第3話 代々木公園駅(受胎前)

※朝起きて自宅を出て電車に乗り、代々木公園駅に向かうという場面は無い。

 代々木公園駅の改札口を出たところから始まる。

 何の目的でこんなところに来たのかは、すぐに分かる流れ。


駅員

「代々木公園駅~代々木公園駅~

 駆け込み乗車はおやめください。

 ドアァ閉まります。」


 ホームにいる駅員のアナウンスが聞こえる中、隼人は改札口を出た。

 すると、携帯電話がメールを受信する。


メッセージ

『遅いー。遅すぎるぞ檀隼人。

 祐子先生のお見舞いに行くの今日だって忘れてないだろうな?

 早く代々木公園に来い。

 先生に会う時間も減っちゃうだろ。』


 クラスメイトからのメールだ。


 姓 新田  名 勇


 まだメッセージが長々と続く。


メッセージ

『ホントは一緒でなくてもいいんだけど、

 なんか祐子先生、オマエがいると優しいんだよな…

 そうそう、先生に会うんだから

 オマエもめいっぱいオシャレしてくるんだぞ。

 この前買ってたヤツ…、

 たしかオニの絵が入ってた服とかいいんじゃない?

 …でもオマエは単なるムードメーカー。

 ソコんとこは、わきまえて来いよ。』


 …なんか、微妙にめんどくさそうな性格だな。

 鬼の絵が入っている服は、果たしておしゃれなのか。

 (お祭り用か、子供用の服を想像してしまう…)

 隼人と勇のセンスは、どこかズレている気がする。


 隼人は長いメールを読み終えて、辺りを見渡した。

 左側を見ると自販機があることに気付く。

 自販機下に描かれているのは、ジャックフロスト。

 にこやかな笑顔で個人的に好ましいデザインだ。

 買えそうなので、とりあえず買ってみるが、


 出てきた物は、どの見本とも違うようだ。

 隼人は、謎の飲み物を1個手に入れた。


※受胎後、イワクラの水になる。

 忘れずに入手すべし。


 どの見本とも違うとはクレームものだ。

 だが隼人は文句の一つも言わず、今一度調べてみる。


 自販機は売り切れのようだ。


 2台並んでいて、1個買っただけで売り切れとは。

 片方は最初から売り切れだったという事か。

 駅改札口という一等地に置いてあるのに…

 いいのかこれで?とツッコミたくなる。

 補充はまさかの週一か?

 だが無口でクールな隼人は、やはり何も語らない。

 ジャックフロストの絵を横目に、この場を離れるだけであった。


 左側の奥は行き止まりだ。

 (今後出てくる駅も構造は似たり寄ったり。)

 戻って右側の通路に行く。

 すると、改札脇のところに駅員が一人いるのが見えた。

 さっそく話し掛けてみる。


駅員

「お客さんも代々木公園の見物ですか?

 あんな事件があった後だから、

 ヤジウマは増えたけど、利用客はめっきり減っちゃってね…

 いやあ、ヒマですよ。

 …

 あれ?もしかして、あの事件をご存知ない?」


隼人

「はい。」


 はい…。

 クレームものの自販機については一切問わないつもりらしい。


駅員

「…ええと、ですねぇ。

 昨日、駅を出てすぐの代々木公園で、暴動事件があったんです。

 まあ、詳しいことは街頭ビジョンのニュースでも見てもらうとして…。

 とにかく死者が出るほどの大事件で、

 救急車やらパトカーやらのサイレンが一晩中鳴り響いてましたよ。

 …

 いや、失礼しました。

 いくらヒマでも、勤務中の私語はいけませんね。」


 まずはお手本な情報を入手できた。

 そして隼人は、謎の飲み物を手にしたまま、出口から外へと出た。

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