第3話

「めっちゃ美味しい!」

「来て良かった!」

「沙耶、瑠衣、ダメよ、歌麻呂が調子に乗るから」

「調子に乗らせてくれや、凜さんは僕に冷たいなぁ」

「凜、いいじゃん、ドレスもアクセサリーも買ってもらったし」

「髪もメイクも。そして高級レストラン。私達、一気にセレブになれたじゃん」

「明日になれば、一気に庶民に逆戻りじゃん」

「そうなのよねー! 夢は覚めてしまうのよね」

「凜、夢から覚まさないでよ」

「あ、いい方法があるで」

「何? 歌麻呂、余計なことはしなくていいから」

「僕の親友を沙耶さんと瑠衣さんに紹介しよか?」

「え! その人達ってどんな人?」

「僕等と同い年で、2人とも成金の息子やねん。そいつ等と付き合ったら、あるいは結婚したら、沙耶さんも瑠衣さんも本当にセレブの仲閒入りが出来るで」

「マジ! 紹介して!」

「銀閣寺君、お願い! 私達をセレブにして!」

「ほな、次の土曜、2人を呼ぶわ」

「歌麻呂、呼ぶって大阪から呼び出すの?」

「いや、2人は東京。僕だけ大阪やったんや」

「やったー!」

「私達、気に入ってもらえるかな?」

「歌麻呂、鼻水垂らした馬鹿ボンボンと違うだろうな?」

「それが、2人ともイケメンやねん。3人で行動したら、僕だけブサイクや。僕は、凜さんがその2人に惚れたらどうしよう? って、ちょっと怖い」

「まあ、歌麻呂はイケメンではないからなぁ」

「凜さん、しみじみと言わんといてや。まあ、ええねん。いざとなったら、凜さんの好みの顔に整形するから」

「そんな理由で整形していいのか?」

「大事なことやんか。やっぱり凜さんが気に入る顔に変えてもええで。僕は元々、整形しようがしまいが気にせえへんタイプやし」

「歌麻呂は、言うことが無茶苦茶だな」

「あ、食べ終わったらもう1度服を買いに行こうや、次の土曜は別のドレスの方がええやろ?」

「うわ! 銀閣寺君、気が利くなぁ」

「マメで最高!」

「3人ともスタイルがいいし顔も綺麗やから、ドレスがよく似合うわ」

「私は遠慮する、1着売っちゃったし、申し訳無いから」

「そんなん気にしたらアカンで。買いに行かへんのやったら、僕が選んで施設に送るわ、マジやで」

「私のサイズを知らないから、買えないだろ?」

「サイズならわかるで、僕の頭には沢山のグラドルのデータとセクシー女優のデータが詰まってるねん。スリーサイズを当てるのが特技なんやで」

「ほお、じゃあ、私のサイズを当ててみろ」

「ええで。身長163センチ、90、59,88のEカップや-!」


 パシーン!


「当てるな!」

「ビンタは痛いんやけど。ツッコミでビンタはちょっとキツイわ」

「銀閣寺君、私も当ててみて」

「私も」

「沙耶さんは、157センチか158センチ、87,56,86のDカップ!」

「うわ、ほとんど当たってる!」

「瑠衣さんは153か155,85,55,85のCカップ!」

「うわ! 銀閣寺君スゴイ! スゴく役に立たないスキル」


 パシーン!


「だから当てるなって言ってるだろ、気持ちが悪い」

「そんなことより、凜さんもドレスを買いに行こうや」

「わかった、わかった、行く、行くから」



「うわー! キレイなドレスがいっぱい!」

「テンション上がる-!」

「沙耶、瑠衣、はしゃぎ過ぎ」

「凜が冷静すぎるんだよ」

「そうよ、女子ならテンション上がるところだよ」

「もう……」

「凜さん、今度は何色のドレスにする?」

「赤を持っていて、白を売っちゃったからなぁ」

「ほな、紫はどう? 紫って、高貴な色なんやで」

「ふうん……じゃあ、それでいいや」

「ちょっと着てみてや」

「なんか、無難な感じ……って、どこを見てるの?」

「え? 谷間」


 パシーン。


「見るな!」

「見る!」

「言い切るな!」

「まあまあ、喧嘩しないで」

「凜、谷間くらい見せてあげたら?」

「じゃあ、沙耶と瑠衣が谷間を見せてあげたらいいじゃん」

「いいよー!」

「銀閣寺君、見る? 谷間」

「いや、ええわ。凜さんの谷間しか興味が無いから」

「おー! ラブラブじゃん」

「凜、良かったね-! 凜だけだってさ」

「もういい、早く買い物をすませて早く帰ろう。頭が痛くなってきた」

「私、白に決めたから」

「ふうん、沙耶は白なんだ」

「私は黒。どう? 大人っぽいでしょう?」

「うん、似合ってるよ、瑠衣」

「じゃあ、来週の土曜日は我が家で夕食、皆さんを車で迎えに行きますから」



「じゃあ、私達はここで」

「銀閣寺君、送ってくれてありがとね。じゃあ、凜、また月曜日ね」


「なあ、歌麻呂」

「何?」

「その、歌麻呂の友達のイケメン坊ちゃんって、大丈夫なのか?」

「大丈夫か? とは?」

「沙耶と瑠衣、かわいいからって遊んで捨てられたりしないだろうな?」

「ああ、それは無い。あいつ等は昔からモテてるから純愛を経験したいねん。もう、遊びの恋愛はウンザリしてるから、付き合うときは本気やで」

「それならいいけど」

「僕は、沙耶さんと瑠衣さんが僕の友人と付き合ってくれたら嬉しいなぁ」

「なんでよ?」

「その友人達は、自分が本当に好きになれる女性を探していているから。そろそろ相手を見つけてほしいんや」

「ふうん」

「次の土曜日が楽しみやね」

「……うん……まあ。沙耶と瑠衣が楽しみにしてるから」

「あれ? 凜さんは楽しみじゃないの?」



「私? 私は……どうなんだろう? わかんない」







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