第12話

 ロゼが、授業の開始を待つリースリットが手ぶらなのを気にする。


「わたくし、杖は使いませんの」


「へえ、呪文書メモリアも無いみたいですけど……」


「そう、ですわね……」

 リースリットが見渡すと、40名近くの生徒たちの大半は棒状のモノや書物状のモノなど、何かしらの補助具を携帯しているようだった。

 恩師のセナ先生は杖などの補助具を使う魔術師ではなかった。

 セナ先生が不要だというなら、それがベストな筈だ。

 そうリースリットは信じつつも、やや不安になる。


「……あるほうが良いのかしら?」


呪文書メモリアはともかく、自分の魔術を使おうと思えば、属性結晶クリスタルは必須ですからね」


「そうなんですのね」


 ざわざわ、と賑わう生徒達の話声はつづく。

 この実習場には、黒板もチョークもない。

 後方に案山子カカシのようなモノがあるだけの何もないただっぴろい場所でしかない。

 そこに。

「静かになさい!」


 ドレン先生のしわがれた大声――魔術で拡声された音が響き渡る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る