第46話

 それ以来、僕の生活に刺激はなくなって本当に平凡になった。今までが騒がしかったわけではないけど、することが急激に減ったのだ。


 探偵業を続けているとはいっても、調査しきったのは今回のカナガワ失踪事件だけだし、そんな僕より、出てくる依頼の数は経験と実績のあるミチさんの方が圧倒的に多い。知名度的なのもあると思うと、小鳩老人が僕に依頼をしてきたことはとても貴重なことだったのかもしれない。


 今は、新たなる謎の失踪者が現れる気配なんてないし、世の中に存在する凶悪犯だって存在しないのではないかとも思えるほど、僕の生活は平和になった。


 緊張で張り詰めることもなければ、何かに心配する必要もなく疑わなくてもいい。


 アンドロイドだがティファは僕の傍にいるし、どうしてティファが涼香に似ているのかの真実も知ることができたし、惠谷ジュンはサイタマの事務所の二階にある一室を借りて当たり前のようにのんびりと生活している。


 ただ、僕はこれからも、思い続けていく。


 そう、僕は待ち続けるんだ。


 ――五十年間。




 三年が経った。それなりに業務も増えてきて、僕たち三人でチームを組み、関東周辺の調査依頼を引き受けるようになった。


 惠谷ジュンが何か特別な能力や才能があるわけではないが、惠谷ジュンの活躍は案外役に立っていた。


 それは、次の調査は敢えて言わないでおくが、惠谷ジュンが活躍することになるんだ。


「感心した」


と、褒めたら、惠谷ジュンは、


「当然ですわ、惠谷ジュンですわよ」


 と、鼻を高くしながらエッヘンと胸を張ったりした。惠谷ジュンが惠谷ジュンだからと言ってなんだっていうんだ。


百八十七センチでドールのような童顔はあまり見ないけれども、別に生活している分には普通の一般的な女性であるのに。


 そんな惠谷ジュンだが、まだ米田さんとの関係は続いているようで、米田さんから貰った懐中時計を首に下げて、度々上機嫌で外出していた。


 サイタマとカナガワの距離だからデートはいつもその中間のトウキョウでするのだと惠谷ジュンは言っていた。中でも二人はよくアキハバラへ行っているらしい。確かに懐古品好きにはぴったりなのかもしれないが、僕はアキハバラの魅力をまだ知ることはなかった。


 そうして――


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