第30話 イケブクロ本営(ゴズテンノウ崩壊)

悪魔(妖鬼オニ)

「どうしたんだ?

 本営の方が騒がしいぞ。

 …まさかウチが負けたなんてことはねえよな?」


 本営前に行ってみると、階段にいた2人のマネカタの姿が無い。

 階段を駆け上がり、門を開けて中に入ると、千晶の姿があった。


千晶

「…久しぶりね。隼人くん。

 決闘裁判に勝った者がいるって聞いて、もしかしたらと思ったの。

 大変だったけど…来てみて良かった。

 ねえ…隼人くん。

 ぜひ、聞いて欲しい事があるんだ。

 わたし…この世界の決まりごとに従う事にしたの。

 知ってるよね?

 世界が何のために今の姿になったのかってこと。

 わたし…『創世』を、やってみようと思うんだ。

 …おかしな事を言ってるって、隼人くんは思うかしら。

 でもわたし、思い出したの。

 世界が変わったとき…『声』を聞いたことを。

 隼人くんだって、生き残ったのなら、聞いたはずだわ。

 …わたし、あれから落ち着いて考えてみたの。

 この世界でどうすればいいかってことばかりじゃなくて…

 どうして世界はこんなになったのか、てこと。

 そうしたら、見えてきたこともあるの。

 もう前の世界は、

 不要な存在を許容することが出来なくなってたんだ…って。

 たくさんの物があって、たくさんの人がいたけど…

 もう、創り出すことはなく、何も無い時間が流れていくだけだった。

 世界が必要としてたものは…あそこには無かったのよ。

 …確かに、わたしは全てを失った。

 それは、悲しい事。

 でも、わたし自身は『受胎』を生き残った。

 きっと、選ばれたのよ。

 …そう信じて、目指そうと思うの。

 わたしの中には、まだ悲しみが残っている…

 けど、それを飲み下しさえすれば、ここでは無限の可能性が手に入るの。

 コトワリによって『創世』する力が…

 『選択せよ』…

 声は、わたしにそう教えたわ。

 もう世界は、不要な存在を求めてないのよ、きっと。

 だから、わたしは創ろうと思うの。

 強い者、優秀な者だけによって築かれた楽園を。

 …『ヨスガ』の世界をね。

 この世界で勝ち残ってきた隼人くんなら…分かるよね?」


隼人

「決められない。」


 今までの戦闘は成り行きに過ぎない。

 だが、金髪の少年から得た力でここまでこれたのも事実。

 …やはり簡単に決められる話ではないだろう。


千晶

「…そう。

 でも、信じてるわ。

 隼人くんなら、いつかきっと私の考えを分かってくれるって。

 これからわたし、創世のためのマガツヒを集めようと思うの。

 あては、まだ無いけど…

 でもヨスガは強者のコトワリ。

 自分の力で、やれる所までやるつもりよ。

 …今日は話せて良かった。

 また会いましょう、隼人くん。

 生き残った者同士、きっとこの先も道はどこかで重なっているわ…」


 千晶は出ていった…


 Sターミナル手前に、片で息をして弱っている妖鬼オニがいる。


悪魔(妖鬼オニ)

「ぐおおおおおおー!

 力が…失われていく…」


 ランダムで出現するオニは元気に攻撃してくるぞ。

 なので、凄いギャップを感じる。

 お前もランダムに歩き回れば元気出るんじゃないか?

 エレベーターの手前にいる妖鬼オニは元気そうだ。


悪魔(妖鬼オニ)

「どうしたんだ!? ナニがあったんだ!?

 …おいおい、牢獄の人間やマネカタどもが逃げちまうぞ!」


 急いでエレベーターでB1Fへ。

 番頭の妖獣ヌエはヤル気ゼロの状態。


悪魔(妖獣ヌエ)

「もうヤってられねえ…冗談じゃねえ…

 みんな勝手にしやがれぇ…」


 右側の牢の扉を開けると、目の前に勇がいた。


「…帰ってきたんだな、隼人…

 先生…連れて帰れなかったか…

 オマエでもダメか…その悪魔の力に結構、期待してたんだけどな…

 マントラは崩壊して、これからはニヒロが力を伸ばして行く一方…

 先生はどこに居るかも分からないまま…

 こんな世界でウロウロと…

 何やってるんだろうな、オレたち…

 …こうなったら、アイツに賭けてみるしかねぇかな。

 噂で聞いたんだ。

 すげえマネカタがいるんだよ。

 そいつは、先の事が何でも分かるヤツで…

 マントラ軍の崩壊も予言してたらしい。

 そいつに聞けば…先生のコトとか、これからのコトとかつかめるかも…

 マントラはそいつを捕まえて捕囚所にブチ込んだって話が最後だから…

 今もそこにいるんだと思う。

 オレ、そいつを探しにカブキチョウへ行くよ。

 どこに居たって危険には違いないんだ…

 オレは可能性のあるほうへ行くぜ。

 じゃあな。」


 勇は去っていった…

 毎度思うが、何で一緒に行くという発想が無いんだ?

