第2話 200年前 欧州

「私の名前はアイリス。幼馴染のあなたの事を幼い時から恋焦がれてきました。優秀な戦士であるあなたは、自分を犠牲にして国を守り抜きました。今あなたは傷ついて命の灯が消えようとしています。私は決心しました。女神にお願いしてあなたを転生してもらうことにしました。私も付いて行きます。どの世界に行こうともあなたと一緒にいたいんです」


//SE 小川のせせらぎの音と小鳥のさえずり(森の中)


(アイリス、少し泣きそうな声で)

「目を覚ましたのね、大丈夫?」


「聞こえてる? あなたは敵にやられたの」

 

 くっ、そうなのか…… 体がズタズタだぞ。


「もう少しで命が尽きる。だけどまだ逝くのは早いわ」


「最後に伝えに来たの。もう苦しまなくていい」


「女神様にお願いしたから……」


「私の事わかる?」


//SE 効果音フェードアウト 


「そう、アイリスよ。 あなたはその体で良く頑張った」


「あなたのおかげでみんなが救われたわ。戦いに勝つことができたのよ」


「ゆっくり深呼吸して」


「そう…… 楽になった?」


 ふーっ。少しな。


「良く聞いて。あなたの意識が無くなる前に伝えておくことがあるの」


//BGM 静かな音楽


「あなたは言ったでしょ、必ず生きて帰って来るって」


「でも私は知っていたわ。今度の戦いはとても厳しいものになるって」


 そうだったのか……


「だから私は女神様にお願いしたの」


「もしあなたが傷ついて生き残ることができなくても……」

 

「私と一緒に、違う世界に連れて行ってもらうって」


「あなたは異世界で転生する。私もこの身をささげて一緒にその世界に行きます」


 転生?…… なんじゃそりゃ?


(困惑する彼を見て)

「もう決めたの。わかってるでしょう―― 私はあなたしか愛することができない」


「目を開けて」


「私の事が見える? この首飾りが見える? あなたがくれた碧い宝石……」


「今、あなたも私も転移が始まったところよ、少し時間がかかるわ」


「この白い空間には、あなたと私しかいない」


(彼のおなかをさする)

「酷い傷…… 痛かったでしょうね」


「私を見て、そして触って…… 私を感じて」


「この世界であなたと触れ合えるのはこれが最後よ」


 ああ、アイリス。僕も好きだ。


「私達はこの世界から離れ、記憶が薄れてしまう。だから……」


「私の顔、声、体…… 全てを覚えていて」


「転生先で思い出してもらわないといけないから……」


「女神から言われたわ。あなたと私は200年後の日本という異世界に転生する」


 200年後? マジか。ニホン? どこだそこは?


「別の人間として目を覚ますの」


「でも絶対に思い出して、私の事を」


「私もあなたのことを絶対に思い出すから」


 がんばるよ。


「私はアイリス。あなたを永遠に愛している」

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