08話 ガイド確保
「無職でこんな場所まで観光とか……あんた達、裕福で暢気なんだな」
私の話を聞いていた目の前の男の子は、厳しい目つきで私を見るとそう零した。
「おい、シュレッケ」
その言葉を聞いた、リーダーらしき男性が彼を諫める。
「……すみません、失言でした。それが出来る余裕ある立場なんですよね。なら、俺が言えたことじゃない」
そう言って目の前の少年はキャラの方を見る。
まあ、先ほどの様子を見てたら彼女が従者だと誰だって思うだろう。
彼女を姉だと言い張るには使命感に駆られ過ぎてるもんなぁ。私も彼女を名前で呼んでたし。
でもたぶん彼女が私を「姫様」と呼んだのは距離があったから聞こえてなかったのかな。
それはちょっと朗報。
「失礼しました、お嬢さん。ご協力ありがとうございます、もう大丈夫です」
そうリーダーの人が礼を言う。キャラの方も話が終わったらしく、こちらに駆けよってきた。
「お嬢様、何か失礼な事をされませんでしたか?」
「ないわよ。キャラもお疲れ様」
キャラから話を聞いていた男性とリーダーと男の子は三人で話していたが、やがてこちらを向いた。
「はい、供述に齟齬はありませんでした」
「疑われてたの?」
「すいません。たまに密猟者が来るのですよ。違うとは思いましたが念のため」
「ま、そういうお仕事ならしょうがないっか。じゃあ、もう行っていい?」
私は森の奥を指差す。それに男性は慌てる。
「え。森の中に入られるのですか?何のために?」
「何って。観光するため」
「……失礼、この森の事をどの程度ご存知でしょうか?」
「珍しい動植物が集められてるって。さすがに何も観ないで帰る気はないわよ?ココに来るまで何日も掛けてるんだから。立ち入り禁止って訳でもないんでしょ?」
リーダーの男性は頭を抱える。
「いや、間違っていませんし、確かに禁止もされてはいないのですが……その、危険な生き物も多いんですよ」
「大丈夫よ。キャラはそれなりに腕が立つし、遠くから何種類か観たら帰るから。あ!どの辺に何がいるかだけ教えて貰ってもいい?」
男性は、更に頭を抱える。そして溜息をつくと男の子を声を読んだ。
「おい、シュレッケ!」
「なんです?」
「お前、お二方に付いて差し上げろ」
「は!?なんで俺が!!」
男の子は露骨にイヤそうな態度をとる。
「そういうが、彼女たちには案内がいる。それに、勝手に森を動き回られた方がお前も面倒だろう?」
そう言われて納得する部分もあったらしくしばらく葛藤していたものの、短くため息ついてコチラに身体を向ける。
「支度がある。一度、俺たちのキャンプに寄っていくからな。そこに馬は置いていけ」
「わかった。私、ポエナ。名前、聞いてもイイ?」
「シュレッケだ」
「呼び捨てでイイから、呼び捨てでもイイ?同い年ぐらいだよね?」
すると少し驚いたみたいだったけど、先ほどより幾分表情が柔らかくなる。
「ああ。正直助かる。正直敬語苦手なんだ」
「うん、私も。それじゃ短い間だけどよろしくね」
「ああ」
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