第4話 新宿~渋谷エリア(受胎前)

 代々木公園駅の出口から外に出ると、2Dフィールドに切り替わった。

 新宿~渋谷エリアである。

 青い人型のコマが檀隼人。

 緑の人型は街にいるモブ(情報源)たちだ。

 早速、目につくモブたちに話し掛けていく。


若い警察官

「代々木公園は捜査中につき、東西の入り口は立ち入り禁止です。

 事件解決にご協力下さい。」


 と言われるが、警告をスルーして代々木公園に行く事は可能。

 隼人も所詮は野次馬の一人だった。

 中に入れるので入ってみるが、


 誰もいない…


 で終わり、強制的に2Dフィールドに戻される。

 この後で同じ警察官に声を掛けても怒られる事は無い。

 同じ台詞をリピートされるだけだ。

 『なにやってんですか』

 の一言くらいはあるのかと思ったがそれも無い。

 徹底したモブ的存在である。


 2Dフィールド下に移動すると、みすぼらしい男がいる。

 みすぼらしい男…

 まるで古いゲームに登場する、モンスターの不確定名みたいだ。


みすぼらしい男

「…このところ、同じ夢をよく見るんだ。

 世界が丸くなる夢なんだ。

 いや、世界は丸いんだけど、それが丸くなるんだよ!!

 …オレは神のお告げだと思うが、誰も聞いちゃくれねえよ…。」


 地球が丸いという事だろうが、それが更に丸くとはどういう意味か。

 隼人は理解出来ぬまま、一応一つの情報として留めるだけだ。

 (後に起きる受胎の場面で、この事かと理解する。)


 他のモブは、駅員が語っていた事件の話が多い。


 ニュース番組の中継が行われている…


レポーター

「……確かに、暴動を起こした市民団体の行為は行き過ぎです。

 しかし、都民の声を無視し、自社利益のために代々木公園の

 緑を破壊するサイバース社の横暴は許せません!」


 レポーターの熱弁は続いている…

 その近くに若い男がいる。


若い男

「代々木公園の暴動事件?

 ああ…街頭ビジョンのニュースでやってるヤツ?

 何かリアリティー無いよね。

 暴動とか言われても

 『別世界での出来事』って感じで。

 …まあ、俺には関係の無いことだけどさ。」


 駅員と今の若い男が語っていた街頭ビジョンを見つけた。

 街頭ビジョンがニュースを伝えている…


キャスター

「昨日、東京都渋谷区の代々木公園で、

 通信塔の建設を巡り、暴動事件が発生しました。

 この暴動で辺りは一時騒然となり、建設反対派の

 市民グループに多数の死傷者が出た模様です。

 なお、建設責任者である

 サイバース・コミュニケーション社の氷川氏は、

 依然行方不明のままです。

 続いては

 「築地哲太の火事騒音」

 のコーナーです。」


 ニュースは続いている…


 隼人は、ここで初めて氷川の名を聞く。


 残念ながら

 「築地哲太の火事騒音」のコーナーは聞けない。

 “ニュースは続いている”

 ではなく、

 “ニュースはリピートしている”。


※ちなみに、

 「次は、スポーツコーナーです。真ん中さ~ん?」

 というパターンもある。

 何パターンあるのかは不明だ。

 全パターンご存知な方がいたら、教えて頂きたい。


 今度は同級生と思われる女子高生に出会う。


女子高生

「あら、檀くん。

 今日は祐子先生のお見舞いだって言ってたわね。

 先生美人だからって、変なこと期待してないでしょうね?」


 勇が同席している以上、間違っても何もあるまい。

 好奇心全開で変な期待してるのは、むしろ女子高生の方だと思う。


 まだ他にもいた。

 女子高生たちの会話が聞こえる…


派手な女子高生

「……ねえ、氷川って人、ちょーカッコよくない?」


もっと派手な女子高生

「えー?

 でも悪い噂とか多くて、なんか怪しい人だよ?」


派手な女子高生

「その怪しいところがイイんじゃん!」


 まさか“もっと派手”な方が慎重派とは。

 しかし、当時の女子高生ファッションは派手だったのだろうか。


 次に接触したのは、野次馬全開バカップル。

 若いカップルの会話が聞こえる。


「代々木公園すごかったね。

 3人も死んだんでしょう?私こわぁ~い!!」


「ふふ…怖がりだなあ。

 僕らだって毎晩、愛の暴動を起こしてるじゃないか。」


「きゃ~!!

 まあくんエッチだけどステキぃーー!!」


 今時のリア充バカップルでも口にしないような台詞だ…。

 “愛の暴動”という言葉が古き時代を感じさせる気がする。


 その近く、

 代々木公園の東口に、たぶん若くない警察官がいる。

 (さっきは西口だった。)


警察官の男

「まったく、最近の若いのは…。

 暴動事件じゃ死者まで出たのに、お祭り気分の野次馬が絶えんよ。

 さっきもこの先に、ヘンな髪の長いのが入ってったし。」


 西口の若い警察官は、東西の入り口は立ち入り禁止と警告していた。

 入っていったのを知ってて止めなかったのはマズいだろう。

 ヘンなと言うなら、まずは職務質問をしてほしい。


 だが隼人もそのヘンな男に倣い、公園に入ってみる。

 入ってみると、すぐにそのヘンな男に出会った。


「チッ…

 公園をまるごと封鎖とはな。

 現場写真の1枚も撮らせん気か。

 どうかしてるぜ…。」


 男は愚痴りながら振り向き、

 隼人の存在に気付いた。


「…?

