第4話 図書館での再会

//SE 図書館の中、静かなBGM


(ナレーション風に)

「アイリスです。私はあなたを追って、この世界に来ました。でもあなたはまだ私に気がつきません。あなたは今、図書館で本を探しています。私は何とかあなたに気がついてもらいたいんです」


(会話が始まる。ひそひそ話で)

「こんにちは。突然すみません、少しよろしいでしょうか?」


「良かった。ありがとうございます。あ、私怪しい人じゃありません。あなたのことを少し知っているんです」


(どこかで会いましたっけ? との問いに答える)

「ええ、その話は後で……あの、この図書館おしゃれですよね?」


「あ、最近できたんですか、知りませんでした」


「何かお薦めの本はありますか? 図々しくて申し訳ありません」


「ファンタジー小説ですか。私も好きです、何か想像の世界にいるようで……」


 転生したアイリスは、ようやく彼に再会できて、感動のあまり涙が出てきた。


(少し目が潤んだアイリスを見て、泣いてます? と聞かれて)

「あ、いえ少し目にゴミが入っただけです」


「どんな小説か、少し説明していただいてもいいですか?」


「一階の喫茶スペースですか? わざわざそちらで説明していただけるなんて、ありがとうございます」


「え、私の事が何か気になるんですか? そんな、少し恥ずかしいです」


「時間があって良かった。本当に急にすみません」


//SE 移動する二人


(喫茶スペースのテーブル席に隣り合って座る。まるで恋人同士の近さ)


「あ、概要から説明していただけるんですか。ありがとうございます」


「勇者がヒロインを助ける話なんですね」


「そうですか。おもしろそうですね。そう言えば表紙に描かれている勇者ってあなたに似ていませんか?」


「あ、すみません。変な事言って」


「じゃあお願いします」


(少し間)


「……あ、わかります。中世のヨーロッパが舞台なんですね」


「……勇者の方が倒れてしまって、ヒロインが助けるんですね。普通と逆ですね」


「……女神が出てくるんですか」


「……未来に転生するんですか。SFみたいですね」


「……なるほど、ハッピーエンドなんですね」


「ありがとうございました。素敵な内容ですね。それ借りようと思います」


「ところで、あの、この首飾り見覚えありませんか?」


「そう、この碧い宝石に特徴があるんです」


(うーん、わからないなあ、と言われ)

「……そうですか、残念です……」


(すすり泣き始める)

「……いえ、大丈夫です。ごめんなさい、変な人ですよね、私」


「……すみません。私に見覚えはありませんか?」


「私はずっとあなたのことを探してたんです。この世界に来てから……」


「いえ、妄想とかではありません」


「今日ようやく見つけたんです」


「すみません、おかしいことを言ってしまって」


「アイリスという名前は憶えていませんか?」


「そうですか、かすかに記憶があるような感じですか」


(泣き方が大きくなる)

「……いえ、だ、大丈夫ですけど……」


「あんまりです。 あんなに約束したのに……」


「すみません。私が変なんです。もういいです。今日はありがとうございました」


(もう一度、その首飾りをよく見せてくださいと言われて)

「え、首飾りをよく見たい?」


「…… どうぞ、今外しますので……」



(しばらくの間)


「あ、思い出してきました? 本当に?」


「そうです。私の前の名前はアイリスって言います」


「そう、夢じゃないです。私達は前に同じ世界にいたんです」


「ありがとうございます。ようやく思い出してきてくれたんですね」


「そうです。その首飾りはあなたが最後に私にくれたものです」 


「良かった。ずっとあなたを探していたの。愛してる……」

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