奇譚0004 見知らぬ子供
高校から帰ってきて自分の部屋に行くと見知らぬ子供がベッドの上で漫画を読んでいる。
「ちょっと何してんの?」と聞いても何も答えない。小学校低学年とかもっと小さいかもしれない男の子だけど何だか怖くて私はとりあえず部屋を出ると母親が帰ってくる。母親に説明して私の部屋に一緒に行くとまだ男の子はベッドの上で寝転びながらジョジョリオンを読んでいる。母親は「ああ、そうかそうか」と言うだけで特に気にする様子も男の子を注意する様子もない。父親が帰ってきても同じような反応で何かがおかしい。私が知らない弟がいたってこと?どう言うことなのか両親に聞いても「そんな気にする事もないだろう」って感じで本当に気にしていない感じだ。その日から男の子は一緒に生活するようになりご飯を一緒に食べて眠るときは私の部屋でベッドの横に布団を敷いて寝ている。学校には行っていなくて日中はずっと家でテレビを見たり本を読んだりしている。話しかけても何も答えないし何も言わないので最初は不気味だったけれどそのうち私も気にならなくなる。私の部屋で二人で黙って漫画を読んでいる時などはわりと安心感というか弟がいたらこんな感じという気がしてちょっと嬉しい。そして男の子は急速に成長し始める。ここ一週間くらいで背も伸びて私と同じかちょっとお兄さんくらいの美形に成長する。私は急に落ち着かない気分になる。無意識に彼の美しい横顔を眺めていると彼がこちらを見て微笑んだ。それで私は1発で恋に落ちた。私ってチョロい!
その夜はドキドキして中々眠れずにいるとベッドの中に彼が入ってきて私のパジャマを脱がして交わる。少し怖かったけれど嬉しさの方が勝って私は彼の腕の中で安心して眠る。朝起きると彼はいなくなっていた。家のどこにもいない。出かけたのかな?と思ったがそれから彼が帰って来ることはなかった。両親も彼がいなくなったことを全く気にしていない。まるで最初からいなかったみたいだ。それから暫くして私の妊娠が判明する。間違いなく彼の子だ。ちょっと躊躇したが両親にこの事を話すと「なるほどなるほど」と言うだけだった。私は産むと決めている。学校を辞めて両親にもサポートしてもらって私は彼の子を産む。彼にそっくりな男の子だ。私は嬉しくて感動してこの子の為に生きていく事を決意した。
私の息子は産まれてから1週間ほどで急激に成長した。最初の彼に会った時くらいに成長して、そしていなくなった。私は自分でつけたはずの息子の名前を呼ぼうとして絶句した。息子の名前が思い出せない。両親はやはり何も気にしていないようだった。私は悲しくて名前のわからない彼と名前の思い出せない息子の事を思って毎日泣いている。
了
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます