第5話

「ふーっ!」

「凜さん、何かあったんか? 急にため息ついて」

「なんでもねーよ」

「あの不良達は何? すごく感じ悪かったんやけど」

「見ての通りの不良や。まあ、それを言い出したら、私達も不良だけどな」

「あの不良達と話してる時、凜さんすごい怖かったわ。何かあるなら話してや」

「話したくない。話しても解決しないから」

「凜さん、屋上へ行こうや」

「ええー!」



「さあ、他には誰もおらへんで」

「だから?」

「何でも話してくれや」

「ああ、もう、面倒臭いなぁ、わかった、話す。私、あの男達にレ〇プされたんだ」

「な、な、なんやてー!」

「ああ、もう、うるさいなぁ」

「なんで訴えへんの?」

「レ〇プされてる時、動画を撮られたから」

「脅されてるんか?」

「うん、この動画をネットに投稿するぞって。でも、私は、“投稿したら、お前等を暴行罪で訴えてやる”って言ってる。だから、まだネットには投稿されてない。これでわかった? 私は汚れてるんだ。歌麻呂の恋人にはなれねーよ」

「むむむむむむむー!」

「どうした? 歌麻呂」

「そんなことが許されていいわけがないやろー!」

「歌麻呂! どこへ行くの?」


「凜!」

「沙耶、瑠衣、歌麻呂は?」

「4組の不良達を相手に大乱闘、みんな止めてるけど止まらない。どうしよう?」

「私が止める!」


「歌麻呂……」

「やあ、凜さん。もう終わったで」

「4人とも血まみれじゃない。何があったの?」

「僕、護身術というか、格闘技の心得があるねん」

「4人とも、死んでるんじゃないだろうな?」

「大丈夫や、ちゃんと生きてる。加減はしといたから。まあ、殺そうと思えば殺せたけどな」

「歌麻呂……」

「こいつらの携帯は全部没収したで。動画は手に入れた。凜さんは、もう自由や」

「歌麻呂……お前って奴は……」

「今日はちょっと早退するけど、心配せんといてや。大丈夫、上手くいくから」

「あ! 歌麻呂、どこへ……」

「保健の先生が来たよ」

「みんな退いて……ああ、これは重症ね。保健室では処置できないわ、救急車を呼ばないと」



「ものスゴイことになったね」

「4人とも入院だもんね。銀閣寺君、退学かなぁ」

「沙耶、瑠衣、縁起の悪いことを言わないでよ」

「銀閣寺君、帰って来ないね」

「どうしよう?」

「私、歌麻呂の家に行ってみる」

「じゃあ、私も行くよ」

「私も行く」



「お坊ちゃまなら、一度帰って来てから顧問弁護士を連れて出て行きました」

「そうですか」

「失礼しました」

「沙耶、瑠衣、私、明日を待つよ」

「待つだけ?」

「でも、銀閣寺君なら飄々と学校に来そう」

「でしょ? きっと明日、歌麻呂は来る!」

「でもさぁ、凜。なんであいつ等にレ〇プされたこと言ってくれなかったの?」

「そうだよ、私達は凜の味方だよ」

「ごめん、どうしても言いたくなかった」

「これからは何でも話してね、友達なんだから」

「そうよ、友達なんだから」

「うん、ごめん」



「おはよう、凜さん、沙耶さん、瑠衣さん」

「歌麻呂-! 退学にならなかったのか?」

「退学? 僕が? なんで?」

「4人も半殺しにしたじゃないか」

「半殺し? いや、3分の2くらいは殺したつもりやけど」

「馬鹿言ってる場合じゃないだろ」

「僕は退学なんかにならへんで、退学になったのはあの4人や」

「あの4人が退学? 歌麻呂、どういうこと?」

「うん、今は入院中やけど、退院したら日本から出て行ってもらうことになってるねん。大丈夫や、4人の親も納得してるから」

「日本から出て行く?」

「うん、勿論、ごっつしんどい仕事をすることになるで。遠洋漁業とか」

「遠洋漁業?」

「あ、それから、近い内に凜さんに慰謝料が届くわ。たいした金額とちゃうけど、とりあえず受け取ったらええと思うで」

「歌麻呂、私の動画を4人の親とか警察に見せたのか?」

「うん、でも、大丈夫やで。凜さんの顔はぼかしてるし、凜さんの名前も出してないから。凜さんのプライバシーは保護したつもりやで」

「あの4人は、いつか戻って来るだろう? もし、戻って来てから逆恨みされて襲われたらどうしよう」

「大丈夫、遠洋漁業の次はアジア中を転々とすることになってるねん。日本に帰れるのは、早くても50年後や」

「歌麻呂、屋上へ行こう!」



「何? 一件落着やんか」

「歌麻呂、私のためにいろいろありがとう。話すつもりは無かったけど、もう1つ、私の秘密を話しておく」

「まだ秘密があるの? なんでも聞くで」

「私、レ〇プされた時、妊娠したんだ。スグに堕ろしたけど」

「なんやてー! 予定変更、あの4人に対する罰を重くするわ」

「な、わかっただろ? 私は歌麻呂の気持ちに応えられる女じゃないんだ」

「そんなこと、関係無いわ」

「え?」

「もう、凜さんに惚れてしもたから」

「こんな私でもいいのか?」

「うん、僕は凜さんがいい……」

「……歌麻呂、キスするな!」

「いやいや、ここはキスやろう」


 パシーン。


「先に教室に戻る」

「あ、凜さん、待ってやー!」







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