第06話 弥助と邂逅②
天正9年2月23日(1581年3月27日)本能寺に到着した信長は、後に弥助と呼ばれる男と初めて邂逅する。
遂に俺は利用された被害者と相まみえることになる。
本能寺の広間の
一番おかしいのは、織田信長が座っている場所だ。
刀剣や壺や花瓶、掛け軸と言った物を飾るディスプレイスペースである床の間に座っているのだ。
本来は上段の間or一の間の高座と呼ばれる他より、一段高くなった場所に座っているのが正しいのだが……一体どんな歴史修正を受ければこんな惨い姿になるのだろう。
お労しや信長公……あんたが一番の被害者だよ。
畳は高級品であまり普及していなかったなんてことは、この際脇に置いて置こう。(いやよくないけど)。
しかも琉球畳なんて呼ばれる正方形の畳が床に張られている。
この時代の武士は人物がを見れば判ることだが、殆どが胡坐か蹲踞、立膝であるため正座をしていることに違和感を覚える。
本来は神道の神、仏教で仏像を拝む場合や、征夷大将軍にひれ伏す場合にのみとられた姿勢だった。
また江戸時代以前には現代の正座のことを「かしこまる」や「つくばう」などと表現し、礼儀作法としても相手によって適した座り方を変えると言う大変面倒なものであった。
正座が一般的になったのは参勤交代が制定された三代将軍の徳川家光(在職:1623年 - 1651年)のころだと言われており、小笠原流と呼ばれる有職故実の影響が大きいとされ、またこの時代から庶民にも畳が普及し始めたことも要因とされている。
僕は正座ではなく、跪座の姿勢を取り件の日本最初の外国人侍の肩書を持つことになるアフリカンサムライ(笑)の到着を待つ。
「オダサマ、キョートヲサワガセル、クロイオーオトコヲ、ツレテマイリマシタ」
正座の状態で額が後退しかけた髭面のおっさんは、カタコトの日本語で信長さまと会話をする。
しかしその声音には怯えや敬意を感じさることはない。
それもそのハズ確かヴァリニャーノは、ナポリ王国の名門貴族の産まれで二代に渡って教皇寵愛を受けた男なのだ。
イエズス会創設のメンバーにザビエルもまた貴族の産まれだったため、同様の地位にいる信長と接することにも慣れているのだろう。
あるいは未開の地の異教徒は敬うに値しないと言う信条の発露だろうか?
「おお、バリナンノ、黒坊主は連れて来たのか?
どこにおるのだ? はよう連れて参れ」
信長はヴァリニャーノと上手く発音できないらしい。
まるで少年のように目を輝かせる信長は何だか可愛く見える。
警護の武士に付き添われ、百八十センチはあろうか? という大男が現れた。
「牛のように黒い肌だ! 日に焼けた人よりも黒いな、炭でも塗っておるのではないか? 水浴びをさせよ」
逸話通り小姓に命じて桶に、水を張り持ってこさせる。
穏やかな春の陽気とは言え、水温はまだ冷たいく現代人としては正直勘弁して欲しいと思う。
後にヤスケと呼ばれるこの人物が水浴びをしている間に、天狗が説明してくれた。
天狗曰くこの出来事は、一次資料に準じた扱いを受けている『信長公記』やルイス・フロイスが記した『イエズス会日本通信』などに記録が残っているらしい。
記述された本の少なさもまた彼が侍かどうか、本当に黒人かどうかの総点になる部分になってしまっている。
事実は後の世には判らない。記された歴史や遺構でしか振り返ることはできないのだから。
そこには自らに縁のある法華宗で、護法善神として祭られている「大黒天やその化身と弥助のことを考えた」などと言う記録は残っていないと言う。
この捏造は、『因幡トミー』や『トマス・メタルリー』と名乗るユダヤ系英国人が書いた論文擬きと、トンでも本の仕業だと言う。
しかも私立首位の生徒数や強姦、医学部不正入試問題や悪質タックルで有名な大学の法学部准教授なのに、研究分野は言語系とアジア史と言うチグハグ具合。
僕は人間が多ければ比例して不祥事が出ると思うが、日本最高学府である東京大学の名誉教授にもとんでもない活動家がいるのだから今更だろう。
僕は小さな声で天狗に質問した。
