第6話 新婚生活は犬も食わない

//SE 小鳥のさえずる音


(二人はベッドで目覚める)

「おはよう。起こしちゃった?」


「ごめん、つい顔や体触っちゃった」


「腕枕させてごめんね。しびれてない?」


「ふふ、ひげが伸びてる。でもその顔も好き」


「あ、私の方は見ないでよ。まだ何も着てないんだから、もう」


「再会してから結構たつけど、前の世界の事はだいぶ思い出した?」


「あなたが戦いに行く前はこうやって朝まで一緒に過ごしてたのよ、憶えてる?」


「あなたが先にベッドを出て戦いの支度を始めると、私はいつも不安になって、泣いていたんだからね」


「毎回あなたは、必ず帰って来るよ、って優しく言ってくれた」


「でもあの日……」


「最後の戦いの日は帰ってこなかった……」


「その日も必ず帰って来るって言ったのに」


「そう、思い出してくれたのね」


「私、もう、二度とあんな目に遭いたくない」


「もう一度、抱きしめてくれる?」


「大好き……」         


「あの、最近体に何か変化を感じるの」


「うん、よくわかんないけど、もしかしたら……」


「できることなら、短い時間でも家族で一緒に過ごしたいよね」


「子供は好き?」


「良かった」


「何か子供とやりたいことってある?」


「そう、遊園地の飛行機の乗り物に乗るんだ」


「楽しそうだね」


「女神に1年って言われたけどさ、何とかできないかな?」


「そうだね。希望を持っていれば、奇蹟は起きるかもしれないよね」 



 ◇ ◇ ◇



「お帰りなさい」


「お仕事お疲れ様。ご飯はできてるよ」


「そう、大変だったね。でも笑顔の可愛い妻がいるんだから元気を出してね」


「自分で言ってもいいでしょ。本当のことなんだから」


「笑ってくれた。良かった~」


「はい、ネクタイとシャツは私が脱がしてあげる。顎あげて」


「ん、このネクタイ、ちょっときついねえ」


「はい。次はYシャツ」


「なーに? なんか顔が赤くなってるよ」


「え、いい匂いがするって? さっきシャワー浴びたからね」


「幸せでしょ」


「はい、次はそでのボタン……」


「はい、後ろ向いて」


「結構、汗かいてるね」


「はーい、終わり。まずシャワー浴びてきたら? さっぱりするよ」


「うん、待ってる。上がったらビールでも飲む?」


「そうそう、今日は報告することがあるの」


「まだよ。 寝る時にね」


(しばらく間)


「そろそろ、寝ましょうか」


「ちょっと軽くマッサージしてあげようか?」


「じゃ、ベッドに寝て」


「わー、かたい。首の付け根とか、こってるよ」


「気持ちいい?」


「上手でしょ」


「あの、それでは…… 報告がありまーす」


「あのね、今月あれがなかなか来ないから、もしかしたらって検査薬を買って調べてみたの」


「そしたらね…… 陽性反応だったの! ねえ、どういうことかわかる?」


「そう、赤ちゃんが出来たの! 今度病院に行こうと思うんだけど、たぶん間違いないと思う」


//SE 抱きついてくる音


「や、うれしいのはわかるけど、そんなに抱きついてこないで~」


「そんなに嬉しいの?」


「私もよ。初めてだからね。どんな子かな~ 男の子かな、女の子かな~」


「どっちがいい? どっちでも、はだめよ」


「女の子? いいね。私はどっちでもいいけど」


「はは、ずるいって。いいでしょ、私が産むんだから」


「え、何? 匂いで性別が分かるって? 噓でしょ」


「科学的根拠があるって? またでたらめ言うんだから」


「えーやだー。上半身だけって、変態じゃない?」


「そう? まあ、ちょっとならいいけど、変なところ嗅がないでよ」


「いや、鼻が触ってるよー、くすぐったい」


「や」


「や、だって」


「ねえ、ちゃんと嗅いでるの?」


「それで? どっち?」


「あ、もうそれくらいで……」


「ねえ、男の子なの、女の子? 結局わかんないんでしょ」


「え、どんな匂いしたの?」


「『いい匂い』じゃないよ! もう、嗅ぎたいだけなんでしょ、変態」


「じゃお返し、今度は私が嗅ぐよ、ちゃんと仰向けに寝て」


「ふふ、じゃあまずは首の匂いから」


「うーん、何も匂いがしないなあ」


「のどぼとけが動いてる。緊張してるの?」


「つーぎーは二の腕~、まずは触診」


「まずまず筋肉はついているけど、ちょっとプニプニかな~」


「さて、匂いのチェックに行きます。腕の匂いは……」


「うーん、ここもあまりしませんねえ。つまらない」


「次は胸いきますよー、かわいい胸毛が生えてますね。知ってたけど」


「ここは…… ケホケホ。さすがにちょっとムッとしますね」


「顔が赤くなってる。恥ずかしいの?」


「さて、いよいよわきの下いきますか~」


「どきどきしてる?」


「では~ うそ。やめた」


「どうしてって? くさいから」


「ははは。おこらないで~、じゃあ匂いチェックは終わりね」


(いちゃつかれる。明るい声で)

「いや、もう私だけの体じゃないんだから、そんなに攻めてこないで~ 優しくしてね」


「私も大好き」 



<続く>


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作者より: たいへん失礼しました。見逃してください。

新婚夫婦ってこんなもんですよね? 知らんけど(笑)

※タイトル本来は「夫婦喧嘩は犬も食わない」と使います。

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