アイドルVTuberなのですが同期とのコラボ配信でただのオタクと化したら何故か有名になりました⁈

ぷりん

第1話 やらかした

「しばしミュートにさせてもらうのである」

「りょーかいだよ!」

「ゆっくりでいいよーん」

「収拾つかないからなるべく早くで……」


 同期でコラボ配信をしていたので許可をとってミュートにする。

 どうしても叫びたいと思ったから。

 だって叫びたくもなるじゃないか。あんなの見せられたら!


「はぁーきぃちゃんとレミちゃんが話してるけど入っていけなくて拗ねてるネムちゃん可愛すぎんだろー!これぞ蓮華隊れんげたいなんよ!尊い!萌え!私はずっと聞いてるだけでいい!空気だと思ってくれー!」


 椅子に座りながら足をバタバタさせても大声を出しても音はのらないから大丈夫だ。

 まあ、そろそろ戻ろうかな。


「って、え⁈」


コメント

:やみちゃんのやらかしキター!

:やみちゃんじゃない説?ないない

:さすが『カラーズ』まだやべえ奴が隠されてたか

:もはややべえのしかいねえだろ

:まだ一ヶ月しか経ってないの草


「あの、やみちゃんミュートになってない、よ……」


 若干引いたような感じで伝えてくれたネムちゃんの声。

 コメントを読んでもしかしてって思ったがそれで確定してしまった。


「——おつかれさまでした」


 やらかした。ほんっとうにやらかした!

 というか動転しすぎだろ落ち着け私。

 あっ、配信きってくれたみたいだしとりあえず安心?そんなわけないよね!分かってるさ。


 あーまず申し訳ない。せっかくの同期配信だったというのに……蓮華隊後輩組に混ぜてもらっただけでなくやらかしを起こすだなんて……

 そんなことを考えてたらグループで着信きちゃったよ。


「もしも……」

「やみちゃんって面白い子だったんだねー!最初からそんなオーラ感じてたんだけどさ!」


 最後まで言わせてくれず、えへへっと笑うきいちゃん。オーラってなんなのか分からないけど褒めてくれてるのかな?


「やみちゃんにあんな一面があったとはね〜新しいアバターつくっちゃおっかな〜」


 レミちゃんは私や同期のアバターをつくってくれたから、私の失態を面白がって新しいことがしたいみたいだ。


「ツッコミ枠が減っちゃったから私の胃が心配……」


 ネムちゃんはいつも癒してくれてその声が私の安眠剤だけど今は罪悪感しか生まれない。

 私のせいでネムちゃんの負担が増えるようなことはしない!


「先程は本当にすみませんでした!今後はないようにしますのでどうかこれからも仲良くしてください‼︎」


 見えなくなるので土下座はしてないがしそうな勢いで謝った。謝罪の気持ちは精一杯込めた。


「もっちろんだよ!」

「暴走しないでくれたらなんでもいいんで」

「あかちゃんともっと話したいな〜」

「あ、あかちゃんってなんですか⁈」


 レミちゃんが言ったことがひっかかったので思わず大声が出ちゃった。


「やみちゃんが明るいからあかちゃんだよ〜」

「え、えぇー」


 あかちゃんってなんか別の今に聞こえてしまう。でも、姿描いてくれたからママはママなんだよなあ。


「いやだった?」

「いやじゃないです!」


 可愛い声で聞かれて断れるわけないじゃないか。ただでさえ可愛いというのに。

 そうでなくとも迷惑をかけたのだからダメとは言わない。


「お二人も呼びたかったら呼んでください」

「きぃは今までと一緒でいいかな!」

「私も変える気はないよ……あと、眠くなってきたんだけど……」


 ネムちゃんが小さな声であくびをした。

 配信終わったらすぐに寝るような子だから仕方ない。


「じゃあそろそろきるね〜またコラボしよ〜」

「はい。本当にすみませんでした!それとありがとうございます‼︎」


 そうして通話はきられた。

 みんなには怒られなかったし面白がられたからほっとした。

 蓮華隊の先輩に怒られそうで怖いんだけどなあ。


 蓮華隊は『カラーズ』内の先輩後輩でつくられたユニット。ヒーローがモチーフで沢山の人を笑顔にすることが目標。口上も考えられていて聞くとテンションが上がるんだよね。そして先輩が後輩を溺愛しているので私が後輩に迷惑をかけたとなれば圧をかけて怒られそうで気が気じゃない。

 いつもなら溺愛しているところを見て萌えられるのに!


 ちなみに『カラーズ』は多くのVTuberが所属する事務所。名前の由来は個性ある人が混ざって一つの色に。採用基準は面白く芯のある人。また、アイドルユニットを組むのだが決めるのは本人たち。


 ビビッとくる人が入るまで組まないという人がいる中で私は0期生のマオ先輩と一期生のミツ先輩の三人で『スパイシー』を組んでいる。あの時は憧れだった二人に誘われてとても興奮したっけ。アイドルユニットで一応オリジナル曲もあるユニットもいるのだ!

 いつか私も披露したいな〜


 って、そんなこと考えてる暇ないんだった!いや今のところ事務所から連絡ないし寝ちゃってもいいかな……

 おやすみなさーい。



「やみさんおめでとうございます!」


私がやらかした次の日の朝、電話をとると聞こえてきたのはその言葉。


「かける言葉合ってます?」

「もしかしてやみさんトレンド見ていませんか?一位になってますよ!」

「田中さん、今日はエイプリルフールじゃないですよ?」

「嘘ではないですからね」

「なんでそうなったの⁈」


 田中さんにそう言われたら信じるしかない。それにもう自分で確かめてしまった。

 もう一度言おう。


「なんで⁈」

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