06話 これからが森


王都を旅立って早4日目。


「これ、かな?」


「そうではありませんか?位置的にも合ってます」


私たちは森の入り口に立っていた。


そう、入り口である。

ここに至るまでの道のりで木はたくさん生えていた。林を抜けきてたし、森も通ってきた。

でもここは違う。なんというか、異質だった。


森の境目を越えると、ハッキリと植生からして違っていた。

鬱蒼としており、地面は落ち葉で覆われて土が見えなくて。辛うじて道の続きだけ落ち葉が払われていて、それと分かった。

何となく、森の中に入るのが躊躇われた。怖いとか、そんなんじゃないんだけど。ないんだけど。

んー……寒い日に、「さあ、これから熱い湯に足を入れるぞ」ぐらいには気合が必要だった。

まあ、ここまで来て素通りなんて選択肢はないのだけど。


「ねえ、キャラ。先に行って貰っていい?」

「いいですけど。どうされましたか?少し緊張なさってますか?」

私が上目遣いでお願いすると、キャラはあっさりと了承してくれた。ただし私が躊躇してる理由は分かっていないみたいだった。

横で草を食んでいる馬の様子も伺ったけど、暢気なものだった。私だけ?気にし過ぎ?

「んー。気にしないで。そういう気分なの」

「そうですか。じゃあ、失礼して」

そう告げると、特に身構えることなく馬を引っ張ってスタスタと歩いていき、呆気なく森の境界を超えた。

んー気にし過ぎだったかな。キャラも平気だったし私も馬を連れて後に続いた。


ピリッ


「キャっ!?」

「姫様?どうしました?」

森の境界を通り過ぎた瞬間、突然の刺激に身体を強張らせる。

大して痛かった訳じゃないけど、とにかく驚いた。

周囲を見渡してみたけど、原因らしいものは見当たらない。……今のは一体なんだったのだろう?

私は首を横に振った。


「何でもないわ。それより、お待ちかねのミナモア大森林よ!いったい、どんな珍しい生き物がいるのかしら?」


さあ、観光の時間よっ!!

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