第2話 困惑気味なのですが

 もう理解追いつかない。

 自分で言うのはなんだけどキャラ作ってたのに?厨二病してたよ?それでも先輩達のオーラに埋もれて悔しかったのに。

 

「やみさんならやるとは思っていたのですが、まさかミュートができていないことからとは……さすがです!」

「えっ、やると思われてたんですか⁈」

「はい。むしろ今まで隠せてきたことに驚いています。オーディションの時に0期生を前にしたやみさんは昨日以上でしたから」


 オーディションの内容はほとんど覚えていない。正直0期生がいたのかも、自分が何を言ったのかも覚えていないのだけど田中さんの話を聞く限り私は暴走してしまったのだろう。


「なんでそんなの採用しちゃったんですか?」

「『カラーズ』の採用基準は面白くて芯のある人です。やみさんには面白さはもちろん芯も感じられたので。それに、0期生の三人がいつかコラボしたいと言うものですから」

「そんなことを⁈じゃあ、田中さんはなんで私のマネージャーに?」

「私がこの人を輝かせたいと思ったからです」


 カッコ良すぎるよ私のマネージャー!できる女の匂いがプンプンする!『カラーズ』はマネージャーも属性ないとダメなのか?なら田中さんは間違いなくイケメン女子だよ。


「ということで、責任は私が持ちますのでやみさんはリラックスして配信をしてください。今までのキャラはギャップ萌えを狙っていたんですよね?」

「違いますよ⁈昨日は配信前につい百合漫画を読んだことと、ほどよいを飲んでしまったことによりテンションが上がってしまっただけで!それと蓮華隊の三人が可愛すぎたんです!」


 決してギャップ萌えを狙っていたわけではない。だってキャラを作っていたってのもあくまでも自分の一部だもの。

 ただ萌えの過剰摂取とお酒を飲んで少し酔ってしまって本来の自分が出過ぎてしまっただけ。

 ほどよいってジュースみたいだからついつい飲みすぎちゃうんだよね。でも二十歳以上じゃないと飲んだらダメだからね!私だってさすがに配信中は飲んでないし。


「そうだったんですか……あくまでこれは提案なのですが、次回は謝罪という名目で自分を曝け出す配信をしてみませんか?」

「お酒飲んでも大丈夫ですか?というか見てくれる人いますかね?」

「はい。それは全然かまいませんよ。今後ミュートや配信のきり忘れがないようにしていただければ。今、やみさんは注目を浴びているのでこの波に乗っていきましょう!」

「荒波のような気が……まあ、考えてみます」


 電話はそこできれた。

 お酒飲んでもいいとは嬉しいですなあ。次の配信素面でいける気がしてなかったし。

 でも、どうしようかな。


「荒波でもなんでもビッグウェーブに乗らないわけにはいかないよね……」


 あれ、また着信音がするんだけど誰だろう。


「もしもし」

「やあ、やみ見たよ。おめでとう」

「やみっちもやばいやつの仲間入りだねぇ」


 先輩二人だったか。

 クールであだ名が魔王の椎名しいなマオ先輩に、セクシーお姉さんの咲羽さきばミツ先輩。

 面白がるだろうとは思ったけど想像してた通りだったや。


「おめでたくないんですけど?」

「おや、後悔しているのかい?でも、やみの本性は遅かれ早かれバレるものであっただろうから早いほうが良かったと思うのだよ」

「そうだよね。むしろこの状況を楽しんでいこーよ」


 確かに隠せるとは思っていなかった。

 だけど、『常夜とこよやみ』だって私なんだ。本性がいくつあったっていいじゃないか。

 まあ、百合好きとかほどよいというお酒が好きなこととかは公言していなかったのに今回の件で百合好きの片鱗を覗かせてしまったわけだけど。


「決めました。私、次の配信はっちゃけます!」

「うむ。それでこそスパイシーのメンバーだ」

「なにかあったら頼ってね」

「はい。ありがとうございます」


 マオ先輩とミツ先輩との通話が終わった。

 もしかしたら心配してくれてたのかな。だとしたら分かりづらすぎる。

 笑ってくれたほうがいいって思ってたから嬉しかったけどさ。


 さて、やるって言ったし準備をしよう。

 これは私の、一種の勝負だ!

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