第2話

 部屋の扉や、不自然に設置されている大きな鏡を何度も気にするリースリットに、メイドは呆れて。


「――冷めてしまいましたので、お茶を淹れなおしてきますわ」


「よろしく、アシュリー」


 そうしてティーポットを持ったアシュリーと呼ばれたメイドが部屋から出て行こうかという時。

 別のメイドがやってきた。

 そのメイドは言う。


「アダストラ様がお見えになられたようです。今正門に到着されたと」


「ほんとですの!?」


 パッと咲いたような笑顔と共に。

 ぱたぱたと、スカートを抓んで走り出そうとするリースリットを。

 ちょうど扉の所に居たアシュリーが身体を張って通せんぼする。


「いけません、お嬢様。走って出迎えに行くなど言語道断です」


「だって!」


「だって、じゃありません。テーブルに座ってお待ちください」


「うう」


 渋々リースリットは引き下がった。

 アシュリーは、お茶を淹れなおしに行くと言っていたので、すぐにどこかへ行ってしまうだろう、そうしたら部屋から出よう。

 と思うリースリットだったが。


「あなた、悪いけど、お茶を淹れなおしてきてくれるかしら」

 アシュリーは、先生の到着を知らせに来たメイドにその仕事を託した。

 仕方がないので、リースリットはテーブルに座って大人しく待つことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る