40話 初めてのライブ 5

「では、聞いてくれ。『共鳴』」


 これが本当に最後だ。初めてのライブで不安だったけれど全力で楽しめた。

 その締めくくりも全力でいこうじゃないか。我にとっての一番初めのライブはこれが最初で最後なのだからな。


「愛嬌」

「努力」

「情熱」


「「「それらの起こす化学反応をその目で確かめてみないかい」」」


 三人の顔が合わないようなフォーメーション。それがこの歌の構成。ここからの盛り上がりのためには大事なことだ。

 フォーメーションダンスは難しいと言われていたけれど、本当のことだったのだなあ。それでも覚えた自分を褒めてあげよう。

 

 最初は一人一人バラバラだった。


「どうしようもなく焦がれるその心も」

「チリチリと燃えている貴方の心も」

「決して消えはしない自分のものさ」


 けれど——


「ヒソヒソと聞こえる話し声」

「指をさされて笑われているのは僕」

「それすらもスパイスだと思えたら」


「「「きっと 変われる」」」


 三人でスパイシーになったから、人に勇気を与えることができる。

 また顔を合わせて歌う。

 マオ先輩は妖艶な雰囲気でミツ先輩は心からの笑顔で


「「「一人一人の力では成せないこともあっただろう それでも前に進んできたから 出会うことができたものがある」」」


我は暗闇の先に光を見つけた時のような表せない表情。

 我が出会えたものは、先輩たちだ。そう思いながら歌う。もちろん、ファンの皆にも出会えて良かった。


「「「共鳴した力はどこまでいけるだろうか 分からないけど進んでいこう またどこかで何者かになるために」」」


 我らの行先がどんなものになるかは想像がつかない。もっと大きな存在になれるかもしれないし、忘れられていくかもしれない。

 カラーズにいるのは我らだけではないので、いつ誰に目移りされるか分からない。

 まあ、目移りされるとしても我だけだろうけれど。実際、推し変という言葉もあるものだし。

 我はリスナーがいてこそ本領発揮できるからいつまでも見ていてほしい。


 目移りされそうになっても、我の力でこちらに引き戻すまでじゃ!

 同期も、先輩もいることだしの。

 時には力を借りて頑張っていこうではないか。


『共鳴』という曲のタイトルのように、重なり合ってもっと強くなっていく。

 目指したい未来に向かって。何者かになるために。色々な叶えたいもののために。


 最初の一歩というべきこの時間を、我は絶対に忘れることはない。

 この先も自信を持って進んでいこう。

 自分自身の背中も押せるように。

 

 暗かったあの頃の自分に、今は楽しいよって全力で笑って言うためにね。

 


あとがき

次回はやみのチョコ返しをします。

近況ノートにコメントをしていただいたら、それを使いたいと思います。

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