ーーロクーー
第12話
室内着に着替えて、ストロング缶を飲みながら紙きれを見つめる。
――本のしおりは、群青が枯れ果てる間際の姿
少し考えるたびに九パーセントのアルコールを摂取して、数分前の貴重な記憶を曖昧にする。時間の無駄でこのままじゃ何の収穫も得られないとわかっていながらも、酒を飲みながら考えるということを僕は繰り返していた。酒を飲むとそうなるとわかってはいるのだが、飲みたいと思ってしまう僕の思考は完全に自分への甘えというのは理解しているつもりだ。だが、やめられないのだ。
失笑する僕を見ていたティファはこう言った。
「アルコールと言うのは陸さんにとってそんなに手放せないものなのですか?お酒を飲む陸さんの姿はなんだか苦しそうに見えますが、辛かったりしませんか?」
全く。痛いところをつかれて苦笑するよりなかった。
「苦しさや辛さを紛らわすために酒を飲んでいる。そういう風に君には見えるんだね」
僕が自覚していなかっただけで、酒を飲む理由はティファの言う通り、辛く苦しい気持ちから逃れるためなのだろうか……。ティファにそんな目で見られているとは、まるで、自分自身に余裕がないみたいでみっともないと思えた。
自分を恥じながら僕は無意識のうちにまた酒を飲んでいた。それに気づいて再び失笑。
知らぬうちに僕は過去の記憶を辿っていて、気が付けば僕は泣いていた。
そんな僕を見てかティファは、
「陸さん、すみません」
と、いきなり謝りだしたので、「なぜ、謝るんだ」と、僕は返した。
「私は陸さんにとって嫌なことを思い出させてしまったかもしれません」
「別に嫌なことなんて思い出してないよ。でも、なんでかわからないけど、過去を思い出してちょっと切なくなったのは確かだけど。ティファにはわかることはないと思うけど、酒はね、そんな記憶をぐちゃぐちゃにしてくれてどうでもよくさせるんだ。僕が泣いているのはティファのせいじゃないから、特に気に病まないでくれ。明日から頑張るからさ、今日は僕なんか放っといて先に眠っていてほしい」
隠れてストロング缶を強く握りながら、僕は必死に余裕を見せようとしていた。
「わかりました」
ティファは先に眠りについた。
眠るというのはおかしいだろうか、アンドロイドだから、ログアウトした、というのが正しいのだろうか。でも、ティファは人間のようにベッドで眠った。ツインベッドの部屋を予約したから、ベッドは僕のために一つ余ってはいるが、ティファの寝顔が間近で見れてしまうことが僕を複雑な気持ちにさせた。
だって、眠っている姿は……本当に、涼香にしかみえないから……。
ティファの寝顔を見て、僕はどうしようもなく悲しくなってしまい、それを紛らわすために余計に酒を飲んでしまった。買い込んだ三本のストロング缶が尽きると、ホテルの売店に行き再び酒を買い、部屋に戻ってはひたすら酒を浴びるように飲んだ。
仕舞いには気持ち悪くなってしまい、トイレへ駆け込み嘔吐してしまった。残ったのは体の体調不良と投げやりな睡魔だけで、頭痛にうなされながら枕に溶け込むように僕は眠った。
――明日なんて……
仕舞いには気持ち悪くなってしまい、トイレへ駆け込み嘔吐してしまった。残ったのは体の体調不良と投げやりな睡魔だけで、頭痛にうなされながら枕に溶け込むように僕は眠った。
――明日なんて……
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