二丁目スナックさいかわ さいかわママ編2
……( ´Д`)=3 フゥ お酒が入って少しエンジンがかかってきたかしらね。で、なんだっけ? ああ、まだ何の話もしてなかったわね(笑) ごめんごめん。暑いともうなーんにもやる気が起きなくて。エアコンガンガン効いた中でしか原稿書けないのよ。あと頼まれた人の原稿チェックとかもね。
あ、はいはい。アレでしょ? 葉月賞の感想みたいな? ね、そうだと思ったわよ。ごめんなさいね。引っ張りたい気持ちなんてまるでないのよ。夏が悪いだけ。テーマは「夏」なんだけどね。
あーじゃあ、そろそろ始めますか。まず全体的にテーマ「夏」はちゃんと踏まえて書けているんじゃないかしら。大体の作品が自分の「夏」にまで持っていけているわね。すごいじゃないの。しかも初回参加組の出来の良さは目を見張るものがあるわね。
ある人が「さいかわ賞っておっかなそうで(参加できずに)見ているだけです」って言ってたんだけど、そんな厳しいことはないわよねぇ? ただ普通の事を言っているだけだわよ。チャーハン食べたいってオーダーしているだけで。さすがに前回クドクド言ったせいか、焼きそばを出してきたヤツはいなかったわね(笑) いいのよ。焼きそばでもアタシがチャーハンを捨てて飛びつくくらいに至高だか究極だかの焼きそばであれば。でもそれはまぁ無理でしょうから、まずはチャーハンを書いてねってことで。今回は全員最低でも「米を焼い」てはいるじゃない。感心したわ。
夏の捉え方も人それぞれでいいんじゃないのかしら。あと心配している書き込みが見られたので言っておくけど、アタシはネタ被ってもまったく気にしないクチだからそこで減点なんてしないわよ。ベタな花火大会だろうが夏祭りだろうがその作家さん独自のそれらがあるわけで。アンタの夏だって定番のひとつやふたつは出てるしょう? むしろ当たり前のことをどれだけ個性を持って書くかってのも小説には大事だから、そのあたりを見るには歓迎ですらあるわね。
え? 前回に比べて感想がマイルド? 別に人に文句を言うのが仕事じゃないわよぉ。アタシだって褒めたくて仕方ないのよ。え? なんだか、らしくない? そんなことはないわよ。チャーハンって言ってちゃんとチャーハン出てきてるんだから、「違う!」とか叫んだらただのクレーマーじゃないの笑。そんなんじゃ誰も参加しなくなるわよ。
なにかもっとアドバイスが欲しい? うーん別にいいけど、暑いからそんなに熱血モードにならないわよ? じゃあ、アンタの原稿見せてごらんなさいな。あ、その間に一服させてね。
……( ´ー`)y--フゥー......
なるほどね。アンタ、今回で参加三回目だっけ? うんうん。よくここまで書けるようになったわねえ。
正直アンタの頑張りはわかるわ。だけど何かしらねえ、作品がどんどん「内側」に入ってはいないかしらねえ……。上手に書かなければいけないと思っているのか、あるいは自分が上手だと思って書いているフシがあるわね。外に向いていないのよ。コレ。
たしかに「良いチャーハン」を作ろうって気持ちは大事だし、それを目指して作っているんだろうけど、真剣に書けば書くほど、「客を喜ばすためのチャーハン」という根本的な需要から離れていってないかしら? 素材のカットの腕や鍋振りの技術に注意を払っても、最終的に食べるアタシあるいは読者に向かって作っていないような気がするわね。 え? どういうことかって?
そうねえ。「上手に書くこと」と「読者の心を動かすこと」とどちらに重きを置いているのかしらね? ということかしら。確かにアンタみたいなアマチュアは自分が書きたいことに精いっぱいになってしまうのはわかるんだけど、もっと広く周りを見てはどうかしら? 麻雀やポーカーなんてやらないだろうけど、まだ自分の手元だけで考えていて、相手や捨て牌やカードに目が行く余裕がないのよね。まあアンタみたいなド素人がそうなるのは仕方ないけど、今回は上手な人も技術に走っている感じがするのがあるわね。プレッシャーを感じてやる気が空回りしているというものあるのかもしれないけれど。
アンタって、趣味で書いているんだっけ? え? できればプロの小説家になりたい。んーなら今のうちに言っておくけど、はっきり言って読者が心の動かない小説なんて売れないわよ。工業的に作られたチャーハンには需要やそれなりの味はあっても、人の温もりは籠められないように、小説も技術で人の魂は震わせることはできないわよ? あくまでも技術なんてものは補助器具よ。ぶっちゃけアンタみたいなセンスのない人間がマシに見えるようにする化粧みたいなもので、小説の下地は心意気なんだから。
「上手に書こう」とか「人にすごいと言われたい」という邪念があると、読者にすぐ見抜かれるわよ。しかも小説書いてお金を取りたいのであれば、そんなものを一切見せない「面白い」だけしか映らないものを書かないと売れないわよ。賞レースに出す小説でもそう。頭使って突き詰めて考えるのはプロットや設計だけ。書くときはひたすら読者を楽しませるために書く。アタシがチャーハンってしつこく要求しているのは、ここまでがちゃんとできている作品を読みたいからよ。
え? やっぱり辛口? いやねぇ、アンタが振ってきたからじゃない。「全体的に良い出来ね!」で終われば良かったのよお。ま、言っちゃったんだから仕方ないわね。え? やっぱり褒めてくれない? それはそうでしょうよ笑。もしアタシがアンタを褒めたら、もっと調子にのって「自分が上手い」なんて思って、鼻持ちならない小説を書くようになるわよ? アンタみたいなセンスのない子は愚鈍に一歩一歩やっていけばいいのよ。自分が出来る人間なんて思っているから壁にぶち当たったときにすぐダメになるのよ。0に戻れないから。自分は馬鹿で下手だと理解して書いていれば、いつでも0に帰れるからやり直せるのよ。そのあたりの酸いも甘いもすべて経験してから生意気言いなさいな。
ああ! ワイン、スミヲちゃんに出す分も飲んじゃったじゃないの。しかたないわね赤でも開けましょうかね。え、なに狐ちゃんのその顔? いやねえ。アタシだって語りたいときは語ることはあるわよ。――こういうまっすぐな子が来た時には、ね。
つづく
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