第139話 三つ巴、どころか…

 リンツに戻り、全員で集まって情報の整理をする。

 その収集できた情報の中でも、特に重要と思われるのがメナスの目的だね、


 「私、というか、ノアの民を狙ってるって事かな?」

 「やっぱり心当たりは無いのですか?」

 「うーん、無い事はない……けど、これってどうなんだろ?」

 「どう、とはどういう事だ?」

 「うーんとね、心当たりがあるとすれば、それはたぶんあの船、なんだよ。」

 「船?」

 「うん。ノアの民をってなるとさ、今はもう誰もあそこに居ないわけよ。だからその線は無いと思うんだ。」

 「そう言われりゃそうだな。」

 「実際そうなると、トンネルじゃなくてイワセに向かいますからね。」

 「となるとだよ。その存在の障害ってのは、あの船に何かあるんじゃないかなーって思う。」

 「アルテミスでさえ明確な事が分からないのでは、困ったな。」

 「というかじゃ。存在の障害というのがいまいち意味がわからんな。」


 そもそもの話として。

 メナスは何がしたいんだろう?


 自分達にとっての脅威を排除する、という目的は解る、というか、そう言ってたし。

 それに、その脅威は星の生物を狩り尽す存在、とか言ってた。

 あれ?、それってどっかで……


 「アルテミスさん、メナスが言っていた『生物を狩り尽す存在』っていうのは、もしや……」

 「うーん、ほぼほぼあの大悪魔の事、と思って良いんじゃないかなぁ。」

 「となると、メナス側は、だ。あの船がそれと関係していると認識してるという事か?」

 「え?でも、何で? 大悪魔っていうアルテミスさんから聞いた話を知っているのは、私達イワセの関係者しかいないはず、ですよね?」

 「……まさか、とは思うが……」

 「ルナ、お前何か心当たりでもあんのか?」

 「いや、わかる訳じゃないが、ある仮説が成り立つ、と思ってな。」


 ルナ様の仮説。

 それは、メナスもノアの民のように何かから逃れてきた別の星の住人、なのではないか、と。

 元々この世界、というかこの星に居た存在であれば、アルテミスに接触しない限りあの大悪魔の事は知り得ないはずだ。

 それを知っている、という事なら間違いなくこの星以外に存在し、大悪魔に接触、あるいは何某かの関連を持っているか、だ。

 その仮説の根拠は、モンスターと違い少なくとも意思疎通ができて、“この星の生命体”に用はない、と言っていた。

 それら知り得た情報から推察できることは、それはあの大悪魔ではないのか、という事。

 けど、


 「事実として、じゃ。この星にはそんな存在はおらぬしのぅ。」

 「もしかすると、だよ?私らの船そのものを、その大悪魔のモノ、と誤認してるんじゃないかな?」

 「まぁ、地球外物質であることは間違いないし、な。」

 「地球外物質!?」

 「ど、どうしたシャルル?」


 それまで人差し指を口にあて、天井を見ながら話を聞きつつ何かを考えていたシャルル。

 何かに思い当たったみたいだ。

 そして、その突然の発言を聞いて、私もハッと思いついた。

 それは


 「シヴァ様がおっしゃっていた、消えた構造物っていうのは、もしかすると!」

 「宇宙、船?」

 「「「 おお!? 」」」


 合点がいくというか、こじつけじゃない妙な確信的な部分に触れたような気がする。

 それはここに居る全員が理解してくれたみたいだ。

 そういう事であれば、メナス側の行動というか言っていた事も納得がいくし辻褄も合う。

 もちろん、アルテミスさんの船が大悪魔の乗り物、というのはメナス側の誤認だとしても、だ。

 となると、これが事実とすればメナスの目的というのはある程度明確なもの、になるね。


 「そーだね、今持てる情報ではその線が一番しっくりくるね。私としては迷惑だけどね。」

 「となると、対メナスという事ではあのトンネルを警戒していればほぼ発見阻止は可能だな。」

 「問題はよ、そのメナスの本拠地、シヴァが言ってた構造物、だな。」

 「そして、メナスの正体、ですね。」


 核心部分が見えたような気がする。

 するんだけど……


 「となると、ですよ?」

 「はい、私達にとって対処すべき相手が増えた、という事ですよね?」

 「うーん、これは少し厄介だな。」


 モンスター、メナス、そしてやがて来るであろう大悪魔。

 三つ巴どころじゃない、四つ巴の構図、だよねコレ。


 「兎にも角にも、だ。アタイらはそれ全てに対して相手しないといけなくなったって事だな。」

 「これは少し骨が折れますね。」

 「そうなると、だ。優先順位をつけて一つずつ解決したいところではあるがな。」

 「優先度合いは全て同列、じゃな。」

 

 元々対処すべき対象であったモンスター、そしてコア。

 コアは後回しで良いとして、モンスターは現状最大の脅威というか目的なんだ。

 そして、メナス。

 本当の所はまだ不明だけど、概ね今の話に準ずる存在だと思う。

 その上、大悪魔。

 いつやってくるか、どんな相手なのかもわからない、聞いた限りでは現状では厄災級の脅威と言って良いんだけど、これについては今の段階では警戒するくらいしか手立てはない。

 

 もしかしてこれって、この星最大の危機、なんじゃないのかな?

 ちょっと、スケールが大きすぎる……

 と


 「あのさ、ちょっと良いかな?」

 「タカ?どうしたの?」

 「あー、細かい話はわかんないんだけどさ、メナスは何となくわかるんだよ。でもさ。」

 「ああ、オレも思ったんだけど、モンスターは何であのトンネルを目指してたんだ?」


 言われて、ハッと気づいた。

 そう言われればそうだ。

 話の流れで言えば、モンスターとメナスは全く別モノだし、よくよく考えればモンスターがメナスと同じ行動をとる理由がない。

 その存在理由も行動目的も。


 そもそもがモンスターは人間の負の面の塊であって、厳密にいえば生命体とは言えない物体でもある。

 キューキさん流に言えば不確定物質でできた異形の生物、だね。

 その行動目的は、事実として人間を理不尽に襲う事だけ、なんだ。

 アレらに限って言えば、それこそ大悪魔だろうがメナスだろうが、ノアの民だろうが関係ない話のはず。


 となると。

 あの最初のスタンピードって、何だったんだろう?

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