04話 森にも城にもない開放感


「ヒャッホーイ!」


「姫様、お待ちを!!」


「アハハハ、キャラ、遅い遅ーい!置いてくよー♪」


「勘弁してくださいよー!?こっちは荷物全部持ってるんですよ?何も持たずに一人で行かれてどうする気ですか」


「もー、仕方ないわね」


私は手綱を引くと、キャラの馬の横につけて併走した。


「ご機嫌ですね、姫様」

「当たり前よ。こんなに気持ちよく馬を走らせたの、初めて」

私は走る馬の鬣を撫でた。汗ばんでしっとりしており、そしてとても体温が高かった。風を気持ちよさそうに受けている。

私も風が気持ちいい。

はためく髪をかき上げると、目を細めながら前方に広がる草原を一望する。


「お尻、大丈夫ですか?」

「平気よ。ねえ、もっと飛ばさない?」

「ダメですよ。馬の事も考えてくださいよ。この先も長いのですからペースを保たないと」

「あ。そっか」

私はもう一度、今度はお疲れさまと言う気持ちを込めて首を撫でた。

「あなたもお疲れ様。あとでリンゴあげるね」

私がそう声を掛けると短くいなないた。

「それにしても、ウチにこんな場所があったのね」

前方は短い草ばかりで未だに遮るものがない。

馬の動きを妨げないように、首だけ傾けて背後を見ると最後に寄った村が随分遠くに見えた。

草だけがなびいている草原を私とキャラの馬だけが駆けていく。これが気持ちよくない筈がないじゃない。

「でも、これだけ土地を遊ばせてるの勿体ないんじゃない?開墾しようってならなかったの?」

「えーと、ですね。単純に隙間なんですよ、ココ。もっと先に大きな川があって肥沃な土地があるんで、敢えてココを耕そうってならないんです」

「そっかー。まあ、いっか。私はここ走るの気持ちいいしー」


「それより姫様。道でこっちでいいんですか?」

「大丈夫よ。授業で見た地図だと、森の方角こっちだったもの」

「……少し地図確認したいので休憩挟んでいいですか?」


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