09話 拠点確保


「お嬢様。私はそれなりじゃなくて結構腕が立つのです。ですからこんなの要りません。森に還してきてください」


自己紹介が済んだ後、キャラが張り合ってきた。めんどくせー。


「そうは言うけど、女の従者がナイフ一本でどうするのさ?それに、案内は結局いるだろ?」


そうシュレッケに反論されて、顔をぷくーッとした。なにそれ可愛い、今度私も使おう。ま、それはさておき。


「いい、キャラ?アレは謙遜よ。もちろん、あなたの腕は信じてる。じゃなきゃ二人で旅なんて行かないよ。でも彼が一緒の方が楽が出来るでしょ?」


私の言葉に彼女は感激で目をキラキラさせる。そしてコホンと一回咳をする。


「まあ、確かにそうですね。実際馬と荷物を預けたかったですし。分かりました、お嬢様」


「……話はまとまりましたか?我々のキャンプはこちらです」

様子を見守っていたリーダーは確認を取ると、率先して歩き出した。私もキャラもシュレッケも、その後ろを追う。




森の中をしばらく道に沿って歩く。すると、いくつかの分岐を経て大きく立派な門が姿を現した。

鬱蒼とした木々の合間から突然現れた大きな門というのも、なかなかに壮観だった。


「すごい!大きい!カッコいい!これ、何に使うの?」

私の問いかけにリーダーが答える。

「我々も生活があるのでね、大型な野獣が迷い込んでキャンプを荒らすと困るんですよ」

そう言われて、よく門を観察する。さすがに王都の城門よりは質素だが(アチラはそもそも石だし)、丸太で出来たその門は厚みがあって上の方は尖っていた。

ちょっとやそっとじゃビクともしそうにない。

「おーい、戻った!!開けてくれ!!」

リーダーはそう、門の中に呼び掛けた。すると、門の横の小さな扉がカタンと開く。


「大将、いつも通りこちらから出入りしてください」


「客人だ。馬がいるんだよ。開けてくれねーと入れないんだよ」

そう言われて、扉を開けた男は私たちに視線を向けた。すると目を大きく見開いた。

「驚いた、若い女の子が二人!?一体どんな事情ですか!!」

「観光だそうだ。いいから開けろ」

そのリーダーの言葉に増々驚きながらも扉の中に引っ込んだ。声だけが聞こえてくる。

「こんな場所に観光とか、マジですか!!」

リーダーが苦笑いを浮かべる。

「本気らしい。案外、そういうのも悪くないかもしれんな」

そうリーダーが言うと、さっきの男の笑い声がした。ガコン、と何かがハマる重い音がした。

「確かに。それもイイかもですね、大将?」

「冗談じゃない!!見世物の真似事なんてできるかよ!!」

……おお、ビックリした。急に横のシュレッケが大きな声出すんだもん。

リーダーがなだめるように言う。

「冗談だ」

「笑えませんよ」

ゴゴゴゴと、門の軋む音がしてやがて動き出した。やがて馬が通れるぐらいの隙間が開いた。

今度は門の隙間から先ほどの男が姿を現す。

「余裕がないな、少年。そんなんじゃモテないぜ?」

「別に、モテたいだなんて思ってない」

「硬派だねぇ、少年」

そう軽口を叩いて、男は改めてこちらを見る。

「おおう、二人ともすげー別嬪さんじゃないか!ようこそおいで下さいました。殺風景なトコロですが、どうかご寛ぎ下さい」

そう、畏まって口上を述べる。

「おい、手を出そうとか思うなよ?」

リーダーが注意する。それに男は苦笑いで答える。

「そんなまさか恐れ多い。でも……面白くなってきたな。姫さん、妬いちゃうかもな?」

と、シュレッケをチラリと見てニタリと笑った。


……姫さん?

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