 危険とか言ってたけど、その方が安全だろうに。


 女神サラスヴァティがLV35に。

 スキルパワーアップ。

 リカームがサマリカームになった。

 使う機会は少ないと思うが、良い結果ではある。

 あと宝玉輪を貰った。


 左側の牢の扉を開けると、マネカタが牢から出ていた。


マネカタ男(手前)

「ああ…悪魔さん。

 フトミミさんを助けて下さい。

 なんか、ボクたちは自由になれたような気がしますが、

 ボクらのリーダーがまだなんです。

 預言でボクらを導いてくれるフトミミさんが、まだ捕われの身なんです…」


マネカタ男(奥)

「カブキチョウ捕囚所です!

 フトミミさんは、カブキチョウ捕囚所に囚われてるです!」


 開いた牢にあった魔法の箱からは生玉1個入手。


 エレベーターで3Fへ。

 決闘裁判の手前にいた妖鬼オニも弱っている。


悪魔(妖鬼オニ)

「マントラ軍は、もう…終わりだ…」


 途中の戦闘で魔獣イヌガミから声を掛けられ、魔石1個で仲魔になった。

 だが今のところ合体などの予定は無い。


 龍王ミズチLV37に。

 暴れまくりを諦めた。

 スキル変化。

 ブフーラを耐物理に変えた。

 ブフーラのままでよかったんだが仕方ない。

 ミズチの体に異変の兆候が見える…


 開いた牢にあった魔法の箱から力の香を入手。すぐ使う。

 最上階に上がりゴズテンノウの間へ。


ゴズテンノウ

「…戻ってきたか、猛き悪魔よ。

 そなたもしかと見たはず…

 ニヒロの根城が、我が軍勢によって朽ちたるさまを…

 それが…それが、何故…

 見るがいい、我が体を。

 この身に満ちたるマガツヒが、次々と抜け出てゆく…

 しかも、力奪われゆくは我のみにあらず!

 我が軍勢すべてのマガツヒが、いずこかへ抜き取られておる…!」


マネカタ

「おのれ、憎しやニヒロ!

 …いかなるカラクリを使いおったのか!

 たばかられたわ…

 見える…

 マガツヒ集まりゆく中心にニンゲンの巫女が見える…

 されど、今となっては抗う事も叶わじ…

 もはや滅びを待つのみなるか…

 ああ、おいたわしや我らが盟主よ!

 …ゴズテンノウよ!!」


 このマネカタもまた、フトミミと同じく先見ができるようだ。

 他のマネカタはロクな目にあってないが、こいつだけは別格らしい。

 ただ、それもここまでか。


ゴズテンノウ

「…いや!

 我は滅びぬ!

 この体は滅するとも、我が精は死なず!

 いつか、我が力を得るにふさわしき者が現れる。

 その者をして、必ずや復活しようぞ!!

 静寂の世界なぞ、創らせはせぬ!!

 力無き世に、何の価値があろうか!!

 我は忘れぬ!

 身を焦がしたる、この憤怒!

 必ずや…必ずや、力の国を再興せん…!!

 …グ…オォ…」


 ゴズテンノウの体、石像が崩れてゆく。

 支えきれなくなった頭部が外れ落ち、下にいたマネカタを直撃した後、

 隼人の目の前に落ちてきた。

 両目から光が消え失せていく。終わったのだ。


 ゴズテンノウの間から出、帰ろうとすると声を掛けられる。


「やはり、そこにいたのか…」


 鬼神トールがきていた。


トール

「ゴズテンノウは…

 いや…マントラ軍は、ニヒロ機構のナイトメア・システムで、

 …崩壊した。

 …ニヒロ機構には、ただトウキョウの支配を目指す以上の、強い思想があった。

 我々は、暴力で統制を図る、恐怖政治の枠を超えられなかった…

 だから、敗れたのだよ。

 故にゴズテンノウの威光が失われた今、同胞と信じた者たちも、

 呆気なくここを見捨て…出て行った。

 そう…以前捕らえた、キサマの友人がいたな。

 ヤツともども、キサマも好きにするがいい…

 もはや、こんな場所に未練はない。

 牢も、大門も、防衛する意味は無くなったのだから。

 …ではさらばだ。

 『真の強者のみが生きる世界』を求め、私は旅立つ。

 キサマが真の強者であれば、いずれまた会おう…」


 会うのは当分先の話。

 次に向かうはカブキチョウ捕囚所だが、その前に買い物をしてこよう。

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