第92話 洞窟探検は楽しくて怖い

 トンネル内は一切の明かりが無く、真っ暗闇の世界だ。

 私は使い魔の能力である程度周囲の状況を把握できるけど、ルナ様やウリエル様、シャルルには見えない。

 

 「そうか、お前の使い魔は蝙蝠だもんな。超音波でわかるんだろ。」

 「超音波?」

 「蝙蝠ってな、特殊な空気の波動を出して、跳ね返ってきた感覚で周囲を把握するんだぜ。」

 「へぇー。」

 「というか、お前知らなかったのかよ。」

 「はい。」

 「ま、そりゃあくまで使い魔の能力だしな、さもありなんだな。」

 「というか、私達には全然先が見えませんね。」

 「シャルルは夜目が利くんじゃないのか?」

 「星の明かりひとつでもあれば見えるんですけど、ここ一切光の素がないからダメです。」

 「うーん、フェスタ―様、何とかなりませんか?」

 (任せとけ。見える様にするぞ!)


 と、フェスター様の力で周囲が明るくなった。

 200メートル先くらいまで見える程になり、これで視界は確保できた。


 「相変わらずすげぇなフェスター。海底でもこんな感じになってたもんな。」

 (あー、でも一切光の要素がないここだと、魔力の消費は大きいんだよ。)

 「光の要素がない?」

 (ああ、完全な暗闇ってことだ。ナイトビジョンスコープでも見えないぞこれ。)

 「ないとび……何?」

 「ほんの少し、星の光一つでもあれば闇でも見えるようになる機械だな。遥か昔にあった機械だ。」

 「へぇー、でもそれって便利なんですか?」

 「ああ、人間にとってはな。」


 ともあれ、周囲を観察しながら進むことにした。

 線路が敷かれた地面は、枕木とかで少し歩きにくい。

 なので、壁際の平坦な通路みたいな所を進んでいく。


 私達の歩く足音がトンネル内に異様に響く。

 外に比べて少し暖かいのかな、歩いている内に寒さは気にならなくなった。

 というか、普通にあったかいよね、ここ。


 「ウリエル、この中ならもうこれは不要だな。」

 「お、そうか。お前らも無くて大丈夫か?」

 「はい。ここ、あったかいですね。」

 「この中なら大丈夫ですね。」

 「んじゃコートは回収するか。」


 すると、羽織っていたコートは脱ぐことも無く消えた。


 「ま、また外に出たら出すからな。」

 「ありがとうございます。」


 入口からしばらく進んだ所に、脱線したんだろうな、かなり草臥れた列車が放置されている。

 貨物列車なんだろうか、客車は2両程あるけどそれ以外は貨車で何かを積んでいる。


 「これって、貨物列車よね。」

 「なにこれ、箱に車輪が付いてる、鉄の馬車?」

 「これは自動車というものだな。」

 「これが自動車!」

 「お父様が開発禁止にしてたクルマってやつよね。」

 「便利なモノではあるがな、それ以上に危険極まりない乗り物だ。もっとも、それは運転する者に依る所が殆どだがな。」

 「へぇー。」

 「これって危ないから禁止にしたんですか?」

 「どうなんだろうな。ただ、アイツはこの乗り物は好きだといっていたが、真実はついぞわからなかったな。」

 「あいつ、うーん、とか言ってはっきり理由を言わなかったしな。」

 「そうなんだ……あ、あれ?」

 「あ、中に……ガイコツ?」


 これって、ちょうどトンネルを走っていてメテオインパクトに遭遇したのね。

 客車の方を見てみると、やはりガイコツがいっぱいだった。

 よく見ると車体は焦げたんだろうか、そんな感じで錆びていた。


 「おそらくは隕石衝突の衝撃波や熱波にやられたんだろう。これらはある意味貴重な歴史の語り部だな。」


 こう言っちゃなんだけど、確かに興味はあるかな。

 話でしか聞いたことのない、12,000年前の遺跡というか遺構をこうして直にみられるのは貴重な経験だと思う。

 特に私は歴史学の学士だったから、なんだろうなぁ。

 と、ちょっと脇道にそれちゃったな。

 今はそれどころじゃないんだ。


 相変わらずイヤな感じは奥から漂ってきている。

 この奥にコアがあるなら、間違いなくモンスターも出てくるはず。

 

 「今入口から300メートルくらいかな。」

 「調べながらだから意外と時間はかかるわね。」

 「そういえばディーナ、外の使い魔とは連絡取れてるの?」

 「うん。トンネル内でも支障なく連絡できてるね、今の所。」

 「おや?これは……」

 「ルナ様、どうしました?」

 「別のトンネルが繋がっているな。」

 「え?」

 「管理用の側道じゃねぇのか?」

 「そうなのか……いや、これはまた別のトンネルへの連絡路のようだな。」

 「あ、そう言われれば線路は単線ですね。という事は上下線でそれぞれ存在するっていう事なんでしょうか?」

 「そうみたいだな。とはいえ、まずはこのトンネルを調べて行こう。あっちは後だ。」


 そんな感じで進んでいくんだけど、途中横の壁にさっきの連絡路とは反対側に、連絡路とは違うと思われる洞窟みたいなものがある。

 その地面を見てみると、明らかに何かが通ったと思われる、踏み固められた感じになっていた。

 これってもしかして……


 すると、奥の方から強い気配を感じた。


 「!!」

 「くるぞ!」

 「ちッ、こりゃアタイも参戦しないとマズいかもな!」


 強烈な嫌悪感と圧、かなりの強敵っぽい気配が複数、奥から迫ってくる!


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