第3話
けれど、リースリットの靴や手は落ち着きがない。
広大な城のようなクラスリーの屋敷は、正門からリースリットの居る客間まで20分はかかる。
20分という時間は今のリースリットには長すぎる。
「……正門の傍の警備室を改装して頂こうかしら。それとも新しく別館でも……」
そんなリースリットの勝手な呟きを、メイドのアシュリーは聞かなかったことにした。屋敷の正門を警備している衛兵の詰め所が、煌びやかで豪奢な外観と内装に改築されてしまったら、衛兵も落ち着かないだろう。もしくはサボり癖がついてしまうかもしれない。
カチリカチリと、時を刻む時計の針が18週目を終えた時。
部屋のすぐ外に話声がやってくる。
聞き覚えのある声に、がたり、とリースリットは椅子から立ち上がった。
テーブルの傍に立って、出迎える構えだ。
身体の前で重ねた左右の掌は、もじもじと落ち着かないままだけれども。
そうして、「こちらでお嬢様がお待ちです」
メイドの声。
部屋の扉が開く。
リースリットは、自身の加速する早鐘に耐えかねて、両の掌を胸元でぎゅっと握りしめた。
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