「肌が黒や他の色で描かれた神仏が全て黒人なら、インドの神々は大体黒人になるし……ボディービルダーや黒ギャルなんかが肌を焼くのは黒人に憧れているとか言われそう……」
流石にそんな馬鹿なことは言わないよね? 僕はそこまで愚かではないと信じたい。
「その通りで御座います」
先ず
洗うどころか黒く染めとるやないかい。
黒人キャラをホワイトウォッシュすれば、差別だ差別だと主張する割に逆の事をしても何も言わないのだから手に負えない。
それどころかあまつさえ日本に、多様性に配慮しろと言うが、全体でバランスを取るのが日本のやり方だ。
もし欧米のようにキャラの人種と声優の人種が同じでなければならなにのなら、エルフやドワーフ、火星人などはどうするつもりなのだろうか? 枠を作られている時点で差別と勘違いしやすい区別されていることを知るべきだ。
純粋に実力で選ばれるべきだ。
それに日本で楽しむために作品を作ってるんだから、お前らが楽しみたければお前らでそう言う作品を作ればいい。
こうさあ、作品を見るにしても謙虚さを持てよ。
ハリウッド映画に日本が出てこない差別主義者! とキレる〇チガイな日本人はそう居ないと思う。
こんなことは言いたくはないし、言うべきではないが「ほならね、自分が作ってみろって話でしょ?」って話だ。
日本の会社に作らせるのではなく、自分達で世界に誇れる面白いコンテンツを作って万歳していればいい。
ジャパニメーションがいいのであれば、どこか国のように日本に金を渡してアニメにすればいい。
金も出さないわりに口を出すのはただのクレーマーだ。
そうやってクレーマーに配慮してネズミーは爆死した。
インディーゲームのスタジオも壊滅的な被害を受けた。
ビーガンと同じく信仰を胸に抱いて理想を抱いて溺死しろ。と思う。
「インカ帝国にはビラコチャと言う白い神が居たそうですが……スペイン侵入後の創作あるいはコロンブス以前にアメリカ大陸へ白人が居た証拠などと言われていますが……証拠がないので境界・疑似科学や宗教的信条や白人至上主義の道具となっているのが現状です」
たしかにヴァイキングが北アメリカの東海岸に到着したと言う物語はあるものの、正式に認められた証拠がないためおとぎ話の域を出ない。
トマス何某にしても、ヘブライ語で「双子」あるいは「正直者」を意味する名前を名乗っているのだから、名前に負けないように生きて欲しいものだ。
「白くなるどころか一層黒くなったではないか!」
と信長は子供のように喜んでいる始末。
お前がヴァリニャーノに黒人を連れて来いと言わなければ、令和の世の人間や僕がこうして苦労することはなかったのに、なんて自分勝手なことをつい考えてしまう。
「コイツハ、ソウイウシュゾクデス」
「バリナンノこの黒坊主を譲ってはくれぬか?」
「ゴシエンヲイタダケルノデアレバ、ウリマショウ」
「決まりだな……」
信長さまは幾ばくかの金子と引き換えに黒人奴隷を購入した。
「お主名は何と申す?」
「
ああ、八号なんて、ネットで見た弥助の出鱈目な苗字が付いている歴史修正の辻褄合わせはここなのね……なんて妙な納得感を覚えていると……
「おいと? 甥が居ると紛らわしい……弥助と言う名を与える」
「ヤスケェ? デスカ、アリガトゴザイマス」
ヴェリニャーノは、弥助と呼ばれる黒人に状況を説明しているようだ。
脳内でロナウドがこういった。
(どうして笑うんだい? 彼の日本語は上手だよ?)
ち、違うんだロナウド。サスケェと発音が同じで一瞬笑ってしまっただけなんだ。
「お前の仕事は儂に付いて回ればいい。後程、腰巻と私邸を与える」
弥助は日本語が判らないようで、困惑の表情を浮かべている。
こうして歴史上に本名すら記されなかった伝説の侍(笑)の【イエズス会の宣教師ヴァリニャーノの黒人奴隷】は、信長の珍しい物好きな性格によって、弥助と言う名前と腰巻、そして自分の家を手に入れたのだった。
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