第9話

 売店で買ってきたカップ麺を食べるべく、ポットで湯を沸かす。


「後、失踪者は何人だっけ」


 ベッドに腰掛けて、ポットの沸騰の合図、スイッチがカチッと鳴る瞬間を待っていた。


「二人ですよ」


 窓を見つめるティファが答える。


 資料の内容をしっかり把握していなくても、僕にはティファがいるから安心だ。


「そっかぁ、まだまだだなぁ。てか、捜査中に失踪者は増えたりするのかな」


僕はカップ麺に湯を注ぎながら訊く。


「可能性はありますね」


「面倒くさいなぁ」


 と、ぼやく。


 ティファ、何を見ているんだろう。


「私と一緒にいるのは嫌ですか?」


 いつの間にか僕に視線を移していたティファ。


「そんなことはないよ。ただ、事件が重いっていうかなんというか……」


「私は役に立ちますか?」


 もごもごしている僕に再び問いかけるティファ。


「まあ? 必要以上の記憶をしなくて、あんまり考えなくていいっていう分には役に立ってるよ」


 僕は、そう答えた。


「そう、それは良かったです」


 納得したのか、ティファは再び窓に視線を戻した。


 ――不思議だなぁ。

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