第4話



 そして、先生が――。

 部屋に足を踏み入れる。


「――!! 先生!」 


 思わずリースリットから零れた悲鳴のような歓喜。

 そうして、勝手に飛び出そうとしてしまう脚を。


 ぐっとこらえた。


 リースリットは、今自分が何をしようとしたのかを自覚してしまった。

 そして少し恥ずかしい思いに耐える。


 その間に。

 

 小柄で細身な人物は、リースリットの前に来ていた。


 その人物は、数か月前にリースリットに魔術を教えていた魔術講師――。

 

 名前は、セナ・アダストラという。


 魔術講師というだけあって、服装も真っ黒な魔術服や、ケープ付きの外套を纏い、頭には二股の変わった魔術帽子を付けている。

 そして今日は、実際には長いはずの白金プラチナ色の髪は、結わえられて帽子の中に隠されているらしく、ショートカットのような出で立ちになっていた。


「ごきげんよう、リース様?」


 高めの中性的な美声。

 色白の小顔には微笑がたたえられている。 

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