 …俺に何か用か?」



 隼人は何があったのか聞く

 この選択は自身も野次馬の一人と認めてしまいそうだ。

 …否定できないが。


「テレビじゃ、こう言ってるなぁ。

 『企業と市民団体の衝突で死者の出る騒動に』

 でも、裏の世界じゃこう言われてるよ。

 『姿を変えた、闇の勢力同士の争い』

 とな。」


 闇の勢力…要は暴力団の事だろうか。

 そう思っていると、隼人の携帯電話が鳴り始めた。


「……ん?

 鳴ってるの、おまえのじゃないか?」


 隼人はすぐ電話に出た。


クラスメイト

「……もしもし、隼人くん?

 わたしよ。

 やっと連絡がついたわ。

 何やってたのよ、もう。」


 姓 橘  名 千晶


千晶

「勇くんならともかく、

 君が遅れるなんて、何かあったの?

 今どこ? 代々木公園?

 あのね、あんまり遅いから勇くんと病院に来ちゃった。

 もう着くとこ。

 悪いけど、直接病院へ来てね。

 あ、場所わかる? 新宿衛生病院。

 新宿駅から東へ歩けば、見えてくると思うから。

 まあ、いいわ。

 わたし、先生と進路について話したいと思ってるし、

 先にやってる。」


 一緒に行くのは勇以外にもいたという事か。

 進路と言ってるあたり、高2か高3かもしれない。


隼人

「急いで行く。」


千晶

「そうね、遅くなるの嫌だし、そうして。

 それじゃ。」


 電話は切れてしまった。


「ちょっと待て。

 おまえ…新宿衛生病院へ行くのか?

 …

 次の行く先も一緒とはねぇ。

 これも何かの縁か。」


 男はそう言うと、バッグから一冊の本を取り出した。

 妖という赤い文字に髑髏の絵。

 ベストセラーには程遠い、マニアックな表紙に思える。


「これをやるよ。

 まだ発売前なんだけどな。

 おまえ、ここであった事を知らないんだろ。

 なら、これから行く病院がどういう場所かって事も知るまい。

 ヒジリ記者の

 「特集・ガイア教とミロク経典」

 …読んでおいて損はないぜ。」


 隼人は月刊アヤカシを手に入れた。


※ちなみにAmazonで電子書籍版が購入可能である。

 気になった方はチェックすべし。


ヒジリ

「オカルトの出る幕じゃないと思うかも知れんが…

 どっこい、あそこはそういう場所なのさ。

 …なんてな。

 この世界じゃガセネタもよくあることだ。

 違ってたら、笑って許せや。

 それじゃあな。

 また会う事があったら、記事の感想でも聞かせてくれや。」


 ヒジリはそう言って別れた。

 次に行く場所も同じ…

 なら、一緒に行動しても良かったのでは?

 そう思いながら2Dフィールドに戻って上に進む。

 すると、またモブが数人見えた。


 同級生と思える男子高校生がいる。


男子高校生

「よお、隼人じゃねえか。

 …そういえばおまえ、

 代々木のウワサ、知ってるか?」


隼人

「いいえ。」


男子高校生

「なんでも、暴動のあった夜、

 代々木公園に悪魔が出たらしいんだ。

 で、悪魔が人を殺したって話なんだよ。

 …まぁ噂だね、単なる。」


 ようやく真女神転生らしいネタを聞く。

 続いては昼間からでも水商売を推奨する女と会う。


外国人の女

「オーゥ……

 ジャパニーズ ハ、ゲンキ ナイネ

 ボードゥォー オッキイテモ、ムカンシンネ。

 トコロデ オニサン、ケイキヨク アソンデカナイ?」


 高校生に声を掛けるのはいかがなものか。

 昔は無関心だったのだろう。

 今ではイイネ欲しさにスマホで撮りまくり。


 その近くには若い男がいる。

 若い…ヒジリよりはという解釈でいいんだろうか?

 ゲスト出演の影を感じる情報が聞ける。


若い男

「さっき、黒服の学生を見たよ。

 これまた黒い猫と連れ立っていた、美少年なんだ。

 あのレトロチックな風情、帽子と羽織ったマント、

 どこかで見たような…?」


※オプションのマニアクス版だと台詞が変化する。

 この情報がライドウ版からダンテ版に変わる。

 今回はダンテのあのスキルにも貫通がつく。

 どちらも同じように楽しめるので、あとは好みの差。


 ようやく病院の近くまで来ると老人がいる。

 朝早くから並んで受付を待つ老人は充分元気だと思う。

 が、この老人は如何に。


老人

「ありゃ?まただ…

 この先の病院、最近ずっと診療しとらんぞ?

 どうなっとんじゃ?」


 隼人は手前の入り口から入ろうと試みた。

 入り口に貼り紙があり、こう書いてある…


「分院入り口は閉鎖しております。

 御用の方は本院へお回りください。」

                院長


 老人は本院にも行った上での台詞だったのだろうか?

 そう思いながら隼人は、新宿衛生病院へと入っていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る