第3話 異世界(日本)への旅立ち

//SE かすかな鳥の声


「だんだん意識が薄れてきた? まだ大丈夫よ」


「この世界の事も忘れないで。あなたは私とエーデルワイスという村に住んでいた」


「仲が良くて一緒に遊んだよね……」


「私がつらい時にみんなが避けていた時も、あなただけは私を助けてくれた」


「ありがとう。うれしかった……」


「どんなにあなたに恋焦がれたか……」


「私が勇気を出して告白した時、あなたはこう言った」


「『僕も君の事が好きだった。結婚しよう』って」


「覚えている? 最後に戦場に行く前の日、私とあなたは結ばれた」


「私の震える体を、あなたは抱きしめてくれた」


「今、目の前にあるあなたの体、そこに顔をうずめて私は泣いた」


「あなたは優しく私の髪をなでてくれた」


「そして耳元で囁いてくれた」


「『大丈夫だよ、アイリス』って」


「そして私はあなたに身を委ねた」


「最初で最後の、だけど永遠の時間だった」


「あなたは最後までずっと優しかった」


「私はなぜか泣いてしまったけど、それは嬉しかったから……」


「あなたは別れる前に首飾りをくれた。碧いきれいな宝石……」


「私はあの日を忘れない」




「次の日、あなたは一人で戦場に行ってしまった」


「その決して大きくはない体で、たくさんの敵を倒していったって聞いたわ」


「みんなが言ってた。あんなすごい兵士は今まで見たことが無いって」


「でもこの最後の戦いで、あなたは数百人の敵を倒し、そして力尽きた……」


「あなたは傷ついた体で荒野を彷徨った」


「私は女神に協力してもらって、あなたを探しに出かけた」


「そして今日、衰弱したあなたを見つけたのよ」


「もう一度言うわ。私は女神にお願いしたの」


「あなたを転生させて平和な国で復活させて欲しいって」 




「静かね…… まるで雪が降っているみたい」


「眠い?」


「疲れているのね」


「子守唄を歌ってあげる」


(ささやくような歌、例えばMy Heart Will Go Onの感じで)

 夢の中、見える感じる

 あなたは生きつづける


 遠く離れて、会えなくても

 あなたはここにいる


 近く、遠く、どこにいても、

 心はそばにある


 もう一度 ドアをあけて

 あなたは心の中で生きてる



「ねえ、もうすぐ二人とも意識が無くなるわ。手をつないで……」


「まだ目を閉じないで。最後の言葉を聞いて……」


(涙声で)

「私もすぐにあなたを追いかける」


「必ずあなたの前に姿を現す」


「だから…… どうか異世界でも私に気がついて、約束よ」


「私を思い出してね。 お願い」


「あなたは私が愛した、ただ一人の人」


「決して忘れないで…… 私の元に帰ってきて」 


「じゃあ、その日まで、おやすみなさい」


「異世界への遠い夢の旅を……」


「また会う日まで、さようなら」 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る