36話 初めてのライブ 1
「今宵この館で開かれるパーティー」
「誰もが楽しめる闇の宴」
「寄っていくがいい。開演じゃ」
我ら三人を照らすライト。
画面の向こうにはいつも見てくれているリスナーの人々。見学スペースには同期。沢山の人が見ている。
緊張もしていたが、味方につけてしまえばこちらのものである。
それぞれが言葉を発したあと、音楽が流れ始める。もちろん『今宵、館で』だ。
我も歌に集中するとしよう。
「月の下で出会った我らは♪」
「〜♪君を連れて行こう〜♪」
「我々の館だ」
一曲目が終わり三人でセンターに集まる。
間違えずに披露することができた。まだ始まったばかりだけれど一安心だ。
さて、ここからはMCコーナーというものになる。
「はい、みんな挨拶からしていこっか。じゃあ、まず私から。みんなの元気吸い取って輝くよ!咲羽ミツでっす!」
「今宵も出会えて嬉しく思うぞ。常夜やみじゃ」
「待たせたね、みんな。魔王様こと椎名マオだよ。一曲目どうだったかな?」
三人で自己紹介を済ませ、マオ先輩が感想を聞く。するとものすごい勢いでコメントたちが流れてきた。
ミニライブのようなもので、カラーズが所有するスタジオを借りての小規模。お客さんはきっと家で見ていることだろう。それにもかかわらず、いや、むしろ画面の前で見ているからかもしれない。
リラックスできているからいつものようにコメントを送ってきてくれるのだと思う。
:ライブ開幕!
:ついにきちゃー!
:盛り上げてくぞー!
:ユニット衣装最強すぎんだろ!なんだそのゴシック衣装みたいなの‼︎
:それな!まさか新衣装あると思ってなかったから画面の前で悶えまくっとるわ!
:スパイシーの専用衣装良すぎ!
:こよやか最高だった!生歌うますぎぃ!
:ダンスも上手いしな!魔王様はもちろんのこと、ミッツーもやみちゃんも素晴らしい!
:やみちゃんとか少し前まで踊らなかったと思えないぐらいだぞ!
:俺たちの元気をミッツーが吸って輝くみたいだから今のうちにめっちゃ元気にしとくぜ‼︎
:最後まで応援するからなー!
「おやおや、みんな荒ぶっているねえ」
「私がみんなの元気吸い取ってもずっと元気そうだよ〜あっ、衣装について言ってくれてるね!」
「うむ。我らの衣装が変わっているからな。これは、スパイシーの専用衣装であるぞ」
専用衣装……いい響きである。それも憧れていたものだ。ユニットで活動する時のための衣装。それぞれのユニットの特徴を考えて作ってくださる絵師さんがいる。
蓮華隊の衣装はレミちゃんが張り切って、作ると言っていたけれど。
そして今、我は専用衣装を着ているのだ。
スパイシーの専用衣装はゴシック衣装。
黒が基調になっており、レースは多いが全体的にかっこよさを感じさせるそんな衣装だ。我のスカートは長いが、ミツ先輩のは短く、マオ先輩のはズボンタイプ。そういうところでもそれぞれの特徴が捉えられている。
デザインを見せられた瞬間に気に入った衣装だ。頭の上にちょこんと乗っている帽子もお気に入りだ。
:専用衣装できたんだな!
:これからスパイシーで動く時はその衣装ってことか!
:ゴシック衣装好きなんだよな
:可愛くてかっこいい、まさにスパイシーだ‼︎
:魔王様がズボンタイプなん解釈一致すぎてデザインした人に握手したい
:やみ様が素晴らしすぎてつらい…
:まさかのやみちゃん信者が出てくるだと⁈
:こうしちゃおられん!ミッツーのその膝上のスカート丈最高だけど風邪引くなよー‼︎
:ミッツー推しが何かの使命にかられて出てきた!
「あはは、みんなありがとね〜」
「褒められるのは悪くないねぇ」
「そうじゃな。さて、そろそろ次の曲に移るとするぞい」
「ああ、そうだね。では、聞いてもらおう……我らの歌を」
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