第25話

かつての世界で、戦争が絶える事は無かった。永い間、世界は武力、政略、暗殺に翻弄され、時に国や法人、企業と呼ばれた共同体による度重なる盛衰の中で人々は苦しんでいた。

彼らには安全弁が必要だったが、重圧による破裂から守れるだけの安らぎを与えてくれる者など居なかった…彼らの本質は共喰いだったからだ。与え合う世界という理想郷を目指し、戦争を起こし殺戮が正当化された。それでも彼らは解放されなかった。共喰いには生きた人間が不可欠だった…遙か古代、東方の世界-餌は不可触民と呼ばれていた-死ぬまで消えない烙印だ。

「は!」

一瞬の、途切れた意識の隙間に流入してきた、膨大な思念に深町は息を呑んだ。

SAYURIが囁く。

"思い出した?貴方が覚えていないのは所長の言った事を真に受けず信じようとしなかったから…良いでしょう、実際に見せて差し上げます…人類が歩んだ、真の歴史。災厄天が生まれた悲しい結末を…"

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