第100話 仕切り直し!一族みんなで作戦会議!
ツクヨミ様が早々にルナ様に入っていったので、微妙な静けさが空間を支配した。
「さ、さて! ひとまずツクヨミの事は忘れよう、うん。それで、だディーナ。」
「え?は、はい。今後の事です、よね?」
「それなのですが、ディーナ、もう一組の討伐隊というのは?」
「はい。それなんですけど……」
結局のところ私達も、あの二人の男の子の詳細を聞きそびれたんだ。
判っているのは、あの二人はムサシ様の子孫である事と、その力は今の私達と同じか、それ以上だという事だけだ。
「ムサシ様の子孫、ですか……」
「サクラ、ムサシについてはお前の方が詳しいのではないか?」
「いえ、私も伝説を聞いていたに過ぎません。シヴァ様も面識はあれど、それほど親しい訳ではないそうですし……」
「かか様も、ムサシ様の活躍を知っているだけで、その出自や本当の所はわからないと言ってたね。」
「ツクヨミは知っているんじゃないの?」
「いや、それがツクヨミも良く知らないらしい。」
「唯一親しかったのは、私の父だけという事らしいですね。」
「そう。隠匿の後、前魔王とはよく一緒に居たと言っていた。」
ムサシ様、つまり初代勇者様と同じ時を過ごした者は、今や魔族にも居ない。
マリュー様なら知っているかも知れないけど、何処まで親しかったのかはわからない。
これは後で聞けばいいんだけど……
そういえば!
「ミノリ様なら知っているんじゃ?」
「そうね。年代的にはシヴァ様よりちょっと短い程度だし。」
「まぁ、その辺は後でまた調べるとしよう。」
「そうだぜ。それより今はこっちの行動方針だ。そいつらとはどのみち後で擦り合わせが必要になるだろ?」
「そう、ですね。その時直接聞くのも手でしょうし。」
こうして、今ここに居るお母様達と今後の事を話すこととなった、んだけど……
「シャヴィとピラトゥスはどうしようかの?」
「あの二人も重要なんだし、不在のままじゃ詰める話も詰められないわね……」
「今ピラトゥスはロマリア連邦、シャヴィはカルメン、だもんね。」
「無電や電話でなら通信はできるけど、それだと少し、ねぇ。」
「そうよね、どのみちまだあっちの大陸まで通信網は繋がってないしね。」
うーん、話し合いの前段階で躓いてしまった。
まぁ、急遽帰って来たから仕方がないんだけど、何か手はないかなぁ。
と
ホントに狙ったようなタイミングで来客があった。
「母さん、お客だってさ。案内したよ。」
「トキワ、お客様って?」
「ほッほッほッ、何やら困っておるようだな。」
「お前!」
「ジジイ!」
「「 ルシファー様! 」」
「何故ここに?」
お客様はルシファー様だった。
ルシファー様は挨拶もそこそこに、本題に入った。
それによると
カルメンにあの男の子二人を放置してきたらしい。
ルーベンス王には話をして、シャヴィお母様はロマリアへと向かう事になったらしい。
そこに結花お姉様が飛び込んできた。
「シャヴィお母様が今からロマリアのオデッサへ向かうそうです!」
「へ?」
「それ、今そこのルシファー様から聞いたとこだけど……」
「どゆこと?」
カルメンからここまで、シャヴィお母様が全速力で飛んでも3時間はかかるはずなんだけど……
「ああ、ワシはついさっきカルメンから来たばかりじゃ。ワシは空間を自由に跳躍できるんじゃよ。」
「ほえー……」
「それって、アルチナ母様と同じ能力?」
「私とて、それほど遠くまでは……」
「あー、似たようなもんじゃ。が、ワシは腐っても上位の悪魔じゃ。能力は破格なんじゃよ。」
「悪魔!?」
「あー、みんな、コイツはアタイらと似たようなもんだ。マコーミックの上司みたいなもんなんだよ。」
「「「「 は? 」」」」
「あ、あの、マコーミックさんは悪魔だそうです。」
「「「「 へ? 」」」」
「そうか、お前達は知らなかったんだな、サクラとローズを除いて。」
「あ、あの、タカヒロ様に内緒に、と言われていましたので……」
「とにかくじゃ。今はワシの事はどうでもいい。それでな、」
ルシファー様が言うには、今すぐこのメンバーはロマリア連邦へと向かえと言う事らしい。
お母様達全員、そして兄弟姉妹のまとめ役であるトキワお兄様と、補佐役のスペリアお姉様も加えて、と。
ロマリア周辺のモンスターは今の所小康状態なんだそうで、理由は解らないけど先のスタンピードが関係しているらしい、とはルシファー様の推測だ。
「ルシファー様、ロマリアで会議、という事ですか?」
「ああ、差し出がましいとは思ったんじゃが、その方が集結は早いだろうと思ってな、手を回したんじゃ。」
「まぁ、今はそれに感謝するとしよう。という事でだ、みんな行けるか?」
「政務関係はすでに子供達が引き継いでますので大丈夫ですが、列車で行くにしても時間はかかりますね……」
「シャヴィを筆頭に龍族のメンツは出払ってるしね。」
と、それを聞いたルシファー様は
「ほッほッほッ、それは心配なかろう。というか、ワシの話を聞いておらなんだか?」
「ルシファー様、まさか?」
「ここにいる全員を転移させる事など朝飯前じゃ。というか、頑張ればアルチナとディーナの二人でもできようが?」
「そ、それはちょっと私でも厳しいかも知れません……」
「まぁ、ともかく任せるがよい。」
「い、いいのですか?」
「ああ、ワシが御膳立てしたんじゃ。その位はしないとな。」
「ねー、あの人ホントに悪魔なの?」
「すんごく親切な人に思えるんだけど……」
「アタイはしらねぇ。というか、アタイも信じらんねぇ。」
お父様がかつて言っていたけど……
悪魔だ天使だ、と、そういう区別って最初からないんじゃないかって言うのが何となくわかるような気がした。
ただただ、その認識は人間が設けただけの事であって、この世界の人間と魔族、みたいな種別違いなんじゃないかな?
ま、まぁそれは置いておこう。
今はそこじゃないんだし、それはあとでルナ様に聞いてみよう。
「では、準備をしてくれるか。準備が終わったら言ってくれ。待っとるでな。」
「あ、じゃぁ……」
「お客様、お待ちしている間こちらをどうぞ。」
トキワお兄様は、ルシファー様に飲み物を差し出した。
え?これって……
「おおー、気が利くではないか。流石にあのお方とサクラ殿のご子息じゃの。」
「いえいえ。」
「!! こ、これは!!」
「“日本酒”と言います。米が原料の酒ですよ。」
「おお!日本酒か!ありがとうありがとう!」
そう言ってルシファー様は、盃を撫でて(ありがとぅーありがとぅー)と呟きながら30分の間に日本酒を一升飲みきったのだった。
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