第122話 黄金の島、ジパング
大陸東方に浮かぶ島国、ジパング。
かつては日本と呼ばれ、お父様、カスミお母様、サダコお母様、そしてツクヨミ様が生まれ暮らしていた国だ。
今はメテオインパクトの影響で列島は分断水没し、その面積を大きく減らしているという。
ジパング、という国名は、古の伝説から来ているそうで、ジパングの人達自身は今も自国を日本と呼んでるんだって。
その古の伝説では、この国は黄金の島、と言われていたらしいんだけど、メテオインパクト以降、その手の資料が無くなったのでその詳細までは解っていないんだって。
ただ、ロマリア連邦のある国にはその古代資料が残っているらしく、そこにジパングの記述があったのでジパングという名称が定着したんだそうだ。
で、フランお母様はジパングを治める将軍の一族なんだ。
今はフランお母様の甥が殿様をしていて、その殿様、ミクニ様はまだ若いんだ。
若いけどラミウス大統領のように政治手腕も高く、ヒエン様の弟子でもあり“武術”にも長けている。
私やシャルルがヘレンと一緒にジパングへ行くと、必ず一緒に遊んだりして過ごしていたなぁ。
それに、ミクニ様はウリエル様が大好きなんだって。
そんなジパングの殿様が居住する城の前に、私達は降り立った。
この城から東へ少し先に行った所に、かつてジーマへと繋がるゲートがあったんだって。
そのゲートから、お父様はジーマへと赴いて行ったらしい。
今はそのゲートも消え、その場所には記念碑のように社が建てられているんだ。
私達が門番さんがいる城の門の前に行くと
「お待ちしておりました、ディアマンテスの皆様。」
と、城内まで案内してくれるとの事だ。
すでにフランお母様から連絡が来ていたみたいで、手続きとかは一切ない。
というか、昔から私達一族はフリーで入っていたんだけどね。
案内してくれている門番さんも、実は顔なじみだったりするんだ。
“将軍の間”という所に通されると、既にミクニ様が待っていた。
相変わらず若々しく威厳も風格もあって、若いけどさすがは殿様と言った感じだ。
ジパングでは頼もしく凛々しいと評判の殿様だ。
「わー!ディーナ姉、シャルル姉!久しぶりだー!」
え、えーと、凛々しい殿様、よね、たぶん……
「お久しぶりです、ミクニ様。」
「ご健勝そうで何よりです。」
「あー、ミクニ、一応お前殿様なんだからよ、もちょっとカッコつけろよ……」
「ウリエルさーん!、会いたかった、よ……というか、その姿は?ルナさんまで?」
「色々あってな。今はこんなだ。」
「……ふつくしひ……」
「お前なー。」
「あ、いやいや、積もる話は後です。まずは情報の開示でしたね。」
先刻、イワセでの情報纏めでは、主に昔の列島と今の列島の違いを確認したんだ。
そして、月の欠片を手に入れた山、その場所の今の状況も。
メテオインパクト後の地殻変動等で、日本列島そのものが沈下、変形し、赤道変化によるものなのか海面も上昇して大きく変化している。
具体的には海面が50メートル程上昇した状態だという。
でも、それ以上の位置にあった場所も水没しているので単純な海面上昇じゃないんだって。
「お話のあったツクバ山脈という場所なんだけど、今はその山脈は島になってるんだ。」
「そう言ってましたね。たしか、その島の北端がかつてのカバ、という山だった場所よね?」
「そうだね。で、僕達もそのカバという所に調査に行ったんだけど、そこには住民は誰一人いないんだ。」
「と言う事は、その島自体無人島って言う事なの?」
「そういう事だね。でも、漁師が休む場所や資材を置く場所があって、住んではいないけど完全に無人ってわけでもないんだよ、島の防人が居るしね。」
「そうなんだ……」
「で、地元の住民に話を聞いたんだけど、その島に人が住まないのには理由があるんだって。」
「理由?」
ここジパングに限らず、領土の土地管理は国が取り仕切っている。
なので空き地であろうと無人島であろうと、そこの調査は綿密に行っていて詳細は明らかになっていて無断で土地をどうこうはできない。
逆に言えば、国や自治体に申請すれば土地の所有権を得られるっていうコトでもあるんだけどね。
