかたまりだって言ってた。俺はガキの頃からそう聞かされてて、それをずっと信じてたんだ。なのに、なんでお前は、人のために願いごとを使って、今みたいな自分のピンチには使わないんだ? お前は、親父の言う“人間”と、ちがいすぎる」
「えっと、それは……」
リルのパパも、こっちの世界に来たことがあるんだ。
「んー、なんて言ったらいいか分からないけど、人のためにっていうか、それで後悔したとしても、自分で決めたことだからいいの」
なんて、ちょっときれいごとっぽいけど。本当は、リルみたいに自由に生きられたらって、思うことがないわけじゃない。
「やっぱり、お前おもしろいな」
「わたし、おもしろい話はしてないよ? わあっ!?」
リルは、わたしの腕を引く。
「お前に、ますます興味が出てきた」
「っ!」
笑ったリルの顔がすごく近くて、すぐにはなれようとするのに、リルに腕をつかまれていて、距離を取れない。
「リ、リル、近いってば」
「ああ、ちょうどいいから、生気よこせ」
「!?」
はなれるどころか、リルはどんどん距離を詰めてくる。
わたしたち、だいぶ目立つさわぎかたをしてると思うんだけど、理科室にいる掃除グループの誰ひとりとして気にする様子がない。
もしかして、また何か魔法つかってる……!?
「待っ、リル……!! 帰ったらあげるから!」
「無理。待てない」
「わ、わわっ」
顔が近づいてくるけど、リルの力が強すぎて勝てない。
「だ、だめー! リルの顔かっこよすぎて、近くで見れないの!」
目の前のリルの顔が、近づくのをやめた。
「……なに言ってんだ、お前」
「だ、だって、リルの顔、きれいすぎるんだもん。近いとドキドキするから、……やめて」
それも、なぜか今日は特に。
「お前は、やっぱり変な女だ」
リルは変な顔をして、首をかしげる。
よかった。あきらめてくれたみたい。
大きく息を吐いて、胸に手を当てる。
あー、びっくりした。
短時間でドキドキしすぎて、なんだか疲れちゃった。
ずっと熱い頬を、自分の両手で包む。
「おい、手、どけろ。生気吸えねーだろ」
「!? あきらめたんじゃなかったの!?」
「んなこと言ってねーだろ。よこせ」
「だ、ダメだってば、あとで!」
わたしの手を無理やりひきはがそうとするリルに、精一杯抵抗する。
「今でもあとでも、お前が俺の顔好きなのは変わんねーだろ。今よこせ」
「む、むむむ、無理ぃ!」
こんなにさわいでいるのに、理科室のメンバーは気にせず掃除を続けている。やっぱり、リルの魔法なんだ。
「遅れてごめん」
理科室に、またひとり増えた。委員会でおくれると言っていた、蒼羽くん。
蒼羽くんは、まっすぐにわたしたちを見て、こちらに向かってきた。
……あれ?
「あの……、ふたりとも、楽しそうだけどなにしてるの?」
蒼羽くんが、言いにくそうにわたしたちに話しかける。
リルの魔法が、効いてない?
「あっ、ごめんね。ちゃんと掃除するから。ほら、リルも」
「あー、うん、そういう意味じゃなかったんだけど。僕も掃除はじめるよ」
「?」
そういう意味って、なんだろう。
蒼羽くんは苦笑いをして、他のみんなのところへ向かった。
わたしは、リルにもフローリングワイパーを渡す。
しぶしぶ受け取ったリルは、わたしにしか聞こえないように、耳元でささやいた。
「おい、あいつ何者だ?」
「何者って、クラスメイトでしょ。席も近いんだし、そろそろ覚えようよ」
「違う。俺の魔法、あいつに効いてなかったぞ」
「あ、やっぱりそうなんだ。ここに最初からいなかったからじゃなくて?」
「そんなの関係ない。俺様の魔法は、完璧なはずだ」
「でも、今のリルは魔法使ったせいで、魔力が足りてないんでしょ?」
「くそっ。お前が、さっさと生気よこさないからだぞ」
「もう。家に帰ったらって言ったでしょ!」
結局、リルは少しも掃除を手伝わず、フローリングワイパーを片手に、ずっとなにかを考えていた。
そして、放課後。
あっちゃんと由夢ちゃんには、今日も彼と帰るとさっき言われたし、早く帰ってリルにご飯作らなきゃ。
最近ではもう、あっちゃんと由夢ちゃんと一緒に帰ってないし、ふたりには気をつかわせてしまっているから、次からはわたしから言おう。「わたしと一緒に帰れる時だけ、声かけてくれればいいよ」って。毎日「ごめんね、ここな」って謝られるの、こっちが申し訳なくなっちゃうから。
帰りのしたくも終わって、スクールバッグを持って、立ち上がる。
えーと、リルは……。あ、いた。自分の席で寝てる。
さっきまで、一個も授業に出なかったくせに、こんなときばっかり教室に来て。本当に、自由なんだから。
「ねぇ、リル」
「雨月さん」
わたしがリルの肩をゆらして、起こそうとした時、前の席の蒼羽くんから名前を呼ばれた。
「蒼羽くん、なに?」
「あのさ、よかったら、今日一緒に帰らない? 途中まで、帰り道同じだし」
「うん、いいよ。ね、リルもいいよね?」
「あっ、いや、彼は……」
「え?」
「……なんでもない。3人で帰ろうか」
そんなわたしたちの会話が聞こえたのか、リルがゆっくりと起き上がった。
「なんだ? 呼んだか、ここな」
リルが手を伸ばして、わたしの制服のすそを指でつまむ。かわいい……。
「うん、リル、家に帰ろ。おなかすいたよね。着いたら、なにか作ってあげるね」
「おー……」
まぶたをゴシゴシしてる。悪魔のくせに、いちいち仕草が愛らしい。
「じゃあ、行こ。リル、蒼羽くん」
わたしが、ふたりに声をかけると、リルは思いっきりまゆをゆがめた。
「は? なんでこいつも一緒なんだよ」
と、心底嫌そうにリルが。
「先に雨月さんをさそったのは、僕だからね。嫌ならリルくんがひとりで帰ればいいよ」
と、わたしよりも先に、いつものおだやかさが嘘みたいに蒼羽くんが答えた。
ふたりの間に、バチバチの火花が見えた気がした。
このふたりがちゃんと話をしているところって、見たことがなかったと思うんだけど、すでに仲がわるい……? な、なんで?
