第7話

「今日は転校生を紹介する。金閣寺彩華さんだ」

「金閣寺彩華です。よろしくお願いします」

「おー!」

「美人の転校生! 漫画みたいだ」

「上品な雰囲気、彩華ちゃん絶対お嬢様に間違いなし!」

「うわー! いいなぁ、彼氏いるのかなぁ?」

「もう、なによ男子ったら」

「あ、歌麻呂君見つけた! 歌麻呂君-! 来たで! 私がいなくて寂しかったやろ?」

「なんだ、銀閣寺の知り合いかよ」

「あーあ、喜んで損した」

「歌麻呂、知り合いか?」

「凜さん、彼女とは何も無いんや、信じてくれ」

「まあ、私はどうでもいいけど」

「ああ、凜さん、後で説明するから」

「別にいいよ、説明なんて」

「そんなこと言わんと説明させてくれ-!」



 キーンコーンカーンコーン。


「凜さん、学食で食べながら話すわ」

「いいよ、転校生が困ってるぞ」

「歌麻呂君、学食の場所がわからないから連れて行ってや」

「自分で探してくれ」

「歌麻呂、それはヒドイと思うぞ」

「凜さんも、僕の転校初日に言うたやんか」

「私のことは気にするな、転校生に優しくしてやれ」

「ああ! 凜さーん!」

「歌麻呂君、さあ、行こうや」

「ああ……凜さん……」



 キーンコーンカーンコーン。


「凜さん、放課後やで、ちょっと話をさせてくれ」

「悪い、ちょっと用事があるんだ」

「そうなん? ほな、その間に彩華にビシッと一言……って、彩華がいない」

「じゃあな、歌麻呂」

「凜さーん」


「屋上なんかに呼び出して、何の用だ? 転校生」

「あら、ちゃんと金閣寺って呼んでえや」

「何の用だ? 金閣寺さん」

「決まってるやろ、歌麻呂君のことや」

「歌麻呂がどうかしたのか?」

「婚約したって聞いたから慌ててやって来たんやけど」

「ああ、歌麻呂とは婚約した。それが何か?」

「この泥棒猫! 歌麻呂君は私のものなんや」

「私のもの?」

「元々、私の婚約者やったんやで!」

「そうなのか?」

「そうや、東京へ来た途端に歌麻呂君が浮気したんやで」

「私は浮気相手なのか?」

「当たり前やろ? 家柄が違うやんか」

「歌麻呂のご両親は私を認めてくれた」

「そんなの何かの間違いや、ここは身を引きなさい」

「……わかった。家柄のことを言われたら、私は身を引くしかない」

「凜さん! 身を引いたらアカンで!」

「歌麻呂」

「歌麻呂君」

「彩華、僕達は婚約なんかしてへんやないか」

「あれ、そうやったっけ?」

「確かに彩華は幼馴染みで、彩華から何度か婚約を迫られた。せやけど、僕は断ったはずや」

「そんなにこの貧民女が好きなん?」

「ああ、好きや。婚約もした。高校を卒業したら結婚する」

「上流階級は上流階級と結婚した方がええに決まってるやろ」

「僕は、彩華のそういうところが嫌いなんだよ。庶民でも素晴らしい人はいくらでもいる。上流階級にも腐った奴はいるやないか」

「ガーン、私、フラれちゃったの?」

「ああ、フッた。今フッた。確実にフッた」

「私、この女に顔でも負けてへんで」

「いや、僕は凜さんしか目に入らへん」

「私の方がスタイルもええで」

「そんなの関係無い、僕が好きなのは凜さんなんや」

「歌麻呂、無理はしなくていいぞ。確かに、私と歌麻呂では釣り合わない」

「凜さん、もうそんなこと言わないでよ、凜さんは自信を持ってくれたらええねん。凜さんが自信を持ってくれな僕が困るわ」

「……」

「ふん、歌麻呂とこの女、上手く行くかどうか見届けたるからなぁ」

「いくらでも見届けろや」

「明日も明後日も、隙があれば私があんた達の仲を引き裂くから。ほな、今日は帰るから」

「歌麻呂、いいのか? 追いかけなくて」

「凜さん、凜さんはあんな奴が現れたからって引いたらアカンで」

「ああ、そうだな、すまん」

「誰が相手でも引かないって、約束してや」

「わかった、約束する……む!」

「またキスしちゃった、ごめんな」

「いや、今のキスは……良かったぞ」



「ほな、今回のキスはビンタ無しやね」







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