【魔法学園★マジックマスター】《Ⅰ》――リースリット編――

日傘差すバイト

講義1 術式と術式図

第1話

 リースリット・マルズ・クラスリーは、そわそわしていた。

 その脚は、広くて豪華な客間の絨毯の上を、往ったり来たりして落ち着かない。


 傍のテーブルには、ケーキや紅茶など、ティータイムの用意が完成されていて準備は万端だ。勿論、当然のようにどの食べ物も飲み物も、嗜好品の全ては最高級の代物だった。

 それだけでなく、部屋を彩る調度品も、花も、あらゆる品がそうだった。


 なぜなら、リースリットはクラスリー家の息女であり、王都グランタリスの王族に類するものだからだ。  


 つややかな長い黒髪ブルネットを揺らし、普段着でありながら、一目で一級品と分かるドレスのロングスカートをあちらこちらにひるがえす、はしたない姿に、傍に侍するメイドは嘆息する。


「お嬢様、落ち着いてください。『いつでも心を落ち着けてどっしり構えておくのだ』と、この前大旦那様に言われていたではありませんか?」


 立ち止まったリースリットは、「だって!」と反論する。


「……今日は週に一度、お屋敷に『先生』が来られる日なんですのよ?」


「お気持ちはわかりますが……」

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