第143話 トンネル攻防戦
臨時待機所で待機任務について2日目。
リードとベルに警戒監視をしてもらっているけど、今の所異常の報告はない。
今待機についているのは私達の班とアルテミスさんの班だ。
なのでタカたちはオフなんだけど……
「どうだ!俺の方がそっくりだろ!?」
「んだと!どう見たってオレのがそっくりじゃん!」
二人は雪の降りしきる中、外で雪像を作って遊んでいる。
雪像というより、雪だるまだね。
で、それは誰の雪像なのかなー?
「あ、ディーナ姉、どうだ。俺ディーナ姉の雪像作ったぞ!」
「オレはシャルル姉だ! あっちにはアフラさんの像だぞ!」
「あ、ありがとう…ね。」
「う、うん、じょ、上手、なのかな?」
あのね、それはどう見てもホントに雪だるま……
と
《マスター!出た!》
「ベル!情報を!」
《トンネルから15キロ程、数は30体だよ、全部あの人型、メナスだよ!》
「了解!01出ます!」
「よし、行くか。ウリエル。」
「ああ。無線機、チャンネルオープンにしとけよ。」
私達はそのまま、シャルルに乗って出撃した。
あのトンネルまではすぐだ。
ひとまず大体の方角はわかったので、メナスを視認することが先だ。
「居た!ID!」
「おや、今度は徒歩での行軍か。」
「んでもよ、今までとは違うな、完全武装してやがるな。」
「というかだな、あの真ん中あたりのメナス、人型でもちょっと変な姿だな。」
「いずれにしても、ですね。」
「ああ、行くか。」
メナスの行軍の前に降り立つ。
と、メナス達は歩みを止め、全個体がこちらを見る。
そんな中、隊列の真ん中に居た一際大きな個体がこちらに歩み出た。
見るからに強そうな個体、それに、この群れを率いる将のような感じだ。
「オマエラが、先遣隊を破壊した者タチか。」
「ほほう、お前達も言葉がわかるのか。」
「端的にツゲル。ジャマをするな。」
「あの、邪魔って何の?」
「オマエラがどうなろうと知った事デハナイ。我々は我々を守る為、あのアナに居るエイリアンを排除する。」
やっぱり、居住空間、というか、ノアの船に用があるみたいだ。
でも、今はあそこには誰も居ない。
アルテミスさんでさえ本体はもう消滅しているんだ。
「エイリアン、だと?」
「オマエラはアレの仲間だな。ここで消す。」
そう言うと、その個体は襲い掛かってきた。
咄嗟に私とシャルルが前にでてそれを阻止する。
2、3度剣を交えた所で、相手は一度引いて構えなおす。
思っていた程強力な攻撃ではないように思う。
と、さらに5体程が加わって攻撃を仕掛けてくる。
何となく、だけど。
このメナス達って、やっぱりキューキさん達みたいに「何かの為」にこういう行動をしているような気がする。
でも、だ。
それはキューキさん達とは違う、自分達以外は全く眼中にない、言ってみれば他を排除殲滅する事が目的みたいな感じだ。
そんな事を思いながらも、相互に攻撃の手は止めない。
ちょっと、思う所があって私とシャルルは剣は持ちつつも無手で攻撃を出す。
相手の攻撃を捌きつつ、懐へと入ると腰を入れた渾身の一撃を叩きこむ。
5体のメナスは、その場に崩れ落ちた。
「何というコトだ。オマエラはやはり!」
「あー、ちょっと待て。お前達に一つ聞きたい。」
「……ナニを、だ?」
「お前たちの言うエイリアンとは、星々を渡って殺戮を繰り返す存在の事なのか?」
「そうだ。我々と長きにワタリ戦争を続けている敵の事だ。」
「という事は、お前達はこの星の者ではない、という事だな。」
「我々はオヨソ300年前にこの星をミツケテここで過ごしている。先住の生命体にも機械の軍隊にも知られないよう、ヒソカに。」
「な、なんだと!?」
「ちょ、ちょっと待て!機械の軍隊だと!?」
「キカイの軍隊は我々を敵とみなした。襲ってきたのでハカイし残骸は我々の進化に組み込んだ。」
「「「「 な!! 」」」」
つまりは……
え?メナスは元々この世界じゃなく、ジーマの世界に居たって事?
それに、一つかなり聞き捨てならない事を言ったよね?
「お前達は……ジーマの世界の……」
「マジかよ……」
「ていうか、進化に組み込んだってどういう事なの?」
「それってまさか!?」
なんとなくだけど。
全ての謎のピースが埋まったような気がした。
つまりモンスターの不自然な進化、その原因にメナスが関与しているっていう事、だよね?
「イズレにしても我々はこの先にある敵、そしてその拠点をハカイする。」
「ちょっと待て、理解できるかどうかはわからんが、この先にあるのはその存在のモノとは違うぞ?」
「カンケイない。疑いが有ればそれを排除する。ただソレだけの事。」
「いやいや、排除されても困るんだ。というか、お前達がその考えを捨てない、というのであれば、だ。」
「こっちは全力でお前らを排除するぜ?結果お前らが滅んでもそりゃ自業自得って事になるぞ。」
「我々が滅ぶ?在り得ない。我々は滅ぶ事はない。体が消えても存在は消えない。」
「それなら、お前らはこの星の住人にとって害を及ぼす敵、って事で良いのか?」
「オマエラの存在などどうでもいい。オマエラの存在は我々には関係ない事。勝手にするがいい。障害になるなら消すだけだ。」
だめだ。
メナスは自分達以外の生命など石ころの様にしか思っていない感じだ。
会話を続けて、どこまでこの世界、この星の人々の事を理解できるのかが皆目見当もつかない。
話の内容からすれば、やはりノアの民と同じようにあの大悪魔から逃れてきた、というのは解った。
けど……
「なるほどな。解った。では、お前は私達の敵と認識した。ここで排除しよう。私達はこの星の生命を守る必要があるからだ。それで良いな。」
「……」
しばし何かを考えていた様子のメナスは、踵を返し残りの個体全部とともに一目散に逃げて行った。
あの個体、恐らくはかなりの上位の個体みたいだった。
この死んだと思われる5体の個体も、それに近いレベルの個体なんだろうな。
逃げて行ったけど、今は追う事はしない。
「ちょっと、な。」
「ああ、これはもしかするとかなり大事の様な気がする。」
「ひとまずよ、情報だけでも抜いとくか。」
「そうだな。」
ルナ様とウリエル様は、5体から記憶、つまり情報を吸い上げた。
かなりの情報が得られたみたいだけど、二人の表情は困惑と悔しさに似た感じを纏っている。
「ルナ様、結局メナスって……」
「ああ、ジーマへと降り立った異星人、だな。」
「あの星の統合で、そのままこの世界に居座ったんだろうよ。」
「なんというか、メナスとは解り合えないような気がしますね……」
「ノアの民とはまた違う思想、なんだろう、きっと。」
スッキリしないまま、私達は臨時待機所へと戻る。
ただ、ほんの少しだけど謎が解けたような気がするだけでも収穫かもしれない。
あの個体達は再びやってくる。
恐らく、今度は総攻撃も辞さない態勢で。
その時は、やっぱり殲滅するしかない、のかな……
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