第6話 シンジュク衛生病院(受胎直後)

 奥にある一つの部屋から通路に出る。

 するとそこに、青白い炎みたいなものが浮いていた。


思念体

「なにジロジロ見てんだよ。

 悪魔のくせに、オレがそんなに珍しいのか?」


 思念体。

 幽霊のような存在に思えた。


 通路を歩くとすぐ、氷川のいた部屋が見えた。

 奥の部屋から物音が聞こえる。

 入ってみると、そこにいたのは氷川ではなく


ヒジリ

「誰だ?

 …おまえ…まさか、公園で会った小僧か?

 その姿はいったい…。」


隼人

「自分でも分からない。」


 まだ戦闘もしていないので「力を得た」とはこたえづらい。


ヒジリ

「…そうか。

 とりあえず、意識は元のままらしいな。

 …

 やれやれ、何がどうなってやがる。

 いきなり目の前が光に包まれて、気が付いた時にゃ、この部屋だ。

 その辺を回った感じじゃ、どこかの病院らしいが…

 おまえがいるって事は、衛生病院か?

 …

 とにかく、だ。

 外の様子を知ろうにも、おちおち歩く事さえできん。

 おまえ…もう出会ったか?」


隼人

「誰のことだ。」


ヒジリ

「人じゃない。

 …「悪魔」とだ。


 俺に起きた事といい、おまえのその姿といい…

 警察やらをアテにしてる場合じゃないらしいな。


 チッ…

 こいつはマジメに可能性を考えるべきかも知れん。

 とても俄かには信じられんが…

 ここが衛生病院だってんなら、あり得ない話じゃない。


 東京受胎…

 本当に、起きたのかも知れん。


 このドラム缶みたいなオブジェには見覚えがある。

 こいつは氷川の秘蔵の品だったはずだ。

 間違いねえ、全てのカギはあの男が握ってる。


 …このまま話しててもラチが明かん。

 おまえ…戦う力があるなら、調べてくれ。

 部屋の外の思念体と話したところで何も分かりゃしねえ。

 世界がどうなっちまったか…

 他に生き残った人間はいないのか…

 とにかく、誰かに出会う事が出来れば何か分かるはずだ。

 …残念だが、俺には悪魔のいる場所を歩き回れる力はない。

 それに、このオブジェについて調べたい事もある。

 アテにしてるぜ…

 よろしく頼む。


 まずは外を目指すんだ。

 頼りにしてるぜ。」

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