魔王様のモラトリアム

@hujiwarakariiten

第1話 平和、世界

神々の箱庭。


その世界には人はいなかった。


全て神々が用意し、整えられた世界に、人々は放り出された。


皆は神々に従い、それぞれが独立し、食料を集め、資源を集め、金を集めた。


最初はただ言われるがままの人間達だった。


しかし、季節が変わる頃には頭角を表すものが出てきた。


強きものに人が集まり、集団ができ、国ができあがった。


やがて、国が乱立されると混沌の時代となる。


神々の恩寵たる試練を取り合い、富を独占しようとする国々が戦争を繰り広げた。


皆が互いに罵り合い、弱き物は搾取され、強き者は、より強く、弱き物は強き者の庇護を得るか、滅ぶか。


そうして戦争の坩堝に落ちた国々。


やがて、歴史の蠱毒を経て強大なる一国が生まれた。


いや、蠱毒と言う表現は間違っていた。


その周囲に、戦火の坩堝に堕ちてもなお、牙を失うことは無かった。

それぞれの強さを秘めた軍事大国が多数残ったのだ。


強大なる一国には敵わずとも、牙を失うことがなかった国々。


しかし、彼らが争う事はななった。


敵はいる。


しかし、それは神々に管理された敵だ。


もはや、神々から下賜されたと言っていい敵を狩り、報酬を得る。


その莫大な報酬で、世界は生きている。


そして、世界の現実的な盟主たる一国は、その懐の広さを見せるかように、世界の盟主を交代制にした。


さらに神々の恩寵すら、一国のみで享受せずに、持ち回りとした。



現実的にはその強大なる一国の圧倒的な戦力を背景に、各国は平和と秩序ある恭順を選んだのだ。


これにより、世界は安定した。


ゆえに、複数の軍事大国が乱立するも、皆が充分に日々の糧を得て、争うことなく、平和を謳歌していた。


世界は平和であった。


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