第10話

 一直線に向かってくるそれに、ロゼは身体を逸らして回避行動をとった。


 まるで矢のような速度で放たれたそれは、やや外れたコントロールでありながら、標的に向かって誘導し、その頭に激突する。


「うが!?」

しかしそれはロゼでは無かった。

ロゼの後ろで居眠りをしていた男子生徒を狙ったものだったのだ。


「――学園に入るのは楽ではなかったでしょうに、それで居眠りをする気がしれませんね」


 そうして、学校に鐘の音が響き渡り。

 術式の授業一時限目の終わりを告げる。



「次の時間は、実習場での実技に入ります。各自、杖などの補助具を忘れないように。――先ほどの男子生徒。もし実習中にも寝ていたら、逆にほめてあげてもよろしいですよ?」  

 

 ドレン先生はそう言って、教室の笑いを誘ってから出て行った。


 魔法学校の授業は全て、座学一時限、実技一時限をセットで行われる。


 

「さて、実習かぁ……」

 ロゼは背伸びをして身体をほぐすと、ローブの内側のポケットから、折り畳み式の結晶杖ロッドを取り出した。

 青い結晶石が備わっていることから、『水』か『れい』の魔術師であることが解る。


「リース様はなにか術式使えるんです?」


「ええ……わたくしが今のところ使える術式は、2つだけですけれど」

 そして、リースリットは手ぶらのまま、実習場に向うのだった。

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