そんな空気で、和やかムードで帰れるはずもなく。
「……」
「……」
「……」
わたしを真ん中にはさんで、会話ゼロ。それどころか、リルも蒼羽くんも、思いっきりそっぽを向いている。
リルはともかく、蒼羽くんってわたしに用があったからさそったわけじゃなかったのかな。
「じゃあ、うちここだから」
何も話さず、蒼羽くんのアパートまで着いてしまった。
「うん、また明日ね」
わたしは小さく手を振るけど、リルは当然無視。
「雨月さん、また明日」
蒼羽くんは蒼羽くんで、リルを無視。
気まずすぎるよ……。
「行くぞ、ここな」
「うん……」
さっさと歩き出すリルに、わたしはひかえめについていく。ふり向くと、蒼羽くんはニコニコほほえみながらわたしに手を振ってくれていた。
「リル、ごめん、ちょっとまってて」
リルをその場に置いて、わたしはひとりで蒼羽くんの元へ引き返した。
「あれ? どうしたの、雨月さん」
「蒼羽くん。なにか用があったんじゃないの? リルがいたら、言えないこと? ごめんね、気づかなくて。今、聞かせてくれる?」
「それで、わざわざ戻ってくれたの?」
「うん、気になっちゃって……」
蒼羽くんは、ふわっとやさしく笑い、頬をほんのり赤く染めた。
「いや、今日は大丈夫。ただ、雨月さんと一緒に帰りたかっただけだよ」
「え、あ……、そうなんだ?」
わたしと一緒に帰りたかっただけって、それって……。え? えー?
いやいや、まさか。調子に乗るな、わたし。
「雨月さんみたいないい子のところには、天使が来るべきなのにね」
……。ん?
蒼羽くんが言ったことが、すぐには理解できなくて、わたしは視線を返すだけ。天使って、言った……?
「あのさ、リルくんって本当にいとこ?」
心臓がびっくりして、胸の音が大きく鳴った。
「おい、ここな、なにしてんだ!」
「!」
いつの間にか、リルまで道を戻っていたみたい。うしろからグイッとうでをつかまれて、わたしはハッとした。
「あ、うん、今行くね。ばいばい、蒼羽くん」
「また一緒に帰ろうね、雨月さん」
「うん……」
あからさまにイライラしている様子のリルにぐいぐい引っぱられて、足がもつれそう。
「は、速い、速いってば、リル」
「あー、ムカつく。なんだ、あいつ」
「リル、蒼羽くんとそんなにかかわったこともないのに、どこにそんなにイライラしちゃうの?」
それは、蒼羽くんにも言えることだけど。
「全体的に気に入らねぇ」
理由が悪魔すぎる。清々しいくらいにハッキリと言えちゃうのが、うらやましいくらい。
「それに、あいつやっぱりおかしいぞ」
「おかしいって?」
「さっき、あいつとお前が話してる時、引きはなしてやろうと思ったのに、また魔法が効かなかった」
「うそ、そんなことしてたの? なんで?」
「ムカつくから」
「ええ……?」
リルって本当に、自分の思うままに行動しちゃうんだなぁ。
悪魔っていうのもあるだろうけど、魔法が使えちゃうから余計に……なのかな。
「聞くのがこわいんだけど、さっきかけた魔法って、どんななの?」
「ほら」
「えっ、待っ……!」
パチンと指が鳴って、止めるひまもなかった。
再現してほしいなんて、言ってない!
なにが起こるのかと、こぶしをにぎってかまえるけど、シーンとしたまま。
「お前のせいで、魔力が切れた」
ふくれた頬を見て、わたしは大きく息を吐いた。
「も、もー! びっくりしたぁ」
というか、「お前のせいで」は、とんだぬれぎぬ。
「さっきの蒼羽くんのときも、魔力切れだったんでしょ? 早く帰ろ。お腹減ったよね。なにが食べたい?」
「お前の作るものなら、なんでもいい。ぜんぶうまいから」
こんなとき、なんでもいいが一番困るよって言うところなんだろうけど、はじめて言われた言葉にわたしはうれしくなって、リルの手を引いて、いつもより大きな歩幅で家に帰った。
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