37話 初めてのライブ 2
二曲目は少し悲しい歌。というか心に突き刺さってくるような歌詞。
ライブの二曲目に持ってくるようなものではないと思う。けれど、スパイシーならその暗さだって良さだ。
「それでは聞いてください。新曲『またね』」
この曲のセンターは我だ。少しだけカラーズに入る前の心情に似ている。今は違うのだけれど、あの頃は暗い感情があったものだな。
だからこそ、そんな感情を今抱いている人に寄り添えるように歌おう。最後には背中を押せるような歌詞もあるのだし。
位置につき深呼吸をする。
我は私の想いを乗せるのだ。どれだけ乗せても足りないものを。聞いてくれる皆への感謝も全て乗せる。
「嫌なことがあったらすぐに妄想の世界に浸る。そんな自分が嫌いになりそうだ」
「そういうことを考える自分も嫌でいっそのこと何も考えられなくなればいいのにな」
「ああなんでこの世界はこんなに不平等なんだろう。もしかして僕がそう思っているだけなのかもしれないけどね」
「「「そんなん関係ないんだ。ほんとに嫌だけれどそんな姿見せたくないから最後は笑顔で言うよバイバイ」」」
まだまだ続いていく。
一番で終わらせるわけない。これはフルで伝えるんだ。
フル……そう、我のフルスロットルを!
「世界は苦しいね」
「息しづらいな」
「どこに行けばいいんだろ?」
「小さな光に手を伸ばせば」
「変わるかな」
「変えたいな」
「嫌いを好きに変える魔法」
「あるとは思えない」
「けれど」
「「「そんなん関係ないんだほんとに好きになるためなら嫌な姿だって受け入れていくよ最後は笑顔で——またね」」」
二番を歌ってからのラスト。
ラストに向かうにつれて語りかけるように詩を歌ったそれがこの曲で大事なことだと思ったから。三人で話し合ってそう決めたのだ。
:なんかしんみりする…
:やみちゃんセンターの曲でこれはずるい!
:妄想の世界って、あかちゃんのことも入ってないか?
:まじやん歌詞作った人ありがとう‼︎
:自分を嫌いになりそうになる気持ちわかる…
:そんな時はカラーズのみんなの歌とか聞いてみようぜ!きっと元気になれるからよ!
:好きになるためなら嫌な姿だって受け入れる、か
:深いなぁ……
:笑顔で頑張ろうな!
「皆聞いてくれてありがとう。自分を嫌いになりそうでも、小さな光を追いかけて一緒に進んでいこうぞ」
「やみっちの感情表現素晴らしいね〜私も乗せられちゃったよ!」
「そうだね。やみも小さな光を追いかけてここに来たのかな?」
マオ先輩が聞いてくる。
知っているのに聞いてくるんだよなあ、この人は。
「そうじゃな。我は眩い光を追いかけて今この場所に立っておるぞい」
やみのキャラにはそぐわないかもしれないけれど、ニッコリと笑って答えてみた。
今までの自分も受け入れたから、ここにいる自分のことを好きでいられるってそう思う。あの時、追いかけて良かった。
「そうなんだね!さてと、次は私も気合い出しちゃおっかな〜」
「ああ、ミツよろしく頼むよ」
目配せをして、ミツ先輩がセンターにくるように配置につく。
三曲目が始まるということである。
あとがき
近況ノートに『またね』の歌詞を書いていますので良ければ見てください。
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