15話 ぽえなビーム(効果:石化)


「お昼だし、お茶は新しく沸かすから少し待ってて」


「シュレッケ、私も手伝おう」


「ならキャラさん、お願いします。俺、薪取ってきますので水汲んでてください」


「ああ」

そう言うとシュレッケは外に出て行き、キャラは席を立つとかめから鍋やヤカンに水を汲み始めた。

私も手伝いたいけど、正直料理の心得なんてないので邪魔にしかならない。大人しく座っている事にする。

そうすると、自然、テーブルを挟んで彼女と正対する事になる。

今思い返すと、私はなんて恥ずかしい振る舞いをしていたんだろう。忘れていた羞恥心が今頃やってきた。恥ずかしくて顔を上げられない。

ただひたすら膝の上の自分の手の甲を眺める時間が過ぎていく。

彼女も一向に喋らない。気まずい時間が過ぎていく。

……いや。このままじゃきっといけない。何か、何か話しかけないと。

そう思っていたら、シュレッケが薪を抱えて戻ってきた。


「そういえばサナ。約束の卵なんだけど、3個ぐらい貰ってもいいかな?」


「え?」


「彼女たちも食べてみたいんだって」


そう言ってシュレッケは、塞がっていた両手の代わりに顎で私たちを指す。

それに促されて彼女は私をようやく見た。目が合った。


「ヒッ!?」


「……」


目が合っただけで悲鳴を上げられた。


「べ、別にいいよ?それで彼女たちは、何なの?」


「観光客だよ」


「カ、カンコウキャク?こんな所に?」


「そうなんだよなぁ、不思議な事に。ポエナ、良かったな。食べていいって」


後半は私に向けての言葉だった。そっか、卵の先約って彼女だったんだ。私は彼女に礼を言う。


「ありがとね。食べてみたかったんだ」


「ヒゥ!?」


悲鳴が返ってきた。

その様子を観てシュレッケは軽くため息を吐くと台所に向かってお昼ご飯の準備を始めた。


「シュレッケ、火打石はどこだ?」


「いい。俺がやる」


……。なんだかちょっと楽しくなってきた。

そのままジーーーーッと見つめ続けてみる。


彼女は視線も外すこともできないまま固まって、徐々に不健康そうな汗をかき始めた。

体を強張らせたまま、徐々に目の端に涙が溜まっていく。


……このまま見続けたら石になっちゃいそうだな。と、そんな馬鹿な事を考えていた時だ。


「はぁッ!?お前今何をした!?」


「「ヒィヤッ!?」」


突然のキャラの大声に、私と彼女は同時に悲鳴をあげた。

二人して台所の方を見る。


「それも含めて後で説明するから。まずはご飯だ。二人が待ってるだろ?」


そう言って、シュレッケがコチラを見る。キャラはまだ言い足りなさそうだったが、それでもコチラをチラリと見ると言葉を飲み込んだ。


「後できっちり説明して貰うからな?」


「ああ。サナ。お昼にコカトリスの卵使うけど、サナはどうする?」


「あ、じゃあ私の分もお願い。一緒に食べてくよ」


「わかった」


かまどからはパチパチと薪の爆ぜる音、燃える匂いがし始めて、煙は煙突の入り口から空へと逃げていく。

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