これは住民登録とセットになっているから混乱もなく管理しやすいんだって。
なので地価や不動産価値というものはなく、それを巡っての諍いなども無いんだ。
土地の所有権云々は、国から委託された各自治体が管理しているので所有者がどうこうという話は置いておく。
ただ、ジパングには国がどうこうできない不可侵の聖域が幾つかあるらしく、ツクバの島もその一つなんだとか。
その聖域っていうのが
「ジーマでは我らが手出しできない場所があってな。最初にタカヒロがジーマに来た時に出現した場所もそうだった、と聞く。」
「それって、どういうモノなんでしょうか?」
「私にはわからないな。ブルーだった頃でも調査はしたんだが全くその理由がわからなかった。とにかく、侵入そのものが不可能だったんだよ。」
「不思議ですね……」
「あ、でもそれって今でもそうなんですか?」
「えーっとね、その話はフランおばちゃんから聞いてたんだけど、どうも似たような状態みたいなんだ。」
「似ている、っていうのは?」
「知っての通り、モンスターってジパングへはあまり侵攻してこないでしょ?フリーズランドやアインフリアンみたいに、何か同じように近づけない要因があるんじゃないのかっていうのが、フランおばちゃんの意見だったよ。」
(ルナや、出るぞえ。)
「ん?ああ。」
ツクヨミ様が現れた。
それを見たミクニ様は
「え?どなた様?」
「其方が日本の殿様じゃな。わっちはツクヨミと申しんす。物の怪の類と思ってくりゃれ。」
「ツクヨミ様……物の怪、ですか?」
「くふふ、そうじゃ。サダコは知っておろう?その仲間じゃ。」
「へえー、サダコおばちゃんの……あ、いや、わかりました。」
「それで、じゃ。」
「はい?」
「わっちらはその島に用がある。島への上陸許可をもらえると嬉しいのでありんす。」
「上陸許可ですか。それならお安い御用ですよ、布告はすぐに出します。」
「での、モンスターが近寄らない要因というのはの、わっちら物の怪が関与しているのでありんす。」
「は?」
ツクヨミ様によると、過去に存在した物の怪と呼ばれる妖怪が死ぬと、その存在はある種の“力”に還元するという。
その力は、それを統べる者によって“結界”として土地を守護しているんだとか。
いわゆる『土地神様』として祀られているものの多くは、そうした妖怪を祀っているんだって。
宗教という思想がメテオインパクトを機に廃れたと言われているけど、ここジパングにはそもそも独自の宗教観が根付いていたんだそうだ。
それは“神話”という形で、宗教とはまた別の思想として今もなお信仰されているんだとか。
それこそが、妖怪と呼ばれる存在によって維持されているんだって。
「なるほどな。んじゃあよ、サダコが居たって言う山もそうなのか?」
「いや、あそこは違うの。童にとってたまたまあの山が色々と都合が良かったから住み着いた、と言うだけの話でありんす。」
「そうなんですかー。でもサダコおばちゃんからそういう話は一切聞いたことがないですね。」
「そうでありんすな、ま、童はその辺無頓着なのであろう。話は聞かせておったはずじゃしの。」
「あの、ひとつ疑問に思う事が。」
「ん、シャルル、どうしたのでありんす?」
「その聖域という所には、モンスターやそれに類する存在だけ、が入れないんでしょうか?」
「そうだの。正確には生命に仇成す事をその存在意義とするもの、であろうな。
故に魔族も悪魔も、問題なく入ってこれたであろう?」
「そうなんですね。」
「ただの、そこは完璧に、という事ではありんせん。
昔の人間にはな、そのモンスター同様の存在も居たのじゃ。が、人間である故にその結界が利かぬ。
それが故に悪意による悲劇も多く発生したのじゃ。まぁ、それは昔の話であり今ではコアのお陰でそんな人間は居ない様でありんす。
しかし、そんな所に気づくとはの。シャルルも賢いの。」
「そ、そんなことは……」
まぁ、ギニーもシャルルも、とても頭の回転は速いし、そういう所は凄いなーって思う。
いずれにしても。
私達はまず、あの加波山へと行かなくちゃね。
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