第7話 供給は少しずつがいい

 今日は都内某所に……というか『カラーズ』に来ている。事務所に来るのいつぶりだったっけ?呼ばれたら行くようにしてるのでそこら辺は全く覚えてない。


由夜ゆやさんおはようございます。こちらへどうぞ」

「田中さんおはようございます。よろしくお願いします」


 田中さんの後ろについて移動していく。通話とかで声は聞いていたけど直接会うのは久しぶりなんだよなあ。私、実は外に出ることとかがあまり好きではないのだ。

 配信してる時は家にいるから気にならないんだけど。それにしても、今回はなにを話されるんだろうか。


「さて、早速なのですが由夜さんに見ていただきたいものがあります」

「見てほしいもの……ですか?」


 田中さんがパソコンを開いて見せてきたものはレミちゃんが描いてくれた新衣装を着て動いている私のアバターだ。


「お、おお!できたんですか⁈」

「はい!いつでも使えますよ」

「ありがとうございます」


 実際に瞬きとかしているのを見ると嬉しくて泣きそう。レミちゃんにまたお礼言っておかなきゃだね。こんなにすごい衣装を考えてくれてありがとうって。


「あれ、もしかして打ち合わせもう終わりですか?」

「いえ、実はもう一つありまして……こちらを聴いていただきたいんです」


 そう言って田中さんは一つの曲を流し始めた。ゴシック調というか、ダークな感じというか、なんて表したらいいのか分からないけど私の好きな曲調だ。

 私はクールな曲が結構好きだから。可愛い曲も好きだけど自分で歌いたいなあって思うのはクール系のが多いんだよねえ。


「すごい良い曲ですね!」

「気に入っていただけてよかったです。こちらはスパイシーのデビュー曲となる『今宵、館で』となります」

「で、デビュー曲ですか⁈」


 思わず立ってしまうくらいには衝撃的なことだった。だって、スパイシーのデビュー曲って……

 確かにユニットを組んだからそのうち作ることになるかもしれないと聞かされてはいた。けど、急すぎでは⁈


「はい。デビュー曲です。本当はもう少しあとにしようという話が出ていたのですが、やみさんの人気も上昇してきたので出すなら今だということになりまして。急ですみませんがよろしくお願いします」

「もちろんです!ずっと楽しみにしていたんです。『カラーズ』に入りたいと思ったきっかけがトライアングルのユニット曲を聴いたからなので」

「その言葉が聞けてよかったです。そうだ、由夜さんこのあと時間はありますか?」

「?ありますけど」

「でしたら……」


 そう言って連れてこられた場所にいたのは


「初めまして〜進藤あおいこと東堂美音とうどうみおんです〜お願いします〜」

「初めまして!赤羽シオリこと西城薫さいじょうかおるだ!よろしく頼む!」


 二人の美少女でしたよ!

 あおい先輩はふわふわとした喋りで髪が癖っ毛なのか少し巻いたみたいになっていて服は青いワンピースで可愛いし、シオリ先輩は髪をポニーテールにしていて服がTシャツとショートパンツで動きやすそうでもちろん可愛い。

 リアルで会うのは初めてだけど喋り方とかそのままなので初めてという感じがしない。

 あっ、自己紹介してなかったや。


「初めまして常夜やみこと宮下由夜みやしたゆやです。あおい先輩、シオリ先輩お願いします」

「ああ!事務所から出たら身バレ防止のために本名の方で呼んでくれ!」

「えっ?今からどこに行くんですか?」

「エネルギーチャージ、ですよ〜」


 コラボの打ち合わせのために先輩たちに会うことになったのに⁈

 打ち合わせをせずにいったいどこに向かうのか見当もつかないのだけど私はどうなってしまうのか……

 まあなんとかなるだろうしついていくしかないかなあ。

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