第137話 ダンジョン防衛
一夜明け、朝食を摂った後。
皆でシヴァ様の情報も含め検証をする事とした。
「可能性としての話だがな。」
「ルナ様?」
「メナスは何らかの手段で、アーマーの情報を得ていた、と考えると納得がいく。」
「そういやよ、アルテミスもアーマーの事は知ってたんだよな。」
「私が入手したのは、ここで鹵獲した個体から、なんだよ。だから、そのジーマ、だったっけ、それについてはわかんないんだ。」
「鹵獲した、だって?」
「いや、それって、人型のアーマーなのか?」
「んとね、人型とクマだっけ、その2体だね。」
「ルナ様、それって間違いなく200年前の、ですよね?」
「ああ、ダルシアが入手した個体の一部だな。人型はその1体のみだったはずだ。」
「って事は、だ。仮にメナス側がアーマーの存在を認識したってのは、ソレと同じなのか?」
「可能性はある。が、どうも違うような気はする。」
仮に、アルテミスさんのように超科学的な知識や技術、技量があれば、アーマーの複製は可能だと思う。
リバースエンジニアリング、というのはお父様が教えてくれた。もっとも、聞いた時はチンプンカンプンだったけどね。
だけど、その第三のコアだか謎の構造物が、果たしてそれだけの能力を持っているんだろうか。
既存の二つのコアは、恐らくだけど人間の悪意からモンスターを生成する事しかできない、と思う。
モンスターが進化、変化していったのは、その悪意が自ら実行した事、ではないか、とも思う。
生物が環境や天敵から身を守るように進化したのかも知れない。
第三のコアは、そのプロセスまでも真似しているんだろうか。
それに、アーマーといってもそれ程この世界に存在していた訳じゃないはず。
少なくとも、ルナ様が転生した時以降、だれもその個体らしきものは確認できていないんだから。
「ま、いずれにしても、だ。」
「はい。私達がすべきことは変わらない、ですよね。」
「ああ。ディーナとシャルル、それにタカとヒロ、この4人に関しては、もはや主戦力として何の問題もないだろう。」
「だな。アタイらのサポートすら不要なんじゃねぇかな。」
「そうなんですか?」
「でも、それはそれでちょっと寂しいな……」
「何を言う。それが成長というものだぞ。ま、とはいえな。」
「ああ、アタイらとてそれはちょっと寂しいんだけどな、あはは。」
「そうじゃな。タカとヒロも、本気を出せばディーナ達と並ぶほどじゃしな。」
「イワセ国民となった今、私とルシファーの保護も不要だろうな。」
「えー、俺はそれちょっとイヤだな。」
「だよな。オレもそれ寂しいぞ!」
「だが、心配は要らないぜ。アタイらは“家族”なんだろ?」
「そうだな。今までと同じだ。ディアマンテスの行動としては何一つ変わらないさ。」
それを聞いてちょっと安心した。
確かに強くはなったんだろうけど、あれだけの強敵に不明な事が多い今、ルナ様達が居ないとやっぱり心細いもの。
「そういやさ、ヌエもグリペンも、キューキと同じように変化するとさ、結構な強さなんだよ。アフラもね。」
「そうなんですね。というか、トキワお兄様が驚く位、キューキさん強かったって言ってましたね。」
「ウチも直接見たけど、変化前のディーナ達と同じ位だったかな。」
「そういうナイナも、だったけどね。」
「ウチはそんな自信はないかなぁ。こう言っちゃなんだけど、この中でウチが一番弱い気がするかな。」
「とは言え、だ。ある程度の強さがあれば、あとは戦術、戦闘技術の研鑽でその差は無くなると思うぞ?」
「だな。ナイナはナイナで、お前しか使えない術とかもあんだろ?」
「うーん、そう言われればそうなんだけどねー。」
「いずれにしても、じゃ。メナスとやらの戦力は既に把握したんじゃしの。対抗する術も直ぐにわかるじゃろうて。」
その意見は私もシャルルも同意、だね。
ただ、一つの懸念はある。
メナスはモンスターと違って、明らかに高度な知能、思考能力があった、と思う。
そうなると、相手側も同じく、こちらの戦力を分析するだけの能力はあるんじゃないか、と。
「そうだな。ま、仮にそうだとしても力で圧倒できればそれも問題無いとは言えるがな。」
「そうなるとさ、俺達とディーナ姉達、アフラさん達も含めて戦い方をもっと広げてく必要があるよな。」
「オレ達の連携も含めて、だな。」
「ほッほッほッ、分かっておるではないか。という事で修業はまだまだ続くぞ。」
「ああ、そりゃ望むところだよな。」
「うん。オレらがシャルル姉達、アフラさん達を守らなくちゃならないしな!」
何というか、この子達ってやっぱり勇者なんだなって実感するなぁ。
外は小雪が舞う冬の景色。
暖かい紅茶を飲みながら皆で話をしている光景は、傍目にはのんびりと寛いでいるように見えるんだろうなぁ。
だけど、その話の内容はそんな雰囲気とはかけ離れている。
でも、何となくだけど、こういう時間が続くのもアリなのかな?とも思えるんだ。
緊張が続いている今、こうした何気ない時間がとても貴重に感じる。
シャルルもそう感じているんだろう、目でそう言っていた。
けど、そうそう気を緩めてもいられない。
なぜなら
「さて、それで今後の行動なんだが。」
「まずは、だけど、そのメナスがなんであの居住区を襲うのかを調べないとね。」
「というか、だ。アルテミスはその辺何か心当たりはねぇのか?」
「うーん、あるとすれば船のエネルギーか、あるいはキミらが言うコアもどき、くらいかなー。」
「アルテミスさん、そのコアもどきはもう機能していないんですよね?」
「うん、必要なくなったから止めたよ。」
「となると……」
たぶん、そこがメナスの行動の核心部分だと思う。
それが何なのかは今の所解らない。
解らないけど、どのみちあの居住区、それに船にある発電システムは守り通さないといけないんだ。
「ま、あれだな。どっちにしろあそこは死守しなきゃなんねぇな。その上で、だ。」
「ああ、メナスの目的を見出す事が先決だろうな。」
「事モンスターに限って言えば、現状別の小隊でも討伐は続けられるでしょうし、ね。」
「そうすっと、だな。ディーナ、お前の使い魔でスウィッツランド周辺を重点的に警戒するようにした方がいいかもな。」
「そうですね。他の地域は兵士さん達の監視網で足りているようですし。」
と、そんな話の真っ最中。
通信機のアラームが鳴動する。
『ディアマンテス!
リンツ、ベクター230、ディスタンス350、ボギー5、01スクランブルオーダー!』
「230の350って、トンネルの近くかよ。」
「さっそくか。では、行くか。」
「「 はい! 」」
「というか、ルナとウリエルは大丈夫なの?」
「ああ、もう問題ないさ。行ってくる。」
これはたぶん、メナスだと思う。
やっぱりあのトンネルをピンポイントで狙っているんだよね、これ。
ともかく現場へ急行する。
今回は、私の転移魔法で移動だ。時間は早いほど良い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます