第104話 真ディアマンテス、発足!
なんだかとても表現しがたい事が昨日あったけど。
朝早くに、アズライール様とあの二人がやってきた。
何というか、あの二人、とても疲れているような気がするんだけど、戦闘と長旅が堪えたのかな?
ともあれ、家に入ってもらい寛いでもらう事とした。
「元気そうで何よりです。ルナ、ウリエル。そして二人とも。」
「そりゃ良いんだけどよ、なんでこいつらこんなに疲弊してんだ?」
「えーと、龍に乗せてもらって海を渡った後、ここまで走ってきたから、かも。」
「渡った後ここまでって、もしかして大陸西端からここまで?」
「ええ、一時も休まずに。」
「のッほッほッ、こ奴らも扱かれたもんじゃの。まぁ、たまには良いじゃろう。」
「扱かれたって、そんなレベルじゃないような……」
「まぁ、体力は付けておくに越したことはありません。と言うか、疲れたそぶりはしていますが、この子らは全然疲れてないですよ?」
「「 え? 」」
「んな訳ないじゃん!めちゃくちゃ疲れてるよ!」
「アズラさん、スパルタすぎるんだよ……」
確かに疲労困憊の様子だけど、実はまだまだ余裕がある気がする。
さすがは勇者の子孫、というか今代の勇者未満、だよねこの二人。
「ね、ねえ、あなた達、疲れているならこれを飲めば、疲れなんて一発で吹っ飛ぶよ?」
「「 あ、それは…… 」」
ルナ様もウリエル様も知っている、お父様特製の栄養ドリンクだ。
私もシャルルも、もう二度と、間違っても飲みたくないって思うほど激マズの。
でも、効果は絶大なんだよね、コレ。
お父様は変なキャッチコピーを付けて売り出そうとテスト販売したんだけど、売れなかったと言っていた。
そりゃそうよねぇ……
で、そのドリンクを二人はそれぞれ一気に飲み干した。
飲み干したんだけど……
「ぷはー、これ、少し苦辛いけど確かに疲れが和らぐ感じだな!」
「うん、あんまり美味くないけどな、こりゃ伝説のポーションに近いんじゃね?」
あ、あれ?
激マズなんだけど平気なのかな?
ルナ様とウリエル様は、何か、うげーって感じで二人を見ている。
きっと同じ事を思ったんだろうか、それとも、あの味を知っていてそれを思い出しているんだろうか。
「で、それはそれとして、です。」
「はい?」
「まずはこの子らを風呂に入れてやあげて欲しいのです。汗臭いし、ね。」
「ひでーなアズラさん、さんざん走らせたのはアズラさんじゃん。」
「てか、アズラさんなんで汗一つかいてないんだ?じいちゃんと一緒か?」
とりあえずマスミお姉様がお風呂の準備に取り掛かってくれた。
待ちきれないとばかりに、まだ湯にもなっていないお風呂に、二人は飛び込んだらしい。
「という事で、です。これであのダンジョンへの対処メンバーは揃った事になります。」
「ん?という事は貴様も同行するのか?」
「そうです。私もルシファーも、あの二人のサポートとして。」
「ディーナとシャルルにはお前達がいるじゃろ、それと同じと思ってくれ。」
「つーかだな、アズラは戦闘能力はどんくらいなんだよ?」
「あら、“てめぇ”から呼び方が変わりましたか?」
「んなこたぁどうでもいいんだよ、ほっとけ。で、どうなんだよ。」
「あの子達やあなた達の邪魔にはならない程度、です。実際戦いなど、何百年もしてないし。」
「ワシとやり合って以来じゃからなぁ。あ、ちなみにワシはムサシに何とか抵抗できるくらいの実力はあるぞ?」
そ、それって相当な実力者って事よね?
お父様でさえ敵わないだろうって言っていた初代勇者のムサシ様。
下手をすれば魔王様をも上回る力と技を持っていたとかなんとか。
「ちなみにじゃが、単純な強さだけで言えばあのお方が断トツじゃ。ムサシをも軽く超えておったぞ。」
「お父様が?」
「まぁ実際に相対してはいないので比較はできんと思うがな。ただ……」
「ただ、なんだよジジイ?」
「ディーナとシャルル、そしてあの小僧ども二人は、それをも超える可能性を秘めておる。これは間違いない。」
「「「「 はい? 」」」」
「とはいえ、それはまだまだ先の話じゃろうて。それに向けて4人は鍛えないといかんだろうな。」
鍛えないとって……
ま、まあ、それは全然良いんだけど、そういえば『その先』って言ってたのはこの事なのかな。
というか、コアの調査をしながら鍛えるのってできるんだろうか?
と、二人がお風呂から上がってきた。
パンツ一丁でタオルを首にかけて。
「あー、バカ者!なんで“れでー”の前でそんな恰好で来るんじゃ!」
「ん?れでーって何だよ?」
「俺らいつも風呂上りはコレだろうよ?あとミルクと。」
「すまぬのう、ディーナ、シャルル。こいつらにはこういう所を上手く躾ができてないんじゃよ……」
「ル、ルシファー様、あの、別に私達なら問題ないです、よ?」
「ウチの兄や弟もこんな感じですし……」
「そ、そうは言ってものぅ……」
まぁ、何はともあれ着替えてもらって顔合わせだ。
「改めて紹介しましょう。この二人はムサシの子孫、双子です。」
「そっちの赤い髪が“タカ”、こっちの黒い髪が“ヒロ”と言う。」
「え?」
「タカ、と、ヒロ?」
「まぁ、ワシも聞いた時は驚いたがな。偶然にしては出来過ぎとるじゃろ。」
こ、これってほんとうに偶然なのかな?
初代ムサシ様の継承者が2代目勇者の名前だなんて。まあ、2分割ではあるけど……
「そして私はアズライール、こいつはルシファー。まぁ、私とコイツの事はどうでもよいですね。」
「どうでもって……」
「てわけでだ、俺がタカだよ。」
「オレがヒロ。よろしくな、姉ちゃん!」
「ではこっちの番だな。まず、銀髪のほうがディーナ、碧い髪がシャルルだ。」
「ディーナよ。よろしくね、タカ、ヒロ。」
「シャルルだよ。よろしくね、二人とも。」
「うーん、姉ちゃん達よく見るとキレーだな。ま、宜しくな!」
「よろしくー!」
「で、私はルナ、こっちはウリエルだ。」
「アタイらはアズラやジジイと同じようなもんだと思ってくれ。」
「はえー、ルナさんもウリエルさんも、改めて見るとすげぇ美人だよなー……」
「「 ありがとう!! 」」
「このバカ共!そんな事を軽々と口にするなと、いつも言っておろうが。」
「えー、だってホントの事じゃんか。」
「そうだよ、じいちゃんも結構街でそんな事言ってんじゃんか。見ず知らずの女の人に。」
「「「「「 …… 」」」」」
そ、それはともかく!
8人となったのでチーム分けとかしないといけないのかな?
「それなのですが、私達をディアマンテスの一員として受け入れてくれませんか。」
「え?」
「アズラさん達が、ディアマンテスのメンバーに?」
「はい、元々私達の目的と言うのは、ディーナ、シャルルと同じなのです。
ただ、この二人は出自が特殊なので、これまで行き当たりばったりの行動しかできなかったという面があるのです。」
「あのコアじゃったか、再封印と新たなコアの確認、ついでにモンスター殲滅。ワシらがしようとしている事はキミらと全く同じじゃからな。
個別に動き回るよりも、組織として連携した方が能率的にも効率的にも良いと思ったんじゃ。」
確かに、同じ事をするのに連携もしていなければバラバラで効率も悪いだろうなぁ。
広範囲で行動するにも、役割やエリア分担など決めておけばお互いの労力も軽減するし。
もとより、反対する理由は一切ないしね。
でも……
「出自が特殊、というのは?」
「ああ、こいつらはな、国籍というか、どの国の民でもないんじゃよ。」
「という事は、孤児や難民扱い、なんですか?」
「そうじゃな。この世界にもはやそういう者はおらぬのだが、それ故にどの国にも受け入れられる事は無いんじゃよ。
何せ身分を証明するものが一切ないんじゃからな。」
「そ、そうなんですか……」」
この世界は、全ての者がその身分というか、出自は明確にされている。
辺境の少数民族に至るまで、全ての者が、だ。
これは何かあった場合、支援や救護保護をするのに必須だからと、お父様が進めた住民登録制度が行き渡ったからだ。
ルナ様やウリエル様でさえ、イワセ王国の住民として正式に登録されているんだ。
果てはシヴァ様の侍女さん達、ミノリ様までも。
私達が知る限りでは、そこから漏れている人って、アズライール様とルシファー様だけ、だと思うんだけど。
「ま、まぁ、ワシがこ奴らを見つけた段階でな、二人の親御は亡くなっておったんじゃ。理由は解らんがどうも出生届も出しておらんかったようでの。」
「つまりは孤児だった、と言う事です。で、発見したのがこのアホウでしたから尚の事どうにもならなくなってしまったのです。」
「そういう事ですか。でも、それなら。」
「うん、解ったよ。ヒバリ姉に連絡しとく。」
「マスミお姉様!」
「てことでー、タカくんとヒロくんは、イワセ王国の住民でーす!なので!」
「はい。ディアマンテスの正式なメンバーに迎えます。」
「すまぬのう、手間をかけさせて。」
「いいんです。これも私達の役目ですもの、ね?ディーナ、シャルル。」
「「 はい! 」」
「え?てことは俺達普通の家に暮らせるって事か?」
「じいちゃんの酒の買い出しもしなくて済むって事か?」
「バカ者。そういう事ではないわ。どのみち仕事が終わるまでは今まで通りじゃ。」
「何だよそれー……」
「じいちゃんの世話は続くのか……」
「お前ら、ワシを老人扱いしおってからに!」
「どっから見ても老人だよな?」
「うん、しかも呑兵衛のな!」
「ぐむむ……」
と、ともあれここに真ディアマンテスが誕生した!
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